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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第10章 幻想の花嫁

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#268 木下新社長と重大会議

 私、木下は新しいVチューバー会社ベツレヘムの新社長に就任した。

 まあ小さな独立子会社なんだけど⋯⋯。


 それでも親会社のヴィアラッテアと縁が切れるはずもない。

 というか⋯⋯現在のベツレヘムの住居はヴィアラッテア社屋の1個室をそのまま流用しているわけだ。

 まあそのうちに別棟に独立するだろうが⋯⋯。


 でも今日みたいな会議の時は移動が楽でちょうど良かったりする。


「むふふ⋯⋯ウサーコ新社長の出陣ですね!」

「メアリ先輩よろしくお願いいたします」


 私の隣に居るメアリー・ダルフレッドは元世界的なフルート奏者だ。

 でも今は私の秘書になっている。


「だめでーすウサーコ! 私はウサーコの部下なのです! もはやウサーコの先輩ではありませーん!」


「ならウサーコと呼ばないでくれませんか、メアリー・ダルフレッドさん?」


「だめです。 これはメアリ先輩の特権なのです! それと他人行儀はやめてメアリと呼びなさーい!」


 ⋯⋯正直使いにくい人材である。

 しかし仕事は有能だし、とにかく信用はできる間柄なので重宝するのも事実⋯⋯。


 そして私はヴィアラッテアの第一会議室へと入ろうとしたら⋯⋯。


「おや木下さん」

「あら西城先生じゃないですか?」


 なんとイラストレーターの西城パステル先生と出会ってしまった。


 なぜ会社の重役会議にイラストレーターが?

 そう思うかもしれないが西城先生はこのヴィアラッテアの重鎮で大株主でもあるのでそう珍しい事ではない。


「この度は新社長就任おめでとう木下さん」

「はは⋯⋯恐縮です」


 そう話す私と西城先生の近くを通り過ぎようとしていたヴィアラッテア社員は⋯⋯。


「木下社長⋯⋯おはようございます」

「おはようございます」


「⋯⋯おはようございます皆さん」


 そう⋯⋯私を無視はしなかった。

 彼らは私のこの社長抜擢が気にくわなかった連中であるが⋯⋯西城先生の前ではおとなしかった。

 これも西城先生の人徳というものだろう。


「さあ入りましょうか木下さん」

「はい先生」


 そんな西城先生を見つめるメアリは無言だった。


「どうしたのメアリ?」

「いや、この人の手であのリリカルエンジェルが描かれていたのかと思うと⋯⋯」


「ごめんなさいね、こんなおばあちゃんで」

「いえそんな事ありません! でもなんか胸がいっぱいで言葉が出なくて⋯⋯」


 このメアリ先輩⋯⋯リリカルエンジェルの大ファンである。

 そもそも海外の留学先で私と仲良くなったきっかけの1つがこのリリカルエンジェルの話題だったからだ。


 メアリ先輩はいわゆるジャパニメーションオタクで⋯⋯当時の日本人である私よりもコアなアニメに詳しかった。

 そんなメアリと私が話題にできるアニメは私でも見ていた国民的な女の子向けのリリカルエンジェル・シリーズくらいだったのだ。


 そんなリリカルエンジェル・シリーズも長いものでもう20周年を迎える長寿シリーズになってしまっている。


「その西城先生! 握手お願いします!」

「あら嬉しいわね」


 そうメアリと握手する西城先生だった。


「⋯⋯あなた楽器演奏者かしら?」

「なぜわかるのですか?」


「私は絵描きよ。 色んな職業の人の手を観察してきたからその経験ね」

「⋯⋯どの楽器かわかりますか?」


「うーんそうね⋯⋯ピッコロ? いやフルートかしら? その指の跡は?」

「当たりです! すごい!」


「そう? でもわかりやすかったわ貴方の手は。 いっぱい練習した証拠ね」

「はい⋯⋯いっぱい練習しました」


 ⋯⋯こんな嬉しそうなメアリ先輩は初めて見たな。

 いや⋯⋯去年日本に来たメアリ先輩と見に行ったリリカルエンジェルの映画を見終わった後の先輩もこんなだったような⋯⋯。


「来たようだな木下社長」

「おやこれは西城先生も、この度はよろしくお願いいたします」


 そう今度近づいてきたのはこのヴィアラッテアの社長で映子ちゃんの父親でもある相川栄一郎と⋯⋯。


「木下君も頼むよ」

「はい⋯⋯瀬川部長」


 アイドル部の重役⋯⋯いや今はVチューバー新プロジェクトリーダーの瀬川部長だった。


「それでは会議を始める。 席に着きたまえ」

「はい」


 こうして会議が始まる。




 今回の会議にベツレヘム社長の私が呼ばれた理由が⋯⋯。


「それでは今回の議題である⋯⋯来季のリリカルエンジェルである『リリカルエンジェル・Vチューバー』について話し合おう」


 そうなのだ。

 息の長いシリーズであるリリカルエンジェルだが次のシリーズはなんとVチューバーがテーマなのだった。


 というのもリリカルエンジェル・シリーズはよく『女の子のなりたい職業』がモチーフになることが多く、最近のトレンドはVチューバーだという。

 そこで今回はVチューバーをテーマにしたリリカルエンジェルとなったのだった。


「それでは会議の司会進行はこの瀬川が行います」


 瀬川さんが司会する会議はスムーズに進んだ。

 というか毎年同じように進行するこの会議はもはや年中行事といえる、段取りはもう決まっているのだ。


 ところが今年に限っての例外があったのだ。


「このヴィアラッテアはVチューバービジネスの最大手である。 それを生かしたキャスティングを提案します!」


 ⋯⋯これだ、私が今回この会議に呼ばれた理由が。


 基本的に歴代のリリカルエンジェルの声優は新人とベテランをバランスよく配置する。

 しかし今回の試みは⋯⋯。


「Vチューバーのルーミアとアリスを主人公ペアとして売り出していきたいと考えております!」


 そう力強く発言する瀬川部長に拍手が送られる⋯⋯うん、社内政治的にも最強クラスの部長だからな瀬川さんは。


「あの! アリスとルーミアはたしかに声優レッスンを受けておりますが⋯⋯いきなり主役は重荷では?」


 そう私は反論するが。


「そうなのか? 渡辺君?」


「声優科、指導員の渡辺です。 ルーミアは元々声優志望でそろそろデビューさせたいと常々思っていました。 アリスの方も本人のキャラを生かしたキャラ造形ならばやっていけると確信しております」


 そう普段からアリスとルーミアの声優指導をおこなっている指導員の渡辺さんもこの場に居た。

 さすが瀬川部長⋯⋯抜かりない。


「あら⋯⋯あの子たちが今度の主役に?」


 そう呟くのは隣に座っている西城先生だ。


 さてどうするか⋯⋯正直今の私にはこの提案を止める権限も権力も無い。

 それに⋯⋯声優としてチャレンジしたいルーミアにとってはまたとないチャンスなのは事実。

 アリスの方は⋯⋯どうなんだろう?


 だがしかし。


「主人公ペアを2人とも現役Vチューバーに演じさせる⋯⋯たしかに宣伝効果はあるでしょうがリスクもあります! どちらか1人だけにしてもう1人はベテランを配置すべきでは?」


 そう提案したのはアニメ制作の監督だった。


「たしかに宣伝目的なら1人だけでも⋯⋯」


 そういう声も上がり始める。

 さてどうするのか瀬川部長は?


「そういう意見も私は考慮していました。 そこで提案です!

 主人公ペアの声優オーディションをニコチューブによる生配信で行うというのはどうでしょう!」


 すごい提案が出てきた!?

 ⋯⋯強引だけどこの用意周到な瀬川部長のやり方は参考になるなあ。


「オーディションか⋯⋯おもしろい」


 その相川社長の声で決まった。


「それではリリカルエンジェル・Vチューバーの主人公ペアの公式声優オーディションを行う事を決定する!」


 さてどうなることやら⋯⋯。

 というか⋯⋯有介君も留美ちゃんもこの事ぜんぜん知らないのよね⋯⋯。


 まあ事前に声優の仕事があるかもとは言っていたが⋯⋯まさか初めての声優仕事がこんな大事になるとは想像もしていなかったに違いない。


「ウサーコの会社に来てよかった⋯⋯。 いきなりこんなリリカルエンジェルに関われる仕事ができるなんて」

「あらあなたはリリカルエンジェルのファンなの?」


「はいです! 子供の頃から見てました! 今も見てます!」

「嬉しいわね」


 そう呑気に会話する西城先生とメアリ先輩だった⋯⋯。

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