―試験前日の教師たち―
「おい、こっちの模範解答よりもあっちの方がいいだろう。訂正しろ。」
「これが魔法学のテスト用紙、これが解答用紙。」
「各クラスの人数分の仕分け、完了しました。」
「おい、魔法学の最終問題変更するからおいとけって言っただろう。」
「すみませんでした。」
教員達が慌ただしく右へ左へと大騒ぎだった。
「ルーカス先生、一年生の古代語選択者用の問題作るの忘れていたんですが⋯⋯」
「はぁ?古代語のテストは明日だろう。どうするんだ?というかアロン先生はどうした。古代語の担当だろう。」
「今必死に問題文を書いているところです。」
「何問作る気だ?」
「1問のみで、ヴァルハイラの『彼方よりきたる者』を現代語訳させるようです。」
「音楽選択者に出せよ。というかあれ翻訳できたら学会に加盟できるぞ。」
「アロン先生、模範解答はどうするんですか?」
「⋯⋯どうしましょう?」
(お前が作った問題だろ。)教師一同がそう思った。
「まぁいい。白紙でない限りは何かしら加点しろ。それと、全学年のSSクラス以上の生徒の魔法学の最終問題は今年発表された全属性魔法陣から分かることを記述させろ。」
ルーカスは思考を放棄して次々に指示を出していった。そして、すべてのテストが完成し、領主会議で最終確認作業に回されていくのを見てホッと一息をついていた。
「はぁ、やっとテストが完成しましたね。」
「そうですねぇルーカス先生。」
「しかしアロン先生の減給処分、2年に伸ばしてもいいのでは?」
「勘弁してください。」
「貴方はしっかりしてください。」
テストづくりの重圧から解放され、雑談モードに入っていたが、まだやることは山積みである。
「おい、皆しっかり休憩はとったな?これから試験時の不正行為防止策を取りまとめるぞ。」
どんな世界のどんな時代にもあるカンニング問題。しかもカンニングといってもクセがすごい。例えば、先生は各クラス一人にしか監視官がつかないので、一人が具合が悪いふりをして犠牲となって監視官と共に教室を退室し、その間にクラスぐるみでカンニング大会を繰り広げたり、スキルを使用し、ズルを繰り返したりと、とにかく悪知恵だけは大人顔負けなのである。
「一番の問題は一人ひとりの固有能力であるスキルをどう封じるか、ですよね。」
「それなんですよ。集団カンニング大会よりもたちが悪い上、スキルによるカンニングは気づけないことが多いので⋯⋯」
「「「はぁ」」」
毎年繰り返しているお約束の悩みだった。しかも、解決策はほとんど実現不可能、いや、何人かの領主や、特定のスキル効果を持つものが犠牲になれば可能であるが、ほぼ不可能であることには変わりなかった。
―ガラガラガラッ
不意に扉が開いた。生徒たちの就寝チェックを終えた誰かが帰ってきたのだろうと思い、いつものようにねぎらった。ねぎらってしまった。
「就寝チェックお疲れ様。今日も問題なかった、か⋯⋯」
振り返るとそこには巡回終わりの教員ではなく、ここ、アグノーメン総合学院の学院長にして、アグノーメン領、領主のライゼクス・デルタフォース・アグノーメン本人が立っていた。
―ガタッ、ガタガタッ
「「「すみませんでしたっ」」」
「「「ご用件は何でしょうかっ」」」
教員たちは一斉に立ち上がり、謝罪と用件を誰ひとり遅れることなく聞いた。
「あ、あぁ、皆まずは楽にしてくれ。SSSクラスのテストで特例措置を設けることにしたからそれを伝えに来たんだ。」
「りょ、領主様直々にですか?」
「そうだ」
深夜に領主が訪ねてくるというあまりの恐怖にさらされながらもルーカス先生が勇気を出して聞いた。
「今年のSSSクラス生のテストの監視官を領主全員で担当することになった。」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯すみません、もう一度だけ、言ってくれませんか?」
「SSSクラス生の監視官を領主全員で担当することになった。」
―バダッ
ルーカス先生はあまりのことに驚きすぎて気絶した。
他の教員たちは力なくイスに崩れ落ちた。
そして、アロン先生だけは、カンニング対策について未だに考えていた。
「君、確か、アロン君だったよね?」
「は、はい」
「君はSSSクラスの担任なんだからもちろん学院の案内を請け負ってくれるね?」
「は、はい」
上の空で返事をしたアロン先生と、重要なことを任せたライゼクスは1ミリも噛み合っていないことに気づかないまま翌日の試験を迎えるのだった。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




