8-3. 横付けされたら身構える大きさのバン
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「それで。僕はどこに行けばいいのかな」
野外ステージ前から離れ、駐車場まで歩いてきたサトウが少女に問う。
彼女が指し示した先には、横付けされたら身構える大きさのバンが停車していた。
「こっ、怖えー」
たまに見かけるキャンピングカーくらいの大きさで、スモークガラスで車内を覗けないタイプのバン。
中には帝国にやってきたばかりで、まだ住居の無い上級国民がギチギチに詰まっている事もあり、多くの下級国民がこのバンで連れ去られ帰らぬ者になってきた。下級国民にとってバンは畏怖の対象だ。
「怖くはありません。あの中で博士がお待ちです」
「怖いし、胡散臭いよ。何なの博士って」
バンのバックドアが開くと、勢いよく昇降用の階段が降りる。
サトウはしぶしぶバンのに近づく。バンの大きさから分かっていたが車内は広い。
微かに薬品の臭いが漂って来ることから博士というのも嘘ではないのかもしれない。
「早く入ってきたまえ」
ギチギチに上級国民が詰め込まれていないようで、ひとまず安心する。
白い内装。テーブルの上には実験器具。壁には何かの値を監視するモニターが掛けられている。
中で待ち構えるのは、白衣を纏った無駄にダンディな男。
肩には何故か蝉を乗せている。
「何で蝉?」
「いいから入ってきたまえ。できる限りラボ内の温度は一定に保ちたいんだ」
「あ、はい。すみません」
男が「ラボ」と呼ぶ車内にサトウが入ると、バックドアが閉じた。
少女が男の隣に立つ。恐らく彼が博士なのだろう。
「どうも。蝉で童貞捨てたかで悩んでいたサトウ君」
「誰から聞いたんですか!イナガキ君?」
「いや。君のことはこの子が教えてくれたんだ」
博士が肩に乗せた蝉を指でつつく。生きてはいないらしい。
彼は蝉を手に取るとサトウに手渡した。
「この子に見覚えはないかい?」
「見覚えと言われても」
「この子はね。先日、君を刺した蝉だよ」
「は?あの蝉は僕の部屋のゴミ箱に入ってると思うんですけど」
「安心したまえ。私の配下のプロフェッショナルチームが秘密裏に回収したのだよ」
「安心したまえの使い方、間違ってますからね」
「些事にこだわるな」
「さじ」
些事ではなく結構な問題だと思うのだが、サトウは言葉を呑んだ。
どう考えても博士はサトウよりも上の階級だろう。上級国民が下級国民を車で跳ね飛ばす程度は罪にならない国だ。
余計なことを言って相手の機嫌を損ねるのは避けたかった。
バンは「FOCS Siesta」くらいの大きいのイメージです。
車に詳しくないので、どんなものかよく分かってないですが。
--
お手すきでしたら【評価】と【ブックマーク】の方、どうかお願いします。
評価は下部の星マークで行えます! ※例)☆☆☆☆☆→★★★☆☆




