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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第10章 幻想の花嫁

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#274 夢の礎

 私、木下はこのVIP席から声優オーディションを見ることになった。

 近くには相川社長や瀬川部長まで居る⋯⋯。

 私もベツレヘムの社長としてこういう席に慣れないといけないようだ。


「リリカルエンジェル・Vチューバーか⋯⋯。 Vチューバーの企画を立ち上げた時にはこうなるとは思ってなかったなあ」


「それだけ社長に先見の明があったということですな」


 ⋯⋯私もああいうゴマすりを覚えないといけないのだろうか?

 私はそっちは置いといてこっちのアニメの監督と声優科の渡辺さんの方に注目すると⋯⋯。


「虹原かなみはどうします?」

「うーん? やっぱり井上さんかな?」


「ですね、ベテランだしヒーロー戦隊に出ていた経歴もあるから話題にもなるだろうし」


 オーディションといっても100%実力で決まるわけではない。

 そこには政治的なしがらみや打算が渦巻いている。

 なにせ膨大な予算を投入する巨大プロジェクトなのだから⋯⋯。


「次は⋯⋯ルーミアか」

「努力家ですよ彼女は」


「ふん⋯⋯それでも合わなければ俺は使わんからな、たとえ瀬川さんの指示でも」


 ⋯⋯どうやらこれは出来レースなのだろうか?

 まあ確かにVチューバーのアニメの声優に現役のVチューバーを起用する。

 話題にはなるだろう⋯⋯炎上もするだろうが瀬川部長らしい手腕と言える。


 そして品定めする私達の前でルーミア⋯⋯留美さんの演技が始まる。


「どうです監督?」

「⋯⋯ビビっときた。 あれやらせよう、この子には」


「もしかして天宮えるですか?」

「うん⋯⋯イメージ通りの声だ」


「たしかにいいですね。 ⋯⋯まあこういうのもアリか」


 なんか留美さんは予定にない役に決まったらしい?

 ⋯⋯大丈夫かしら?


 そしてオーディションが進み最後のアリスケ君の番になった。


「ド素人なんだって、この子?」

「まあ⋯⋯でもいい声なんですよね」


「使いたくねーな、そんなVチューバーを声優に」


 どうやらアニメ監督は基本的に今回のキャストにVチューバーをゴリ推すのが気にくわないらしい⋯⋯。

 まあ仕方ないか?


 ⋯⋯ところがアリスの演技が始まると。


「はっはっは! マジで!? 完全に本人じゃんこの声は!」


 ⋯⋯アリスケ君の声を聞いて大笑いなアニメ監督だった。


「どうです監督? アリスは?」

「演技指導はしっかりやれ渡辺! もう俺はこの声でしか星野ゆめこを作れねえよ!」


 ⋯⋯こうして私の目の前で声優のオーディションが終わった。




「どうだったかね?」


「いや瀬川さんに無茶言われた時にはどうしようかと思ったけど⋯⋯いい素材でしたね、アリスもルーミアも! いいアニメにできそうです!」


 どうやら否定的だったアニメ監督の手のひらは返ったようだった。


「じゃあ後は頼んだよ」

「わかりました」


 そう言って瀬川部長は退室した。


 思わず私はその後を追う。

 そして通路で追いついた瀬川部長に私は──。


「今回の事はすべて瀬川部長のシナリオなんですか?」

「ん⋯⋯まあね」


 そうあっさりと認める。


「声優オーディションなんて嘘で、ただの出来レースじゃないですか!」

「それがなにか悪いかね?」


「あの子たちは純粋に努力して夢を叶えようとしているのに⋯⋯いいんですか! こんなので!」


 なぜ私はこんなにも腹が立つのだろう?

 それはまだ私が夢を見ている子供だからなのだろうか?


「木下⋯⋯私達はなんだ?」

「え?」


「私達は芸能プロダクション⋯⋯夢を売るのが仕事なんだ」


 それはわかる⋯⋯でも!


「⋯⋯夢じゃない。 嘘じゃないですか、こんなのは」


 こんな私を瀬川部長は静かに見つめていた。


「⋯⋯まあ木下は『持ってる側』だからな」

「何のことです?」


「たしかに木下の言う通り嘘だな。 だがしかし⋯⋯本物の夢なんてそうそうあるもんじゃない」

「でも、だからといって⋯⋯」


「この巨大な会社を運営していくにはこうやって夢を作っていく事も必要なんだ」

「⋯⋯いいんですか、それで?」


 私にはこの仕事はやっぱり向いてないのかもしれない⋯⋯。


「木下は今まで人との出会いに恵まれてきただろ?」

「ええまあ⋯⋯それとこれと何か関係が?」


「親、恩師、先輩、上司、部下⋯⋯そしてタレントに。 私はそういうのに縁がなかった」

「瀬川部長⋯⋯?」


「だから私にはこのやり方しかできない。 計画を立てて、シナリオを書いて、夢を作って、演出する⋯⋯」


 たしかに瀬川部長はそうやってこのヴィアラッテア芸能会社でのし上がってきた人だ。


「でも、だからと言って!」


「そうだ木下⋯⋯お前は正しい」

「え?」


「正しいかそうでないかで言えば私のやり方は正しくない。 でも必要なんだ、この会社を支える経営基盤には⋯⋯な」


「それはそうですけど⋯⋯でも本当にそれだけでいいのですか?」


「良くはない。 ⋯⋯こんな嘘が続けばいずれファンの心は離れる、魔法は解けてしまう。 ⋯⋯だから必要なんだ⋯⋯本物の魔法も」


「本物の魔法⋯⋯?」


「私が作れるのは偽物の宝石だけだ。 でもな木下、お前には偽物じゃない本物のスターを見つける才能がある!」


「私の才能?」


「才能を見つける才能。 幻想じゃないリアルのスターを見つけて育てて導ける力だ」


「そんなものが私に?」


「信じられないか自分の力を? 私は信じてるんだがね」


 そういって笑う瀬川部長だった。


「そろそろ信じてみろ木下。 お前の魔法を」


 ⋯⋯あるのか? 私にそんな力が?

 そして窓から夜空を見上げる瀬川部長は⋯⋯。


「星だって一等星ばかりじゃない、いろいろあるんだ。 それでいいんじゃないかな?」

「⋯⋯」


 私はこの人をちゃんと知らないのかもしれない⋯⋯。


「それよりいいのか木下?」

「なにがです?」


「今お前のタレントだが⋯⋯メンタルがボロボロだと思うぞ、ちゃんとケアしてやれ」

「⋯⋯! わかってます!」


 そう言って私はその場を離れた!


「木下! お前はお前のやり方でいいんだ! 頼んだぞ魔法使い!」

「⋯⋯わかりました!」


 腹が立つやっぱり。


 ⋯⋯でも瀬川部長にも瀬川部長なりの信念があると感じた。

 私は⋯⋯どうなんだろ? まだわからないな⋯⋯。


 こうして私はショックを受けてるであろう留美さんとアリスケ君のところへと急ぐのだった。






「若いっていいなあ⋯⋯」


「お疲れさまでした瀬川部長」

「おや、お疲れ様です相川社長」


 気がつくと隣に相川社長が立っていた。


「社長⋯⋯私は間違ってるかな?」

「瀬川部長にはこの会社を支えてもらってますよ」


 嬉しい言葉だ。

 だが欲しい言葉じゃない。


「本物ってなんだろうなあ⋯⋯私には見つけられなかったが。 ⋯⋯木下が羨ましいよ」

「嫌がるでしょうね木下(ほんにん)は⋯⋯」


「まあそういうもんかな?」


 そう私と社長は笑う。


「私も若い頃は本物を見つけたかった、でもコネも何もない私には無理だった。 だからまずは社内での地位を築かねば⋯⋯そう思っていたらもうこんな歳だよ」


 この会社に入社してもう30年以上か⋯⋯長かったような短かったような。


「いいんじゃないですか瀬川部長⋯⋯今からでも遅くはないですよ」


「いや、私はもういい。 本物の夢を見るのは若い奴らに任せるよ」


 そして私は社長と別れて歩き出す──。




『こんな時期に声優の願書? いま募集してたか?』

『いえ間違いでしょう。 じゃあ不採用で』

『⋯⋯いや、私が面接するよ。 いま暇だし』




『渡辺君! さっき面接した子なんだが面倒を見てやってくれ』

『こんな時期にですか?』

『私にはわかる⋯⋯この子にはスターの原石の輝きが』

『いつも言ってるじゃないですかそれ⋯⋯わかりました』

『たのんだよ』




『こんど始まったVチューバー企画のメンバーリストです』

『ん⋯⋯? この子はたしか? 声優志望だったのにVチューバーになったのか⋯⋯?』

『なんか家庭の事情でレッスン料が払えなくてそっちに行ったようです』

『まあそういう事もあるか⋯⋯』




『来年のリリカルエンジェルのテーマはVチューバーに決定しました!』

『そうか⋯⋯なら話題作りのために現役Vチューバーに声優をやらせてみてはどうだろうか?』

『なるほど⋯⋯じゃあこの子たちなんかどうでしょう? もともと彼女は声優志望で今でもレッスンを続けてますし!』

『 ん⋯⋯? この子はたしか⋯⋯。いいんじゃないかな⋯⋯それで行こう!』




 私の仕事はアイドルのプロデューサーだ。

 そして私の夢はスターの原石を見つける事⋯⋯()()()


 だがその夢はすっかり色あせてしまい私はリアリストになってしまっていたが⋯⋯。


「私も一度くらいは夢を叶えてみたい⋯⋯」


 願わくば気まぐれに拾った夢の原石が夜空に輝く(スター)になりますように⋯⋯。

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