10-2. プロフェッショナル
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「そんなズボラな僕達から君に、仕事の依頼でね。この蝉はプロジェクト凍結後も処分されず飼育されていたんだが、そのうち四匹が逃げ出してしまってね。何とか回収をお願いしたい。君のように刺される者が出る前にね」
「全国民にナノマシンを投与するなら、わざわざ回収しなくてもいいのでは」
「むしろ一番の問題だ。スイのような拡張現実のオブジェクトが光って見える者は、体内のナノマシンが古いと話しただろう?」
体内にナノマシンを取り入れる際、飲み水由来か、蝉由来かで見える景色が変わる。
スイや前宰相のように、蝉由来視点では蛍光緑色に発光する人はこの場に存在していないという話は興味深かった。
前宰相は全員から認識されていたのに、スイがサトウしか認識できなかったのも、ナノマシンから特別な司令が送られているせいらしかった。洗脳とかされそうで怖い。
明日からの仕事の注意点の説明を受け、仕事道具をいくつか受け取るサトウ。
「さて長くなったね。今日のところは帰ってもらって構わないよ」
「え。あ、はい。じゃあ失礼します」
「君の職場はここになるとは言ったけど、蝉の回収が終わって必要な手続きを終えれば開放してあげられるから。君の雇用主にも私から伝えておくよ」
いつの間にかスイがバンのバックドアを開けていた。
時刻は二二時前。すでに真っ暗になっていた車外にサトウが出る。彼が博士のほうを振り向いて会釈をすると、スイがバックドアを閉めた。
「さて、スイ。お前にはサトウ君の監視をよろしく頼むよ」
「承知しました」
「彼も本作業が終わり次第、処分する予定だが。プロジェクトについて外部に漏らしたり、トラブルを起こすようならその場で処分しても構わん。お前なら誰にもバレないだろう」
「‥‥」
サトウ監視の任を命じられたスイは光の粒子になってどこかへ消えていく。
その光景を見送った博士は、ラボ内のテーブルに軽く腰掛けどこかへ電話をかけ始めるのであった。
暑すぎて死ぬ。
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