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想像以上に真面目で、一途で、青臭い考え方をするひとだった。
私の中の王様に対する評価は大分前から結構高くて、誠実な大人のひとだと思ってた。でも今日、その認識を改めざるを得ない。……このひとは、割と無茶苦茶で、割と子どもだ。
「……呆れてものが言えません」
王様のくせに、と言えば力不足を肯定して責めたように思ったのだろう。しゅんとうつむく。
「あのですね。花なんて、成長を速めてやらなくても育つんです。そんなことしなくても、適切な環境と時間があれば育っていくんです。あなたがやったことは、今となっては余計なことですよ」
「……ああ」
「もっと建設的に考えましょうよ。あなたが私の生活を改善してくれたから、私は私のやりたいことを好き勝手できてる。それで満足ですよ。でもまだ罪悪感があって、何かしたいっていうのなら、私とか周りに迷惑かけないことをしてくれた方がよっぽど嬉しい」
「……例えば?」
「王様にしかできないこと、いっぱいあるんじゃないですか。国の公的整備に関してとか、法律に関してとか。人間との関係をどうしたいのか考える、とか」
「……」
「……どうしても私のやってることを手伝いたいんだっていうなら、植林作業を支援してください」
「植林……?」
そうです、と胸を張ってみる。私はまだまだこの国を豊かにするつもりなんですよ、と伝わるように。
「この国の山は緑がない。私の世界では、山には緑が必要なんです。色んな理由で。だから、あの殺風景な山並みをもっと青々しくしたい。農業とか花の栽培とは規模が違うから、私一人じゃどうにもできないんです」
手伝ってくれますか。聞けば、無論だ!と王様は意気込んだ。
「……お前の言う通りだな。我は我にしかできぬことを」
お前に褒めてもらえるように。……そう微笑むと王様は、握ったままだって私の手を引き寄せ、私を抱きしめた。
それがあんまり自然な動作で、あまりに久々な、誰かからの抱擁だったから、私はしばらく、その腕の中から、逃げることを忘れた。




