8-1. 横付けされたら身構える大きさのバン
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
記念庭園内の野外ステージでカワキタ前宰相の演説開始から、すでに三時間。
ステージ上で喋る前宰相は齢一五〇を超えているはずだが、全く疲れた素振りを見せない。元気に一〇〇年前の現役時代の思い出を語っている。
『えーっと、当時の帝国移住者への優遇措置として、移住者の生活にかかる税は全て帝国人の負担だった話はしたよね。愉快だったな、あれな』
『あっ、ところでさぁ。増税したり、他国に金をバラ撒いたりってさぁ。朕が主導したと思う?』
『厳密に言うと違うんだよね!まぁ帝国人からの心無い言葉がきっかけで大増税を提案したんだけどさ』
『実際に、こういうフローを踏んで帝国人を下級国民として虐げていくのが良いですよ。ってことを朕に教えてくれたのは財務卿や外務卿なんだよね』
『二人とも今でも息子と一緒に国政を担ってるからね。この国は上級国民のものだと、もっと他国にアピールしていくそうだ。帝国の未来は明るいね、こりゃ』
前宰相はそこまで一気に喋ると、満足したと言わんばかりにガハハと笑った。
彼が笑ったり、何か大きな動作をする度その体が蛍光緑色に発光する。
「演説。いつ終わるんですかね」
「サトゥ、飽きたのカ」
「こんなの飽きないやつ居ないでしょう」
「途中退席なんかしたラ、どんな目に遭わされるか分からないゾ」
「ワンさんみたいなAランクの上級国民でもですか?」
「前宰相は帝国のトップオブトップだからナ。失礼なことしたらワタシも無事じゃすまないヨ」
「上級国民って何でもして良いわけじゃないんですね」
「そりゃそうだロ。政やってる人間には勝てんヨ」
何やら視線を感じ、サトウとワンが会話を止める。
ステージ上の前宰相は演説を続けながらも二人のことを凝視していた。
先ほどまで偶に発光する程度だったその体は、今では常に光り輝いている。サトウの目には最早ただの光の塊のようにも見えた。
サトウとワンは小声で耳打ちし合う。
「今って目が合ってますよね」
「バッチリとネ」
「あんなにネオンに光られると目に悪いですね」
「光ル?オーラの話してるカ?サトゥ、そんなスピリチュアルな趣味があったのカ」
互いに言いたい事だけ言ってすぐに口を閉じる。
ステージ上で蛍光緑色に輝く老人。この現象について誰も何も言わないことをサトウは不思議に思っていた。
唯一神になったという話だし、こういうものなんだろうか。神って光るものなんだろうか。
『これ面白いんだけどさぁ。朕のやり方だと、当たり前のように帝国人からの支持率って下がるだろ?そしたら適当な理由つけて特別給付金を一万くらい出すのよ。‥‥それだけで愚衆はまた支持するようになるんだよな!その後、増税するだけなのにな!』
ステージ上では政党支持率の回復方法についての暴露が始まった。
その間も前宰相の視線は二人から外れることはない。
エアコンを点けるタイミングと消すタイミングが分からない季節。
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