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豊かな国の作り方  作者: 羽月
芽が出ました
17/21

7

 瞳いっぱいに涙を溜める娘の姿に、我はその荒れた手を握ったまま、身じろぐこともできなかった。


 そんなつもりはなかった。娘の気持ちを踏みにじるつもりも、その自尊心を踏みにじるつもりもなかったのだ。そんなつもりではなかった。しかし、我のしたことは、そういうことだ。我は、この娘を、泣かせた。


「……すまぬ」


 我が取る娘の左手は、小さく土仕事で荒れ……我よりもよほど働いている、立派な労働者の手だ。これは娘の誇りなのだろう。そう思えば、確かに我のこの思いは、その誇りを傷付けるものでしかなかった。


「軽々しく、謝らないで……」

「……すまぬ」

「っ、だから、」

「すまぬ。傷付けるつもりは……なかった」


 貴族の娘のような滑らかさなど全くない、けれどこの上なく愛おしいその手を、我は半ば無意識に撫でていた。


「やりたくもないことを強要させたのだと、この世界で生きていく覚悟をさせてしまったのだと、我はそう思っていた。しかし、そうではなかったのだな。そなたはそなたの意思で、この国を豊かにしたいと思ってくれているのだな。すまない」

「……謝られても」

「聞き流せばよい。我がそなたに罪悪感をもつのは、我がこの国の王である以上仕方のないことなのだ」

「……義務感?」

「半分ほどは。もう半分は、我個人の問題よ。そなたが我を許し、己の業績を認めよと訴えても、今の我にはまだできぬのだ。我は、我を許せぬが故」

「それって、つまり……」

「……己の力不足に、ほとほと嫌気がさす」


 この程度で倒れるようでは、使いものにならぬな。自嘲すれば、娘は言葉を失った様子で口を閉ざした。

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