#276 ナージャ、新世界の創造主
「うーん? 新しいゲームって何やろな?」
そう呟きながらウチは配信を行っていた。
【ナージャの作る新しいゲームか?】
【前のは落ち物パズルだったし】
【RPGとか作ってほしい】
まあそんなコメントが流れてくる。
「RPGか⋯⋯ウチ、ストーリー作る才能無いからな⋯⋯」
なんていうかウチはプログラムいじるのは得意なんやが、小説とか書くのは全然できんタイプやった。
「じゃあさ、ルーミアに話書いてもらえばよくね? アイツ作家だし」
そう無責任なことを言うのはウチの配信によくお邪魔するジュエルやった。
「あんなあ⋯⋯ルーミアも忙しいのにやってとは言えんよ」
「いや聞くだけならタダだし⋯⋯ワンチャン?」
ちなみにこのジュエルはゲーム作りに関してはまるで役に立たん。
しかしその遠慮のない発言がゲーム作りのヒントになる事は多かった。
「⋯⋯というか、なんでアンタ家に居るん? 今日は呼んでないけど?」
「明日は菊花賞だから泊めてもらおうかと」
⋯⋯それのどこが理由や?
【また飯たかりに来たのかジュエルはw】
「猫の餌ならあるから食うてええよ」
「せめて人間の待遇を!」
「金払わんやつに人権は無いよ」
「くそ⋯⋯人権は金で買えるのは事実だから言い返せねえ⋯⋯」
コイツの言う『人権』はソシャゲの人権ガチャの事やけどな。
「じゃあ明日飯奢るからアンタもアイデア出しや」
「おっけー! やるっす!」
こうしてジュエルも新作のゲーム会議に加わることになったんやが⋯⋯。
「結局おまえがやりたい事って何?」
そうストレートに聞いてくるジュエルやった。
「ウチの夢は『自分の世界を作る事』やな」
「じゃあRPGか? でもストーリーをルーミアに書かせたらそれはお前の世界じゃなくね?」
「かもしれん」
哲学やな⋯⋯うーん?
「ストーリー性皆無で世界創造となると⋯⋯サンドボックスタイプのゲームかな?」
「なにそれ?」
「簡単に言うとマイクラや」
「ああ⋯⋯あのブロックゲームか」
マイクラとは『マイクラフト・ワールド』ちゅう有名ゲームの事や。
ジュエルの言う通り多種多様なブロックを組み合わせて色んな物を作れるゲームや。
「お前、パクリはヤバくね?」
「マイクラ自体も別ゲーのパクリやけどな」
こういうのはゲーム業界だとそう珍しくも無い。
なんかアイデアが生まれるとそのコピーゲームが作られて知らんまにジャンル化するのは。
あの有名なエミックスさんもドラファン・ビルダーズちゅうマイクラの系のゲーム作っとるからな。
「たしかにいいアイデアや。 根幹のゲーム部分だけ作れば後はユーザーに丸投げでなんでも遊べるしな⋯⋯」
そう言われると魅力的に思えてきたな、マイクラゲーを作るのは。
「しかし、なんか独自のアイデアを盛り込まんと⋯⋯」
「訴えられると?」
「いや、クリエイターのプライドや」
そんな時やった。
そのコメントが目に入ったのは。
【Vチューバーと一緒に生活できる世界とか夢だなあ】
「⋯⋯それや!」
「なにが?」
そうや! ウチはVチューバーやった!
そうアイドルやねん!
そんなアイドルとファンが一緒に遊べる世界⋯⋯コレや!
「ウチが世界を作り、リスナーに遊んでもらう世界⋯⋯それをマイクラっぽいゲームで作れば!」
「お前それ⋯⋯リスナーから税金ガッポガッポじゃね! ウハウハの左団扇じゃね!」
「そんなアコギな商売せんわっ!」
そうジュエルを叱りつけるウチやった。
「いやでもホンマにマイクラ作りたくなってきた⋯⋯本気で許可貰えんかなロードに⋯⋯」
このロードちゅうのはマイクラの制作者の事で⋯⋯。
その時やった。
【ロード・サラマンダー:いいですよ許可しちゃうぞ】
⋯⋯沈黙が覆った。
そして凍り付くコメント欄⋯⋯。
【マジで?】
【本人居たのか?】
【ロード降臨!?】
【嘘だろ偽物じゃね?】
「こ⋯⋯こここ、これは公式アカウントからのスパチャやね⋯⋯」
ロード・サラマンダーは個人アカも持ってる有名ゲームクリエイターやからな。
しかしまだウチは半信半疑やった。
【あ⋯⋯ロードのツイッター更新した】
「ホンマに!? どれどれ?」
ウチのスマホには有名どころのゲームクリエイターのツイッターをほとんどフォローしてるからな。
すると⋯⋯!
【ロード・サラマンダー:Vチューバー・ナージャのゲーム作りに協力しちゃうぜ!】
とか書いてあった!?
「誰このおっさん?」
「だまれ! このお方をどなたと心得る! 控えろや!」
「⋯⋯はい」
おとなしく黙るナージャやった。
「⋯⋯あの、ホンマにホンマのロードですか?」
するとツイッターがまた更新される。
【ロード・サラマンダー:信じていただけたかね?】
「⋯⋯本物や」
大変なことになった、ウチの配信に神降臨や⋯⋯。
「だから誰だよ?」
ウチもリスナーも事態を把握しつつあるのに、なんにもわからんのはジュエルだけやった。
「あのー⋯⋯ロード・サラマンダーさん? ホントにウチがマイクラっぽいゲーム作ってええんか?」
しばし待つと。
【ロード・サラマンダー:こんど正式な契約書を会社宛てに送りますね】
「⋯⋯ホンマに、ありがとうございます」
怖いなホンマに⋯⋯。
生配信では何が起こるかわかったもんやない。
ホンマに神はおる⋯⋯インターネットには。
そんな事が身に染みた配信やった今日は⋯⋯。
こうして後日、ウチはベツレヘム東京本社に行ってロード・サラマンダー氏本人と契約書を交わすことになるんやが⋯⋯それはまた先の話や。
そしてさらにその後⋯⋯。
「ほい、ナージャのゲーム作り実況はじめるで~!」
そう、ゲームを作る過程を配信で流すいつものウチの配信や。
でも今までと違うのはウチの本当の夢の『自分の世界』を作る事ちゅうことや!
「えーと⋯⋯ここどないしたらええんかな?」
いちおう契約ではプログラムコードの提供とか無いので、完全に無から目コピーしていく事になる。
なので見た目は同じようなマイクラっぽいゲームになるが内部的にはまるで別ゲーになるはずやった。
⋯⋯たぶん。
【そここうしたら⋯⋯】
「ほうほう」
【いい方法ありますぜ】
「なるほどー」
まあたまに技術的に困ることがあってもウチのリスナーにはウチ以上の天才プログラマーが居るから、こうしてその都度的確なアドバイスが送られてくるちゅうわけや。
そんな野生の天才たちの協力もあってゲーム作りは順調に進んでいく⋯⋯。
この時のウチは知らんかった。
ウチのリスナーにはマジで大天才の現役プログラマーや、かつて神とまで言われたようなウィザードたちが見ていたことに⋯⋯。
そしてその人らの技術や知識が惜しみなくウチに与えられている⋯⋯と。
まだこの時のウチには自覚は無かった。
いつしかウチにも⋯⋯新世界を創造する神の力が宿りつつあることに⋯⋯。
ウチの名はナージャ・アプリコット。
新世界の神である。
その世界の名は『アルカンシェア・ガーデン』と名付けられる。
そしてその世界は間もなく創造される⋯⋯。
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