幕間―“元”大親友の大罪人達―
―魔王城にて。全領主に明日のアグノーメン総合学院のSSSクラス生の試験監視官を領主が務めると言う通達がなされた。これを聞いたガーゲルト領、領主のインヴィディアは領主会議の後、明日の分の書類を片付けてくると言い自身の領城に戻ってきた。
「私は明日に備えてもう寝る。わかっていると思うが部屋には誰も入れるなよ。」
インヴィディアは側近たちにそう命じ部屋に入ると転移魔法を使い、魔王城の中の一室を目指した。
(これは、そう、あいつの家族にした事のお詫びであって、決してこのことをあとから知ったあいつの反応が怖いから教えるんじゃない。うん。言い訳はお詫びで、嫌っている風の口調でお詫び、か。難しいな。でも絶対あいつは俺のことを嫌っているはずだし、うっかり親友なんて口に出したら物理的に消される。しっかりしろ、俺。ソラは臆病者であって、親友などではない。よし、臆病者の部屋に乗り込むか。)
こんなことを考えながらインヴィディアは目的の部屋の前にたどり着いた。
「入るぞ。」
ノックもなしに無断侵入したインヴィディアは厚く雲が立ち込める空を眺めながら静かに涙を流しているソラの奇行に帰りたくなるとともに一応心配した。
「おい、どうした。臆病者。ついに自殺したくなったのか?それとも変なものでも食べたか?」
「ノックをしてから人の部屋に入るという常識もわからないやつに言われたくないね。」
そう言いつつ振り返ったソラの目には涙など見当たらなかった。
「それで何の用?《嫉妬》の大罪人。」
「貴様のためにわざわざ教えに来てやったのにそうか聞きたくないんだな。貴様にとっては朗報なんだがな。」
「そんなに言うんなら聞いてやろうじゃないか。座りなよ。」
ひたすらにイヤミの応酬を繰り広げる二人の会話は全く進んでいなかった。
「あぁ、ありがたく座らせてもらうよ。しかし、貴様にも気遣いというものができたのだな。明日、領主全員がSSSクラスの試験監視官を務めることになった。そこでだ、貴様が駄々をこねる未来が見えたから⋯⋯」
「喧嘩なら買うよ?早く続きを言いなよ。」
「帰るぞ。」
「ここまで言っておいて帰るなんてね。やっぱり君のことが嫌いだよ。」
「そうか、せっかく貴様のために私の側近の席をあけて連れて行ってやろうと思ったのに、いかないんだな?」
「⋯⋯は?」
「それってつまり、メイのことを合法的に間近で見れるってことだよね?そうだよね?やっぱり辞めるなんて言うなよ?お前をマジで殺すからな。」
「黙れ、シスコン。何のために私がここまで来たと思う?からかうためだけにここに来るわけなかろう。」
「そんなに言うなら行ってやるよ。明日の朝5時に君の寝室に転移するから、女の子を連れ込まないようにね。」
「はぁ、私の想い人を知っていて言っているのか?」
「そうだよ、ロリコン。」
「黙れストーカー。明日の朝5時だな?待っている。」
そしてインヴィディアは帰っていた。残されたソラは誰もいないのを確認し床に崩れ落ちた。
「はぁ〜びっくりした。いきなり来んなよ。ボロでそうになっただろうが。にしてもあいつは僕を嫌っているんだよね?なんであんな提案をしたんだろう?お詫びかな?なら、感謝しないとな。絶対にあいつは親友なんて僕が言ったらキレるだろうけど。」
小声で悪態か何かをつきながら、ソラは思った。
(それでも、僕はまだ、親友でいたいんだよ。インヴィディア。)
心の中の独白は言葉になることはなく、ソラの心の底に飲み込まれていった。
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