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―スパルタ勉強会(進まない)―

すみません。7000文字あります。

すごい落差ですね

「よしお前ら、俺が言った物全部持ったな?本校舎の図書館行くぞ。」


「あ、はい」


歩き出そうとした四人だったが、ディルフェルトが踏み出しかけた足を戻した。


「あ、忘れてた。全員偽装魔法かけるぞ。」


「?」


「ぎそうまほう?」


「ディル、何もそこまでしなくてもいいんじゃないか。」


ガルシアが止めようとする。


「前に対策無しで本校舎入ったときは地獄だったからな。試験の時くらい視線は気にしたくない。それと、これに着替えてくれ。」


「あぁ、納得。」


「何だこれ。」


「Bクラスの制服。」


「なんで」


「目立たないようにするため」


「なるほど。ってなんでメガネつけてんだお前は。」


「ガルシア、わからないのか?俺とお前はこれでも領主家の子どもなんだぞ。目立たないに越したことはない。」


「なるほど。お前の徹底ぶりに納得した。」


ガルシア、本日二度目の納得。


「着替えました。」


「よし、それじゃあ勉強しに行こう。」


といって四人が入っていったのは研究室が集まる研究棟。


「なぁ、ディル。なんで研究等から行くんだ?遠回りだろ。」


「Bクラスの前を通って図書館に行けるからな。怪しまれないだろ。」


「それもそうか。」


ガルシア本日三度目の納得。


そして、図書館の受付で事は起きた。


「事前に予約していたのですが⋯」


そう言ってディルフェルトは予約証明書を見せた。


「はい。確かに。では、三階の一番隅の部屋をお使いください。」


「ありがとうございます。」


「ちょっと待て。」


振り返ると見るからに偉そうな貴族と取り巻きが合わせて三人いた。


「何でしょう?」


「何でしょう?じゃねぇよ。その部屋は俺達が使う。だからさっさと鍵を渡しな。落ちこぼれのBクラスの諸君。」


「申し訳ありませんが、もう予約していますので。」


「あ゙ぁ?貴様ら落ちこぼれごときがこのハイデール侯爵家嫡男のパトリッシュに逆らえると思っているのか?」


「⋯⋯」


「おい、どうすん、だ?」


ガルシアが見たのはメガネを直しつつ心底興味がないと言った顔のディルフェルトだった。


「貴方は昔から親の権力で威張り散らかしていましたよね。図書館では静かにするといった常識もわからないような人は侯爵などになるべきではないと思いますよ。」


ディルフェルトの挑発とも取れる忠告は静かな図書館によく響いた。


「⋯っ貴様ぁ!」


いよいよ耐えきれなくなったのかパトリッシュが殴りかかった。それと同時にディルフェルトがメガネを外し、偽装魔法を解除する。


「そうそう、いくら相手が落ちこぼれだからといって自分より爵位が上の家の人間の名誉を傷つけたり、殴ったりすれば次期当主の座を剥奪どころではないと思いますよ。パトリッシュ。」


「お前、ベクトールの落ちこぼれ⋯⋯」


「ん?今言いましたよね?次期当主の座を剥奪どころでは済まないと。聞こえませんでしたか?この声がよく通る空間なのに。」


「ベクトールの落ちこぼれなんて懐かしい二つ名ですね。でも、」


ディルフェルトはそこで首を傾げ、言った。


「廊下でコソコソと俺の悪評を吹聴する分には構いませんが、こんな風に大勢の人がいる前で、しかも大声で領主一族の悪口を堂々と言えばもう貴方は一生威張れませんね。実家の爵位は落とされるかもしれませんし。」


「しかし、お前はいつだって落ちこぼれで⋯⋯」


ディルフェルトは満面の笑みだった。気にしていませんよ。ということが読み取れる。


「一体、いつ、何処の話をしているんですか?俺が落ちこぼれなのはベクトール領の中だけであって、その上、もう何年も前の話ですよね?あぁ、自分で自分の首を絞めるのが大好きでしたもんね。昔から。」


「な、な、な、」


「俺が何も言わない。抵抗しないのをいいことに、殴りかかってきたり、罵倒したりの毎日でしたもんね?確か、初等科の頃、貴方が俺の側近候補だった時代のことですね?忘れたとは言わせませんよ。」


そういったディルフェルトはパトリッシュが殴ろうと出した拳を止めていた手に力を込めて自分の方に引き寄せ、耳元で囁いた。


「ちなみに、あのとき貴方を側近候補からはずしたのは俺自身です。さぞ驚いたことでしょう。抵抗もしない、ただ攻撃を避け、罵声を黙って浴びる主人がいきなり最高の職場から追放したんですから。せいぜい惨めさを味わってくださいね。」


そういうディルフェルトの目は心底どうでも良さそうだった。


「早く行こうか。勉強の時間がだいぶ削れたからな。」


さっきまでの恐ろしさは消えていた。残されたパトリッシュは司書につまみ出されていた。そして受付担当の教師は学院長に一連のことを報告しにいった。


「なぁ、ディル。お前、あいつをあのまま放置しても良かったのか?」


当然のようにガルシアは聞いた。


「別に処分は今じゃなくてもいい。最近は社交界に出ていないからと昔の噂を掘り返してる奴らもいるしね。俺が次に社交界に出るのは兄上の婚約発表の時だ。兄上にも許可は取っているから、そのときにああいう奴らを一掃する。我がベクトール家が治める領地にクズはいらないからな。それより、補習するぞ。補習。フォーティス、エリオット、改めて覚悟しておけ。」


そう言ってディルフェルトは個室の戸を開けた。しかしそこには先客がいた。


「お待ちしておりました。ディルフェルト様。」


「⋯⋯部屋間違えたんで失礼します。」


そっと逃げようとしていたが無駄だった。もう肩を掴まれたあとだった。


「離せ、オリヴァー。」


「ディルフェルト様。今唯一残っている貴方いわくまともな側近候補の勉強を見る約束はお忘れで?」


「あ〜そうだな。」


「忘れていたんですね?」


「ソンナコトナイデスヨ。」


「嘘ですね。顔でわかります。」


あろうことか唯一の側近との約束をすっぽかし、さっきまで領主一族として威厳は何処へやら、逆に側近に詰め寄られていた。


「あの、ディルフェルトさん。こちらの方は。」


救いを差し伸べたのはエリオットだった。


「あぁ、紹介するわ。彼は、オリヴァー・レイゼルク。レイゼルク子爵家の次男で今いる俺の唯一の側近だ。ちなみに二年生でSSクラス所属だ。それでオリヴァー、彼らは俺のクラスメイト。ガルシアのことは知ってると思うからとばすな。そんで、目つきがきついほうがエリオット。さっきから俺を睨んでいるのがフォーティスだ。仲良くしてやってくれ。」


「ご紹介に預かりました、オリヴァー・レイゼルクです。将来的にはディルフェルト様の護衛兼秘書を務めさせていただこうと考えています。それと、どうかディルフェルト様が屋根に登らないか見張っておいてほしいのですがお願いできますか?」


きれいな礼をとりつつ挨拶をするオリヴァーだったが最後の最後で自分の主の奇行をバラした。


「ディルフェルトさん、屋根に登って何してるんですか?」


至極真っ当な疑問がフォーティスから投げられた。


「俺も初めて聞いたわ。なんでなんだ?ディル」


完全に面白がってるガルシアだった。


「⋯⋯別にいいだろ何でも。」


「ディルフェルト様はスキルが発現した六歳の頃からジャンプで屋根に登るという奇行に走り出して、何度護衛が注意しても、どれだけ見張っていてもいつの間にか屋根に登っているんですよ。本人は大丈夫と言っていますが雨が降っても降りてこなかったときは護衛の皆さまが可哀想でした。」


「もういいだろオリヴァー。それに、SSSクラスの寮の屋根は吹き飛ばされる恐れがあるから乗ってない。それよりオリヴァー、どうせなら一緒に勉強をコイツラに教えるのを手伝ってくれないか?ひどい有様なんだ。」


「はぁ、いいでしょう。何日間の徹夜ですか?」


「3日だ。ガルシアはまぁいいらしいから、エリオットとフォーティスを早急に教育しないと不味い。」


「珍しいですねそんなに焦るなんて。とりあえず中は整えましたから話は中でしましょう。」


中に入ってとりあえず質疑応答を10分。オリヴァーはこめかみを押さえていた。


「SSSクラスはもちろん、最低クラスのCクラスに入れる知識もないですよ。これはディルフェルト様が焦るわけです。発展属性が答えられないなんて。はぁ、体がやたらと大きい初等科に入ったばかりの子どもですか?この二人は。」


「残念ながら違う。ただ単にアホだ。」


「アホ通り越してゴミクズですよこの二人。一体どうしたらこんなに知識が欠けるんですか?3日どころか一週間かけても試験に間に合うかどうかのレベルですよ。」


ディルフェルト主従にさんざんこけにされているエリオットとフォーティスは渡された初等科レベルの魔法学の本(ディルフェルト特製)の内容を必死に頭に叩き込んでた。横ではガルシアがオリジナルの対策問題を解いていた。


「ガルシア、分かんなくなったら言えよ。コイツラからの質問がない限り教えるから。」


「お、おう。」


ガルシアはスパルタ式に内容を覚えさせられている二人が持っている本の題名に突っ込みたくなりながら問題と向き合った。


(なんだよ『アホでも分かる魔法学〜これがわからないやつは人じゃない〜』って。ふざけすぎだろ。しかもちらっと見えた内容は幼児でも分かる内容だった。なのになんでフォーティスは1ページ目から躓いて、エリオットは流し読みしてんだよ。ちゃんと読めよエリオット。ディルフェルトは怒ると怖い。怒っていると悟れないから怖い。マジで個室で騒ぎを起こさないでくれ。頼むから。フォーティス、お前は今まで何を考えて魔法やスキル使ってたんだ。俺はお前が理解できないぞ。)


内心でツッコミまくってた。そしてついに決心したのかフォーティスが質問した。


「あの、この魔法陣ってなんですか?」


「⋯⋯」


―バキッ


ディルフェルトのペンが一本犠牲になった。


「ディルフェルト様、替えのペンはお持ちですか。」


「あぁ、カバンの中に入っている。」


オリヴァーが無言でディルフェルトのカバンからペンを取り出し差し出した。


「どうぞ。」


「ありがとう。」


「おれ、なんか変なこと聞いたのか?」


本気で理解していないフォーティスだった。


「なぁフォーティス。お前一応無詠唱で魔法使えたよな?どうやって魔法を発動させてたんだ?それとエリオット、魔法陣の説明をしてみろ。流し読みしてたんだから答えれるよな?」


「そもそもまほうじん?って言葉初めて聞きました。」


―バキィッ


本日二個目の犠牲のペン。


「初めて聞いたわけ無いだろ。少なくとも俺が知ってる中ではお前たちもいた中でメイが魔法陣の作成を目の前でやっていたと記憶しているんだが、違うか?」


「あぁ、領主会議に呼び出される原因になったあれですか。」


(そんな覚え方するなよ。)ディルフェルトは内心でペンを10本以上折っていた。


「エリオットは置いといて、フォーティス。お前は一体どうやって無詠唱で魔法を発動させている?」


「う〜ん。あ!なんか毎回模様みたいなの思い浮かぶけどそれが魔法陣か?」


「それだ。」


(模様みたいなの⋯⋯。魔法陣を漠然と認識しているだけマシ、なのでしょうか)


オリヴァーは不安でしかたなかった。


「エリオット、お前無詠唱で使える魔法あるか?」


「わからないです。」


「即答すんな。考えろ。もしくは描け。」


もはや吐き捨てるように指導が入った。


「あ!どの魔法機にも刻印されている模様ですか?」


「その模様は外に刻印されているものか?それとも中か?」


「外です。」


「後で商会や貴族の紋も覚えて区別しないとな。お前が見ているのは販売元の家紋だ。魔法陣じゃない。」


ディルフェルトもオリヴァーも絶望していた。元からちょっとやればすぐにできるようになる天才属性だったので。


「エリオット、流石に水魔法の一つくらいは無詠唱で行使できるな?」


「はい。この前の対抗戦の時の『人魚の巣窟』は詠唱無しでも使えます。」


「その時、頭に模様が思い浮かばないか?」


「浮かびますねぇ」


「それが魔法陣だ。」


「そうだったんですか。」


まるで興味がないといった態度のエリオットに早くもキレかけるオリヴァーだった。


(ディルフェルト様が噛み砕いて教えてあげているのになんですか?その関心の無さは。一度どん底を味わったほうがいいと思いますよ。むしろ味わわせてあげましょうか。)


まともかと思えばとんでもなく物騒だった。


「じゃあ二人とも魔法陣は認識できているみたいだから各属性の初級魔法の魔法陣を書き出すな。気をつけろよ魔力流すと発動するからな。」


「あの、ディルフェルトさんその前に一つ聞いてもいいですか?」


「何だ?フォーティス。」


「無詠唱なら魔法陣を思い浮かべるだけで発動できるのになんで皆詠唱するんだ?」


「はぁ、まず、詠唱して使う魔法は詠唱自体が魔力構造を変化させているから、魔法陣を思い浮かべる必要がないんだ。対して、無詠唱で魔法を使う場合、使いたい魔法の魔法陣の構造を思い出し、魔法陣が現実にそこに“ある”と仮定し、なおかつそれに魔力を流し込むというめんどくさい作業をしないといけないからなやりたいと思う人はあまりいない。それに、大半の人は魔法陣を実際に空中に“ある”ということを仮定、つまり想像できないから詠唱するんだ。これでわかったか?」


「なんとなく」


「大体は」


なんともあやふやな回答だった。


「まぁいい。次行くぞ、次。」


「ディルフェルト様、次は何を教えるのですか?」


「自分のスキルの属性系統の把握だ。まぁ、大抵無属性だが。」


「ぞくせいけいとう。」


「ここに来る前に言っていたあれか。何かは知らんが。」


「フォーティス。お前がつまずいていた1ページ目に乗っている内容だ。エリオット。言葉をただ単に復唱する機械になるな。わからなければ調べろ。そんなだからこの有様なんだよ。」


「ディルフェルト様。」


「なんだ。」


「3日では絶対に無理です。半月丸々費やしても無理です。」


「半月も費やしてられるか。この調子だと他の教科も怪しいやつあるだろうからそっちも込みでの半月だ。」


「ディル、諦めろ。半月も徹夜は死ぬから。」


「ガルシア、お前はしっかり勉強しろ。喋んな。」


八つ当たりが始まった。


「はぁ、まずスキルの属性系統っていうのはな、一人ひとりが持っているスキルが魔法で言えば何属性に当たるのか。だ。簡単に言えばな。俺のスキルは飛翔だろ?だけどそれは飛行魔法でも再現できる。」


「じゃあ、スキルいらなくね?」


「いや、いる。さっき魔法陣の話をしただろ。それにつながるんだ。お前らはスキルを使うときに詠唱なんてするか?」


「「しない」」


「だろ?スキルを使う最大の利点は無詠唱で魔法を使う場合の手間がすべて省かれることなんだ。だからスキルを使おうとすれば何も考えなくてもスキルが使える。そんで、お前らは他人のスキルを見て自分でも使ってみたいと思ったことはあるか?まぁなくてもいいが。他人のスキルを使ってみたいがスキルは一人ひとりの固有の力で同じスキルでもない限りそのスキルは使えない。そこでスキルの再現の手段として使われたのが魔法だ。魔法には属性があるだろ?だからスキルをある程度魔法の属性で分類して再現したんだ。」


「情報量が多い。」


「つまりわかったんだな?」


「は、はい」


「て、ことでお前らのスキルは何だ?まずはエリオットから答えてみろ。ついでに自分の属性系統もな。」


「スキルは〈遠透視〉で、属性系統は⋯⋯わかりません。」


「お前は多分無属性の分類だ。次、フォーティス。」


「えっと、スキルは〈強化〉で属性系統は⋯⋯無属性?」


「多分合ってる。ていうかお前ら各属性系統の特徴わかってるか?」


「なんとなくは」


「じゃあフォーティス説明してみろ。」


「はい。火属性は火に関する現象、水属性は水に関する現象、土属性は大地に関する現象、風属性は、空気や空間に関する現象に干渉、または発生させる。ことですか?」


「風属性が惜しい。空間に関する現象は厳密には無属性だ。でもまぁちゃんと答えられたな。エリオット、発展属性の説明を同じように答えてみろ。」


「⋯⋯水属性は水そのものを扱うけど氷属性は魔力を直接凍らせる魔法で、光属性は治癒、闇属性は暗い。俺が分かるのはこのくらいです。」


「⋯⋯氷属性は完璧、光属性はまぁ及第点。闇属性は不合格。なんだよ、暗いって、精神作用系って答えろよ。」


「精神作用ってことは幻覚魔法も闇属性?」


「あれは微妙だな。精神というより空間に作用させて見せているわけだから無属性に分類されんだよな。あれ初めて習ったときふざけんなってなったからよく覚えてる。」


(これで一日終わりましたよ。ディルフェルト様)


愚痴るディルフェルトにかけようとした言葉を飲み込むオリヴァーだった。


「ディル、良かったな初等科の範囲は一日で終わったぞ。」


それだけが唯一の救いであった。


「ガルシア様、違います。初等科の魔法学が終わったんです。」


地獄に突き落とされるエリオットとフォーティスであった。

感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。

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