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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第10章 幻想の花嫁

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#269 アリスとルーミアの声優チャレンジ

 僕と留美さんは自宅でゆっくりとくつろいで居た。

 すると木下さん達がやって来て⋯⋯。


「木下さん、今日は何の用ですか?」

「木下さんとメアリーさん、お疲れ様です」


 そう僕と留美さんで出迎えたのだった。


「今日来たのは⋯⋯あなた達の次のお仕事。 それもVチューバーとしてじゃない、声優としてのお仕事の話を持ってきました」


「⋯⋯声優としての?」


 たしかに以前僕は「ファンのみんなに恩返しできる仕事をしたい」と木下さんに相談したことがあり⋯⋯それで「声優の仕事もやってみる?」という話はあったんだが⋯⋯。


「アリスケ君も声優やるの?」

「うん⋯⋯まあ」


 まあ僕なんて留美さんと違ってガチな声優じゃない真似事なんだけどなあ⋯⋯。


「そうよね! アリスケ君の声質は私よりも声優向きだしね!」

「⋯⋯そうかな?」


 いや自分でもわかってはいるんだよなあ⋯⋯。

 留美さんはどんな役でもこなせる演技派声優タイプなのに僕のこの声は『たった1つの役しかできない声優タイプ』な声なんだよなあ。


 たまに居る『ツンデレ声優ならこの人』みたいな感じかな?

 まあ僕の場合は『あざとい妹タイプ』みたいな役しか出来ないのだが⋯⋯。


「それでね⋯⋯驚かないで聞いてね」


「はい」

「わかりました」


 ⋯⋯留美さんが緊張していた。

 元々Vチューバーじゃなくて声優志望だった留美さんにとっては初めてとなる声優としてのお仕事だからな。

 そう⋯⋯ここから声優、芹沢留美の伝説が始まる!


「あなた達の声優の初仕事は⋯⋯リリカルエンジェルのオーディションです」


「⋯⋯え?」

「うそ⋯⋯」


 僕は素で理解出ず、留美さんは信じられない⋯⋯という気持ちだった。


「おめでとでーす! やったね!」


 そう今まで黙っていたメアリーさんの祝福で留美さんは──。


「やったあー!」


 そう弾けたのだった!?


「やった! 嘘みたい! ホントに!? ねえアリスケ君! 私、あのリリカルエンジェルになれるのよ!」


 そう僕に抱きつく留美さんだった!?


 あわわ!? 留美さんの体が僕にぎゅっと抱きついて!?

 僕は幸せのあまり⋯⋯そのままなすすべもなく⋯⋯。


「えへへ⋯⋯よかったね留美さん」

「うん! ありがとアリスケ君」


 そのまま僕の胸の中で泣き始める留美さんだった。

 そしてその留美さんが落ち着くまで5分くらいかかるのだった。


「⋯⋯そのアリスケ君⋯⋯ごめん」

「いやいいさ! はははっ」


 まんざらでもなかった!

 だがしかし⋯⋯。


「その⋯⋯あくまでオーディションだからね、留美さん?」


 そう念押しする木下さんだった。


「はい⋯⋯でもチャンスが巡ってくること自体ありえないと思っていたので。 精一杯がんばります!」


 そう真剣に決意する留美さんだった。

 留美さんがこうなる理由はよくわかる。


 そもそも『リリカルエンジェル』とは⋯⋯20年くらい続く長寿番組のアニメシリーズの事だ。

 毎年1年毎にキャラと設定はリセットされて続く珍しい形式のアニメと言える。

 そのパラレルワールドともいえるシリーズのキャラ達は劇場版とかで共演もあったりなどなかなか歴史を感じさせる作品である。


 そんなリリカルエンジェルだが⋯⋯主人公役の声優には新人声優を起用することが多く、結果その選ばれし新人声優はその後すごく有名になって仕事も舞い込む傾向がある。

 そのためリリカルエンジェルは新人声優の登竜門的な扱いになっている。


 ⋯⋯それに留美さんが選ばれた⋯⋯⋯⋯あれ?


「でもなんで留美さんが? 新人どころかまったくデビューすらしてなくてもオファーが来るの?」


 そう僕は自然な疑問を口にした。


「そ⋯⋯そうね? たしかに?」


 留美さんも冷静になってきたようだ。


「⋯⋯この事は留美さんにとっては不本意かもしれないけど、よく聞いてね」

「はい」


「今度のリリカルエンジェルのテーマはVチューバーなのよ」

「それで私たちにオファーが!?」


 僕にも事情が見えてきた。


「つまりデキレース? そのVチューバーのアニメだからVチューバーに声優やらせて宣伝しようという?」

「まあ端的に言ってそのとおりね」


 そうキッパリ言う木下さんだった。


 まあ僕はどうでもいい声優としてのプライドなんか無いし⋯⋯。

 でも留美さんは違う。


 声優を夢見て声優を目指して⋯⋯今はVチューバーやってるけどそれでも将来は声優になる夢は忘れてなくて。

 今でも週に半分くらいは事務所に通って遅くまでレッスンしている努力の人が留美さんなんだ。


 僕なんか週に1回くらいのレッスンだからな⋯⋯覚悟が違う。


 そんな留美さんにとってこの話は侮辱なのではないだろうか?

 ⋯⋯でも!


「留美さん! 気持ちはわかるけどコレはチャンスだから!」


「わかってるアリスケ君。 ⋯⋯ありがとう。 たとえどんな形にしろ私にこんなチャンスが巡ってくること自体ありえないのに⋯⋯だから私は絶対にこの仕事をする!」


 そう燃えていた留美さんは。

 そんな留美さんを見て木下さんはさらに⋯⋯。


「それからこのオーディションにもし受かっても芹沢留美としてじゃない、『声優ルーミア』としてのデビューになるけど⋯⋯それでもいいのね?」


 いいのか留美さん?

 僕はむしろ本名で声優デビューなんてごめんだから『声優アリス』でまったくかまわないけど?


「⋯⋯いいです! 本名を知らしめたいみたいな動機じゃないので私が声優を目指すのは! 声優さえできればルーミアでもいいです!」


 ⋯⋯まあ留美さんがそれでいいのなら。


「それに⋯⋯、本名でデビューしたらルーミアの正体まで私だってバレると思うし⋯⋯」


 あ⋯⋯そこ気にしてたんだ⋯⋯。

 まあたしかにまだ学生の留美さんがあんな猫耳アバターのVチューバーやってることがクラスにバレたら⋯⋯。


 うん⋯⋯残酷な公開処刑待ったなしだな。

 僕だってこんな声なのが学校でバレたら学校を辞めると思うし。


「⋯⋯それじゃあ2人ともOKね? まあオーディションを受ける自体はほとんど業務命令だったんだけど」


 そうなのか?


「でもオーディションってことは何人もの声優さんに混じって演技テストをするんですよね?」

「そうなるわね」


「それって僕たちの正体がオーディション受ける声優さんにバレるんじゃ?」

「⋯⋯対策を考えるわ」


 まあ声優なんて個別に別取りとかするし。

 でも声優の事も結構好きな僕にとってはどんな声優さんと共演できるか楽しみでもあり。

 ⋯⋯まあ気楽に行こう!


 僕なんかが受かるほど甘い世界じゃないし!

 アリスはせいぜい世間様への宣伝担当だと割り切ろう。

 そのかわり⋯⋯。


「留美さん頑張ってね。 絶対にリリカルエンジェルになろうね!」


「うん⋯⋯そのアリスケ君も」

「僕? 僕はまあそこそこやるだけだよね!」


 そう気楽に笑う僕だった。

 そんな僕をジッと見つめる留美さんだった。


 そしてメアリーさんが僕に向かって。


「聞いてるとアリスちゃんの声って思いっきり主人公タイプですよねー」


 はあ?


「⋯⋯僕の声が主人公タイプ?」


 そういやリリカルエンジェルの主人公像はたいてい明るくおバカで純粋な女の子だった。

 ⋯⋯思いっきり僕向きの役じゃないのかコレ!?


「あ⋯⋯木下さん。 やっぱり僕このオーディション出ない方が⋯⋯」

「そういうわけにはいかないのよ。 ⋯⋯私だって逆らえない上からの業務命令なんだから」


 木下社長も辛い立場らしい⋯⋯。


「どうしよ留美さん⋯⋯僕?」


 そんな僕を見つめて留美さんは。


「リリカルエンジェルはたしかにすごいチャンスだけど⋯⋯私は声優になりたいのであってリリカルエンジェルになりたかったわけじゃないわ! だから⋯⋯アリスケ君もちゃんとオーディションを受けなさい!」


「いいの? 留美さんはそれで?」


「もしもアリスケ君が手を抜いて、それで結果的に私が選ばれたとしたら⋯⋯怒るし嫌いになるわよ、アリスケ君の事を」


 ⋯⋯留美さん、そこまでの決意を?


「わかったよ留美さん。 僕もちゃんとオーディションを受けるから⋯⋯だから留美さんも頑張って!」

「もちろんよアリスケ君!」


 そして僕は留美さんと握手する。

 その留美さんの手はしっかりと⋯⋯意外なほど力がこもっていたのだった。

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