努力しない勇者志望の妹は、兄を監査し竜はペット扱いに怒る
レーヴェルト城。
グラウヴァルトの執務室に家臣が駆け込んできたのは、朝の会議が始まる直前だった。
「ご報告!」
息を切らした家臣は、扉の前で膝をつき、声を張った。
「アルノルト様についての続報でございます!」
机の上で書類を読んでいたグラウヴァルト・レーヴェルトは、眉をぴくりと動かした。
王国軍の重鎮。
辺境領を預かる武人。
その顔に、ほんのわずか嫌な予感が走る。
「……言え」
「はっ!」
家臣は勢いよく顔を上げた。
「アルノルト様が竜を従え、盗賊団を改心させ、井戸を蘇らせ、牧畜を始め、川を曲げました!」
部屋の空気が止まった。
グラウヴァルトの眉が、不自然な角度で固まる。
「……は?」
家臣はもう一度、今度は少し丁寧に言った。
「アルノルト様が、竜を従え、盗賊団を改心させ、井戸を蘇らせ、牧畜を始め、川を曲げました」
「復唱するな。悪夢が鮮明になる」
グラウヴァルトは額を押さえた。
「あのバカ息子が?」
「はい」
「竜を?」
「はい」
「盗賊団を?」
「はい」
「井戸を?」
「はい」
「牧畜を?」
「はい」
「川を?」
「はい」
グラウヴァルトはしばらく黙った。
それから、机を叩いた。
「なにやってんだ、あいつはぁぁ!」
羊皮紙が跳ねた。
インク壺が危うく倒れかけ、壁際に控えていた文官が慌てて押さえる。
家臣はさらに続けた。
「なお、村人からは《勇者アル》と呼ばれ始めているとのことです」
「志望を抜くな! あいつはまだ志望だ!」
「はっ。では《勇者志望アル》と」
「そこを訂正してどうする!」
グラウヴァルトは立ち上がり、机上の地図を見下ろした。
そこには、数日前まではなかった白い糸がいくつも伸びている。
アルが関わった村。
牧場化した痩せ畑。
《宵の見張り》が生まれた街道。
水帳を始めた井戸の村。
曲川遊水地を作った洪水村。
白い糸は、まるで息子の足跡のように、領内の問題地を次々につないでいた。
「監視役としてライネルを付けておいたのに……」
グラウヴァルトはこめかみを押さえた。
「くそ、あの真面目戦士め。胃を壊して倒れているに違いない」
「倒れてはおりません」
「そうか」
「ただ、しきりに胃を押さえているとの噂です」
「知ってる!」
グラウヴァルトは深々と息を吐いた。
怒っている。
間違いなく怒っている。
だが、その怒りはどこか焦点を失っていた。
息子は失敗していない。
むしろ、結果だけを見れば成功している。
盗賊は減った。
井戸は戻った。
牧場は冬を越す手段になりつつある。
次の大雨では、洪水被害も減るかもしれない。
問題はただ一つ。
やり方が、父親の想像を毎回きれいに踏み越えていくことだった。
「……セリア」
グラウヴァルトは壁際を振り向いた。
そこには、ひとりの少女が立っていた。
セリア・レーヴェルト。
アルノルトの妹。
兄より二つほど年下。
落ち着いた茶色の髪をきちんと整え、背筋はまっすぐ。
兄とは違い、服装にも姿勢にも乱れがない。
手には、小さな手帳。
表情は穏やか。
ただし、目だけは忙しく周囲を観察していた。
「お前が見に行け」
「兄さまを、ですか」
「そうだ。あいつがまた馬鹿をやって死なれても困る」
「承知しました」
返事は淡々としていた。
だが、その胸の内では別の感情が動いていた。
(兄さまが、またとんでもないことを――)
心配。
呆れ。
そして、ほんの少しの高揚。
セリアにとって、兄は昔から変な人だった。
昼寝ばかりしている。
剣も魔法もほどほど。
父には怒られる。
家臣には呆れられる。
それでも、誰も見ていないところを見ている人だった。
井戸の水が濁った時も、怒る村人ではなく、汚れがどこから流れてきたのかを見た。
誰かを責めるより先に、手順を考えた。
セリアはそれを覚えている。
だからこそ、兄が何をしているのか、自分の目で確かめたかった。
グラウヴァルトは黒い封蝋の通行証を差し出した。
「これを持っていけ。必要なら村の代表にも見せろ」
「はい」
「それと、ライネルに伝えろ」
「何をでしょう」
「胃薬は、戻ったら支給する」
「今、必要なのでは」
「……それもそうだな」
グラウヴァルトは引き出しから小袋を取り出した。
「持っていけ」
「承知しました」
セリアは通行証と胃薬を受け取り、静かに一礼した。
「では、兄さまの監査に向かいます」
「監査?」
「はい。兄さまは放置すると、なぜか制度を増やしますので」
グラウヴァルトは反論できなかった。
◇
セリアが最初に見たのは、川だった。
丘を越えた先。
かつて洪水に悩まされていた村には、まだ泥の跡が残っている。
だが、空気は暗くなかった。
柳の若木が並び、低地には杭が打たれ、《曲川遊水地》と書かれた看板が立っている。
その下には、子どもの字でこう書き足されていた。
《アル川》
セリアは看板を見て、目を細めた。
「兄さま……やっぱり無茶をしていたのね」
水害の爪痕はまだ消えていない。
だが、村人たちは動いている。
柳を植える者。
石を並べる者。
流路を確認する者。
かつて川に怯えるだけだった村が、今は《川番》という役目を持って川を見ていた。
セリアは手帳を開く。
《観察一。兄、川を曲げたというより旧河道を再利用した模様。名称はアル川。本人の意思かは不明。要確認》
その時だった。
「おお、セリア!」
聞き慣れた声がした。
振り向くと、兄がいた。
アルノルト・レーヴェルト。
寝癖のついた金髪。
少しくたびれた旅装。
腰には剣よりも目立つ古書と筆記具。
相変わらず貴族の嫡男というより、昼寝場所を探して歩く若い書記官に近い。
アルは嬉しそうに手を振った。
「久しぶり! 元気だった?」
「兄さま」
セリアは軽く一礼した。
「父上より、監査に参りました」
「監査?」
「はい。兄さまの行動が評価不能とのことで」
「評価不能って、なんかかっこいいね」
「褒めていません」
セリアは淡々と言った。
その後ろから、ライネルが現れた。
目の下に少し疲れがある。
姿勢も装備も乱れてはいない。
ただ、片手だけが自然に胃のあたりへ添えられていた。
セリアを見た瞬間、ライネルの表情が明らかに緩む。
「セリア様……!」
その声には、救援部隊を見つけた兵士の響きがあった。
「やっと常識人が来てくれた……!」
「ライネル」
セリアは小袋を差し出した。
「父上より胃薬です」
ライネルは両手で受け取った。
「ありがたく」
「それほどまでに?」
「それほどまでに、です」
セリアは無言で手帳へ書いた。
《観察二。ライネル、想定以上に消耗。胃薬支給は継続案件》
その時、アルが後ろを振り向いた。
「ほら、リュシエル! こっち来て! うちの妹だよ!」
セリアは視線を上げた。
そこにいたのは、黒髪と黄金の瞳を持つ女だった。
褐色の肌。
しなやかな体。
人の姿をしている。
だが、人間ではないと一目で分かった。
なにより、その目。
黄金色の瞳の奥で、縦長の瞳孔が細く光っている。
リュシエル。
古き谷の守護竜。
セリアは、兄に紹介される前にそう判断した。
リュシエルもまた、セリアを見た。
値踏みするような目。
どこか、自分の縄張りへ入ってきた相手を見るような目だった。
「……妹? へぇ」
声に、わずかな棘がある。
アルは何も分かっていない顔で笑った。
「じゃーん、紹介するよ! この子はリュシエル。すっごいんだ。竜なんだぜ!」
セリアはにこやかに微笑んだ。
ただし、瞳だけは笑っていなかった。
「……へぇ。兄さま、ペットを飼ったんだ」
空気が凍った。
ライネルが目を閉じる。
「セリア様、それは――」
「……今、何と?」
リュシエルの耳がぴくりと動いた。
頬が赤くなる。
怒りなのか、羞恥なのか、本人にも分かっていない顔だった。
セリアは微笑んだまま続ける。
「ペット。大きくて、手間はかかりそうだけれど、頭は単純そう」
「ふ、ふんっ。兄さまって何よ。あなた、この娘は何者?」
「妹のセリアだよ。可愛いだろ?」
アルがにこにこ顔で言った。
平然と油を注いだ。
「可愛い? この小娘が?」
「小娘、ですって?」
セリアの声が、すっと冷える。
「兄をたぶらかす不審者が、何か言った?」
「たぶらかす? わたしはアルの相棒よ」
「兄さまは昔から、変なものを拾う癖があります」
「拾われてない。わたしが選んだの」
「なお悪いわね。自走式の厄介事ですか」
「アンタ、あたしの晩ご飯になりたいの?」
リュシエルの黄金の瞳が光る。
見えない尾が、地面を叩いたような圧が走った。
セリアは微笑んだまま、腰の小さなナイフへ指を添えた。
勝てるなどとは思っていない。
相手が本気なら、抜く暇すらないだろう。
それでも兄の前で一歩も引くつもりはないらしい。
「ドラゴンスレイヤーは、強者にとって最大の名誉と聞きます」
「なにおおっ!?」
「兄を惑わす不審者なら、この場で名誉をいただきます」
「ふざけるな! 兄を守るのは、わたし!」
「その言葉、妹の前で言えるのかしら?」
「言えるわよ!」
「では、兄さまの朝食の好みは?」
「……肉?」
「不正解。朝は薄焼きパンと温いお茶です。寝起きに重いものを食べると、昼寝の質が落ちると本人が主張しています」
「そんな無駄知識で勝った気になるな!」
「兄を守るとは、無駄知識を蓄積することです」
「何それ怖い」
アルは二人を見て、嬉しそうに言った。
「おお~、なんか二人とも、すごく仲良くなってるなぁ!」
「どこがだバカぁぁぁ!」
ライネルがついに叫び、二人の間へ体をねじ込んだ。
「火花が見えている! 実際には見えていないが、精神的には見えている!」
「ライネル、表現が混乱してる」
「お前のせいだ!」
アルは何も気にせず、荷物から湯飲みを出した。
「はいはい、お茶どうぞ~」
「この状況で茶を淹れるな!」
「落ち着くよ」
「落ち着く必要がある状況を作ったのはお前だ!」
だが、湯気が立つと、不思議と空気が少し緩んだ。
リュシエルは湯飲みを受け取り、一口飲む。
「……落ち着く」
セリアも不承不承ながら受け取り、静かに口をつけた。
「事実、落ち着くわね」
ライネルは額を押さえた。
「茶に負けるな、二人とも」
セリアはそっとナイフから手を離した。
リュシエルも爪を引っ込める。
「兄の前でだけ、刃は収めます」
「じゃあ、爪も」
「ふん」
「ふん、ではありません。爪も」
「……分かったわよ」
アルは満足そうに頷いた。
「やっぱりお茶は偉大だね」
「お前はそのうち外交も茶で済ませようとするな」
ライネルが言った。
「できるかな?」
「考えるな」
◇
その日の午後、セリアは兄が関わった場所を順番に確認した。
最初は、牧場化した痩せ畑。
村の入口には《アル牧場》と書かれた看板が立っていた。
ヤギが鈴を鳴らして草を食べている。
草丈板。
搾乳記録。
チーズの保存棚。
畑そのものはまだ痩せている。
だが、村には冬を越すための手段が生まれていた。
セリアは手帳に書いた。
《観察三。畑の即時復旧を諦め、牧畜化によって時間を稼ぐ方式。土地を休ませながら食料を確保。兄、努力はしていないが、土地にも努力を強要していない》
次に、《宵の見張り》。
元盗賊のガロ、ミナ、チトたちが、街道の見回り記録をつけていた。
白石と黒石。
苦情欄。
護衛件数。
セリアは板の前で足を止めた。
「兄さま」
「うん?」
「元盗賊に記録をつけさせているの?」
「うん。チト、数字が上手いんだ」
「盗賊団を処罰せず、治安組織へ転用」
「言い方が硬いね」
「柔らかく言っても同じです」
セリアはチトの記録を見る。
字はまだ拙い。
だが、数字は合っている。
白石と黒石の理由も簡潔に書かれていた。
《白:荷車補助》
《黒:声が怖い》
セリアは少しだけ口元を緩めた。
《観察四。元盗賊の再役割化。無条件の赦免ではなく、条件付き監視労働。記録制度あり。危険性は残るが制御可能》
次に、井戸の村。
水帳は続いていた。
朝夕の水位。
用途別の桶数。
再利用水。
井戸番の名前。
セリアは板の前で長く黙った。
「……兄さま」
「何?」
「これは、かなり良いです」
「おお、褒められた」
「人を責めず、用途で水を見えるようにしている。揉めにくい。継続もしやすい。改善余地はありますが、悪くありません」
「セリアに悪くないって言われると、すごく褒められた気がする」
「最高評価ではありません」
「分かってるよ」
セリアは手帳に書く。
《観察五。水帳制度。人別ではなく用途別で記録。責任追及より流量把握を優先。兄にしては完成度が高い》
ライネルが横から覗き込んだ。
「兄にしては、とは」
「正確な評価です」
「否定はしない」
最後に、曲川遊水地。
セリアは杭、柳、旧河道、避難道を一通り確認した。
リュシエルが少し得意げに説明する。
「ここは、わたしが水の道を少し開けたのよ」
「少し?」
セリアが疑わしげに見る。
「本当に少しよ」
ライネルが補足した。
「今回は本当に少しでした」
「今回は?」
「井戸の時も一応、手加減はしていた」
「一応?」
「俺も怖かった」
セリアはリュシエルを見る。
「力の制御はできるのね」
「当然よ」
「では、ペットよりは番犬に近いのかしら」
「誰が犬よ!」
「番竜?」
「それなら……いや、違う!」
アルが笑った。
「リュシエルは相棒だよ」
その一言で、リュシエルの怒りがぴたりと止まった。
「……まあ、そうね」
セリアは、その変化を見逃さなかった。
《観察六。リュシエル、兄さまの“相棒”発言に極めて弱い。役割ではなく対等な存在として認められることを重視している模様》
少し考え、さらに書き足す。
《具体的な称賛も有効と思われる》
リュシエルが手帳を覗き込もうとした。
「今、何を書いたの」
「監査記録です」
「見せなさい」
「嫌です」
「燃やすわよ」
「兄さま」
「リュシエル、燃やさない」
「……分かったわよ」
セリアは静かに手帳を閉じた。
「便利ですね、兄さま」
「何が?」
「あなたの一言で、竜が止まる」
「リュシエルは優しいからね」
「……そういうところです」
◇
夜。
焚き火の明かりの中で、セリアは父への報告書を書いていた。
アルは少し離れたところで、いつものように眠りかけている。
リュシエルはその近くに座り、見張るように周囲へ黄金の瞳を向けていた。
ライネルは胃薬を飲み、ようやく人間らしい顔に戻っている。
セリアは羊皮紙に筆を走らせた。
《宛:父上》
《兄は依然として努力していません》
《しかし、なぜか人も竜もついてきます》
《各地で生まれている制度には、場当たり的に見えて一定の共通性があります》
《一、見えない問題を板や帳面にする》
《二、個人を責めず、役割や用途へ分ける》
《三、力で押さえず、流れを変える》
《四、疲れている者や土地へ、新しい役目を与える》
セリアはそこで一度筆を止めた。
焚き火の向こうで、アルがうとうとしながらリュシエルに何か言っている。
「今日のリュシエルは、セリアと喧嘩しなかったから偉いね」
「喧嘩はしてないわ。教育してただけ」
「妹を教育しないで」
「じゃあ、妹もわたしをペット扱いしないことね」
「セリアは悪気ないよ」
「あるわよ」
「少しあるかも」
「あるのね」
セリアはその会話を聞きながら、報告書の続きを書いた。
《評価:不能》
少し考える。
そして、その文字に一本線を引いた。
《評価:観察継続》
さらに一行。
《兄は危険です》
《ただし、危険の種類は、父上が想定していたものとは違います》
《剣で国を乱す危険ではなく、仕組みで常識を変えてしまう危険です》
セリアは筆を止めた。
正直に書けば、こうなる。
兄は怠け者だ。
だが、怠慢ではない。
努力はしない。
だが、人の努力が無駄になることを嫌う。
本人にその自覚がどこまであるかは怪しい。
そこが一番危ない。
セリアは最後に追記した。
《追記:ライネルへの胃薬は継続支給願います》
《追記二:リュシエルへの対応は、役割承認と具体的な称賛、ならびに茶が有効です》
《追記三:兄さまは相変わらず寝ています》
封をする直前、セリアは少しだけ迷った。
数字でもない。
制度でもない。
監査項目にも入っていないことだった。
それでも、書いておくべきだと思った。
《ですが、村人たちは笑っていました》
封蝋を押す。
黒い封が、焚き火の光を受けて鈍く光った。
◇
翌朝。
早馬で届いた報告書を読んだグラウヴァルトは、執務室で固まっていた。
「……評価、観察継続」
彼は低く呟く。
「兄は危険。ただし、剣で国を乱す危険ではなく、仕組みで常識を変えてしまう危険……」
グラウヴァルトは報告書を机に置いた。
そして、深く息を吐いた。
「どうなってんだ、あのバカ息子……」
怒鳴る声ではなかった。
困惑。
呆れ。
そして、わずかな誇り。
机上の地図には、白い糸が伸びている。
点だった村々が、細い線でつながり始めていた。
牧場。
見張り。
井戸。
遊水地。
どれも小さい。
だが、小さな変化が領内に新しい流れを作りつつある。
グラウヴァルトは、その白い糸を指先でなぞった。
一度だけ。
やさしく。
「……愚か者め」
前にも言った言葉だった。
だが、そこに込められた響きは、少しだけ違っていた。
◇
一方その頃。
セリアは兄たちと共に、次の道へ向かっていた。
ライネルは地図を広げ、今度こそ街へ向かう道を確認している。
「いいか。次こそ冒険者ギルドだ。寄り道はなしだ」
「はい」
アルは素直に頷いた。
その素直さが、一番怪しい。
セリアは兄を横目で見る。
「兄さま」
「何?」
「本当に寄り道しませんね?」
「もちろん」
リュシエルがふいに空を見上げた。
鼻先を風へ向け、黄金の瞳を細める。
「北の方に、役人の馬車と怒った人間の匂いがするわ」
ライネルの手の中で、地図がくしゃりと鳴った。
アルの目が光る。
セリアはそれを見た瞬間、手帳を開いた。
「観察開始」
「セリア様、止めてください!」
ライネルが叫ぶ。
セリアは冷静に答えた。
「止めるより、記録した方が早そうです」
「常識人が増えたと思ったのに!」
アルは北の道を見た。
「見るだけだよ」
ライネル。
セリア。
リュシエル。
三人が同時に言った。
「「「嘘」」」
風が吹く。
次に待っているのは、徴税人の馬車だった。




