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桜があればいいんだけど、と思って似た植物を探したのは、多分しみついた日本人の心のせいだ。勿論、懐かしさとか、元いた世界への郷愁とか、そういうのは否定しない。桜に付随する日本での思い出とか、それをつらくないとは言わない。
でも、それは私の心を寝返らせるものじゃない。
日本……地球は今の私には、何が何でも還りたい場所じゃあ、もうない。七年だ。人生の七年。それだけの間ここにいれば、この世界、この土地、ここに生きるひとにだって愛着がわく。だから、桜のことを話したのは、別に他意あってのことじゃない。純粋に、私の中の日本人魂が特別に思ってる、あの花を見せてやりたかっただけ。
――淡く色味を帯びた白を。風にそよぐ花弁を。一斉に散る儚さを。赤みを帯びた若葉の柔らかさを。赤色の小さな実を。初夏の葉桜に射す光を。灰色と茶色のつやりとした樹皮を。落葉して裸になった幹で、固く閉じて春の訪れを待つ花芽を。それが、花開く瞬間を。
けれど、花の芽吹きを魔法とやらで速めて手伝ってくれている王様は、喜々として桜を語る私を見て、何だか責められたように思ったみたい。約一年前よりも肉の殺げた気がするそのお綺麗な顔を歪めて、それから視線を逸らした。きっと見つけてみせよう、と呟いて。
――その時の私は、妙に力のこもった口調に特別疑問を感じることもなく、よろしくお願いしますとお言葉に甘えた。




