10-1. プロフェッショナル
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「そう。こんな巨大で頸動脈を狙ってくる蝉、世に放てるわけが無いんだ」
「パニックになりますよね」
「これでも動画で見せた蝉より二周りほど小さくしたし、刺されても死ぬことは無くなったんだがね。そんなこんなで蝉プロジェクトは凍結になった」
「賢い」
博士はサトウの手から、動画がループ再生されていたタブレットを回収する。
今度はデスクの上に置いてあった水入りの二八〇ミリペットボトルを手にすると「そこで現行プロジェクトがコレだ」と話を続けた。
「今、水道水の水質悪化のため飲まないようにと言われているだろう?」
「ニュースで聞いたかも。政府が特別販売してる水を飲めって言われてる件ですよね」
「そう。このペットボトルの水のことだ」
「うちの店でも仕入れてますね。飲んだことはないですけど」
「飲んだことはない?どうしてだ?」
「高くて買えないから、ですかね。」
「高くて買えないって、この水はたったの二〇〇円だぞ」
「僕が月に自由に使えるのって一三〇〇円ですよ?水質が悪化してても水道水を飲むしかないんですよね」
小さなペットボトルを六本買うだけで月の手取りが無くなってしまう。
下級国民の最低限の生活に必要な家賃・光熱費・食費は雇用者負担になっているが、ここでいう食費にペットボトル飲料代は含まれないのだ。
また、下級国民であるFランクの消費税率はかなり高く設定されているため、仮中級国民になったばかりのEランクといった貧困層の多くも、わざわざ水を買ったことは無いだろう。
「F・Eランクが購入するには高価なのか。貴重な意見だ、助かるよ」
「あ、はい。それで、その水がナノマシンと関係が?」
「ナノマシンを経口摂取できるよう改良したんだ!この水を飲むだけでナノマシンを全国民に投与できる、はずだったんだが」
「値段が高くて下級国民は買えてませんと」
「盲点だったね。また策を練らねば」
「水道水に入れちゃダメだったんですか?」
「一応、国の極秘計画だからね。水道局の人間との連携なんかも手間じゃないか」
「いろいろ凄そうなことしてるのに変なところでズボラですね」
この帝国が国民を階級制度で管理するよりも前、個人番号で管理していた時代があったそうだ。
だが個人番号を配るだけ配って一〇年ほど特に活用されず、役所での手続きなどの際に国民側の負担が増えただけだったと言われている。
その後、やっと活用されて便利になるのかと思ったら個人番号と保険証が結びついただけだったらしい。
そんなもん最初からやっとけ、しょーもない。
このように帝国の行政とはとにかくズボラで、とりあえず物事を複雑にしておいて仕事をした気になっている人間の集まりなのである。
私個人としてはマイナンバー制度に特に言うことはないです。
いやマジでマジで。
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