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豊かな国の作り方  作者: 羽月
芽が出ました
11/21

1

 人間、衣食住が足りれば全て満たされるってもんではない。遊びとか、趣味とか、安らぎとか。勿論仕事とか。色んな要素が生活を豊かにする。


 例えば、花とか。野菜類の栽培は何より先に大切なことだけれど、生きるために必ずしも必要でない愛でるためだけのお花とか、青々した野原とか。この土地は、まだまだ寂しい。少し離れた山並みも、もう少し遠くの山並みも、赤茶けた色で。あそこを緑で覆ってやりたい、最近はそんな大それたことまで考えてる。


 ゆくゆくは緑化事業にまで手を伸ばす心積もりでいながら、手始めに花を育てることにした。綺麗な花を咲かせる、生命力豊かな雑草の種。作物の種同様こっそり人間の国で仕入れてきたらしい、栽培用の花の種。どちらも同じように育てて、あわよくば交配して、新しい品種を作りたいと思ってる。この城が、街が、国中が花の都になったら、どれほど美しいことだろう。……荒れていながらもここは、私が元いた世界より、やっぱり自然が多い。コンクリートで固められた道なんてないし、空を無数に這う電線もない。言うまでもなく、車とか、電車とかも。そもそも電気なんてない。あれらは便利だけど、どうしても自然を大なり小なり壊すものだ。とはいえ、手を加えないそのままの自然を自然と呼ぶかどうかは、難しいところなんだけど。人間が想像する原風景には、ひとの手が入っているのが普通だから。


 でもまあ、そういう難しいことは置いておいて、花が咲き乱れていたら綺麗だろうな。心が安らぐだろうな。というか安らぐ、私が嬉しい。そうやって、半ば自分の心の平穏のため花栽培に着手しだしたのは、あとひと月ほどで七年目を迎える頃。指導者教育も順調に進んで、あとは実践で、と特に覚えのよかった数人を第一陣として地方に派遣してから、二ヶ月弱経った時分のこと。




 ……そして、最近。


 あの、『還れない』宣言からこっち全く姿を見ていなかった王様が何故か私の仕事に手を貸すようになっていた。

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