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走りながら聞いた話を、まとめれば。
――この国に暮らす彼らは人間と違って魔法を使えるけれど、ものを壊すとか燃やすとか、攻撃に使えるような魔法が元々得意。
――植物の成長を早めるような、時に関する魔法というのはとても力を使う魔法。
――王族は高い魔力を持つ一族だけれど、時の魔法を連発できるほどずば抜けてもいない。
――あのひとは無茶をしてた。今日ついに、倒れてしまったくらいに。
そんなこと頼んでません、倒れるほどの無茶をしてまで私を助けてくれようとしなくても結構です。
案内された王様の寝室は広いけれど実用重視の内装で、ふかふかだけれど別に天蓋つきとか大人が五人横に並んでも余裕とかそういうわけでもないベッド、そこに力なく沈み込む王様。目に入れた瞬間、そう言ってしまってた。
「……すまない。しかし」
「そんな風に助けてもらわなくても、今は手伝ってくれるひともいるし、理解もあるし、時間さえあれば何でもきっとどうにかなります。……そんな、自分の身を削るようなこと、されても私は全然嬉しくない」
つらそうに、顔を歪める王様。どうにかこうにかといった様子で上半身を起こすと、周りが安静にしろというのも聞かないで、真っ直ぐに、どこか縋るような目をして私を見つめて、
「……だが、そなたはその身を削って成した」
力なく、伸ばされる手。そっと私の手を取る。
「報いなければ……申し訳が立たぬ。還して、やれぬのだ。せめて、この身を捧げてでも、そなたの願いを叶えたい。もし、ただその身を削り続け、何も叶わぬようであったら……あまりにも」
続く言葉は、なかった。けれど、何と言いたいのか、よくわかった。――哀れだ。きっと、そう言おうとした。ぐつ、と頭の中が煮え始める。
「……哀れまれたくない。そんな、今になって、約束守ってほしかった時に、一番救ってほしかった時に、何もしてくれなかったくせに」
今更、と口をつく。怒りが、この世界からは還れないと初めて知ったあの日のような怒りが、体を震わせるのがよくわかった。
「今更、何よ!そんな罪滅ぼし、自分の気持ちを軽くしたいだけでしょ!わ、私を可哀想だって、哀れんで……可哀想だから何よ!そんなのっ!私は納得して、もう還れないってちゃんと納得して、この世界で頑張って生きていこうって、もう決めてる!決めてるのに、私が自分で決めたことを、そうやって哀れんだりしないでよっ!!!」
言い切って、途端に、自分がひどくみじめになった気がした。この土地を、豊かにしよう。緑あふれる土地にしたい。そう思って、前向きに頑張っても、この王様は心の底からは褒めてくれないのだ。喜んでくれないのだ。申し訳ないって、いつもそう思って、私がしたくてしたことを、辱めようとするんだ。ひどい運命を押し付けてしまった、って。
なんてひどいひとだろう。そんな風に思われ続けなければならないなんて、もう悔しくて悔しくて、目頭がかっと熱を持つのを止めることなんてできなかった。




