―ダンスとは?―
いつの間にか4000文字。集中力よく続いたな。
選択科目を提出しさぁ皆で勉強をしようとなったときアナスタシアは言った。
「ダンス、やったことないです。」
「あ、俺も」
「⋯⋯俺も」
フォーティスとエリオットも続いた。
「⋯⋯あ、そっか、フォーティス達平民だったわ。」
ガルシア、お前はデリカシーというものを覚えたほうがいい。マリアが睨んでいるぞ。
「そ、そういえばダンスの試験ってパートナー自由に選べるんだったな。早めに言っておかないと先生と踊る羽目になるらしい。」
一段とかけられる圧が強くなっただけであった。
「ねぇガルシア。その言い方だと婚約者である私を差し置いて別の人と踊りますって聞こえるんだけど、気のせいかしら?」
「え?マリア以外と踊るつもりなんてないけど?」
さらっと口説くガルシアは命拾いした。そしてマリアはメイとムーアのそばに寄って顔が赤くなったことを隠していた。
「マリア?」
「あれ?マリア、さっきまで圧かけていた時の威勢はどこにいったのぉ」
純粋に心配するメイととことん弄り倒しに行くムーアであった。
「そ、そういうあなた達は誰と踊るのよっ。」
完全な照れ隠しであったがメイは気づいておらず、ムーアは割と真剣に考えだした。
「?」
「う〜ん。これと言って踊りたい人はいないかな。そもそも誰がいるのか知らないし。」
「確かに、本校舎の人たちと滅多に喋らないもんね私たち。そういえばリリア義姉様は去年誰と踊ったの?」
「私?ルーカス先生とだけど。」
「⋯⋯」
「ねぇマリア。」
「奇遇ねメイ。私も同じ事考えてたのよ。」
「ルーカス先生消しに行こうか。」
両者真顔であった。
「いや待ってメイたち。その前にメイのパートナー決めるのが先でしょう?」
「そうだね。」
「というかメイを他の男と踊らせたくない。」
「わかるわアリア。」
「そうよねリリア。」
「姉様、メイの意志を尊重するのも大事では?」
「そうねぇマリア。」
「メイは誰と踊りたいの。」
「う〜ん、初等科のときは泣きつかれたからオルフェのパートナーになったけど、今はいないし誰でもいいかな。」
オルフェの死罪が決定した瞬間だった。
「あらぁオルフェくんとぉ?そう、今度あったら身の程を教えてあげないとねぇ」
アリアからアルファルド顔負けの冷気が漂っていた。
「オルフェは今度あったら制裁するのは確定として、メイのパートナーを決めないと。」
「そうねぇ、本校舎の奴らは絶対に駄目。馬鹿と家柄しか見ないやつがほとんどだから。」
「リリア、どうして分かるの?」
「婚約者がいないからってすり寄ってくる男どもの相手を本校舎に行くたびに経験してるのよ。変に気をもたせることはしないほうがいいわ。」
「それもそうねぇ。だとするとこのSSSクラスの中ってことになるけど⋯⋯」
「候補は、ゴルシア先輩、ディルフェルトさん、フォーティス、エリオットの四人になりますよ。姉様。」
「面接をしましょう。」
「まずは家格を合わせないとね。」
「じゃあ、ゴルシア先輩とディルフェルト君の二人に絞れるわね。」
「実技試験と洒落込みましょう。」
「相手は誰がするの?」
「もちろんリリアよ。うまいほうがメイのパートナーになる。これでどう?」
どうも何も男性陣には拒否権など元から存在しないため、頷くしかなかった。
「それで、どっちから試験する?」
リリアが普段は見せない社交用の笑みで二人に聞いた。
「俺から行こう。」
その笑顔に誘われるようにゴルシアが立候補した。
「私と踊っていただけますか?クレシェラ嬢。」
こちらもしっかりと社交用の笑みを浮かべていたが。
「えぇ、喜んで。」
アリアがピアノの伴奏を始める。
二人が踊りだす。最初は歩調を合わせるように。そしてだんだん優雅に、そうあるのが自然とでも言うようにターンが繰り広げられる。
(流石、社交界で“狡猾なヘビ”と言われているだけあってうまいわね。こうやって踊っている間にも情報収集をしてたんでしょうねぇ。)
リリアは父親譲りの明るい茶髪で黒髪が多いクレシェラ家の中では色素が薄い方だった。ゴルシアは病弱ということもあって肌が白く、赤い髪の色が際立っているため、二人はとても対照的だった。
やがて曲が終了する。
「ありがとうございました。」
「えぇ、こちらこそ。」
最後まで社交用の笑みを崩さない二人だった。
「ゴルシアの評価はあとにして、ディルフェルト君いきましょうか。」
「はい。私と一緒に踊っていただけますか?クレシェラ嬢。」
「もちろんです。」
少し緊張しているようだったがダンスの誘いの定型文は自然だった。
今度は違う曲をアリアが弾く。
二人が動き出す。しかし先ほどとは違って、歩調を合わせることをしない。まるで最初からリリアの動きを読んでいたかのような完璧なリードだった。
(体が勝手に動いているみたいね。しかも驚くほど相手に合わせ慣れているような動き。アルファルドさんと違ってディルフェルトくんはほとんど社交界に出ていなかったから踊る機会もそうなかったはず。家で練習しているだけでこれほどうまいなら化物よ。しかも踊り始めてから緊張の色が消えて一切の感情が読めなくなった。笑顔なのに。ゴルシアでさえ微妙に表情が読めたのに。天才ね。)
いつの間にかダンスは終了していた。
「ありがとうございました。クレシェラ嬢。」
「こちらこそありがとう。ディルフェルト君。」
そしてリリアは面接官のアリアとマリアの下へ行った。
「どう見えた?」
「ディルフェルト君、異常ね。」
「姉様もそう思いました?」
「えぇ、笑顔なのに感情が読めない。でも、ダンスの相手としては申し分ないわ。」
「ゴルシア先輩はうまいけど、嫁に欲しいって言った前科があるからね。信用はできないわ。」
「残念だけど今回は採用を見送りましょう。」
「ということは、ディルフェルト君を採用ね。」
「ってことでメイのパートナーはディルフェルト君に決定ね。」
「「わかりました」」
本人の意思は一切反映されなかった。
「あのぉ、そもそも踊れない私たちを特訓するのが先の課題だったんじゃないでしょうか。」
アナスタシアの発言にはっとなる一同だった。
「ごめんね?あなた達もパートナーを決めてから練習しましょう?決して忘れていたわけじゃないからね?」
絶対忘れていただろう。と突っ込みたくなったエリオットだったが我慢した。
「私的には、アーシアとエリオット、フォーティスとムーアで組んだほうがいいと思うけど。」
今度はメイが勝手に決めていた。
「えっと、なんでですか?」
「だって、アーシアとエリオットってお互いよく話してたでしょ?ムーアは、なんか相性が良さそうだった。」
「つまり残り物同士仲良くやれってこと?」
「ムーアってそんな性格悪かった?」
「そんなことないわよ。フォーティスの動きは私が教えるわ。こう見えて男爵令嬢だものね。」
何故か拗ねるムーアだった。
「じゃあ、フォーティスさんよろしくね?」ニコッ
「お、おう。こちらこそよろしく。」
思いっきり照れていた。
「あ〜、アナスタシア、足踏んだらごめんって先に謝っとくわ。」
「うん、私も足踏み抜いたらごめんね?」
なにげに物騒だった。しかもこちらはどちらもダンス未経験。本人たちよりも周りが戦々恐々していた。
「フォーティス、そこは右足を出すの。」
「こうか?」
(いいにおいする)
「そうそう。」
いつの間にか練習を始めていたムーアとフォーティスだった。
「とりあえず、ムーアの方は大丈夫そうだからアーシアとエリオットを教える組に分けようか。」
まず、最初の体勢にも入ることができない有様にアリアが言い、アルファルドが深く頷いた。
「というわけで、アーシアは私とメイが、エリオット君はアルファルドとディル君が教えましょう。」
「私たちは?」
残されたマリアとガルシアが問う。
「二人で踊っときなさい。婚約者同士でしょ?」
マリアは全力でガルシアから顔をそらし、顔をそらされたガルシアは嫌われてると思いへこんだ。周りはおもちゃを見つけたような顔をしていた。メイとディル以外。
「まぁ、あのおも⋯⋯んんっ。マリアたちはほっといてアーシアのダンスの練習をしましょう。」
「そうですね。」
「ねぇ、リア姉。なんでマリアは顔が赤いの?風邪?」
「違うわよ。ちょっと待ってメイ!?今リア姉って言った?事件の後からそう呼んでくれなかったのに。」
「記憶だんだん戻ってきてるし、そう思ったらなんか呼び方に違和感感じたから昔の呼び方に変えた。」
感激のあまり気分が高揚しアーシアの手を強引に取り勝手に踊り始めるアリアだった。
「あ、アリア先輩は男性パートも踊れるんですね。」
「当然よ。練習とはいえ他の男とメイに踊ってほしくなかったからね。結局ファーストダンスはメイの兄のソラさんが持っていったけど。」
(基準とは?)
「それより、ちゃんと踊れてるじゃない。」
「アリア先輩のリードがうまいからです。」
たしかにうまい。そこらの男とは比べるまでもなくうまい。アルファルドたちはこのレベルまでエリオットを教育させなければならないことが決定した。
「まぁ多分エリオットはダンスの基本スペックは高いと思うぞ。多分。」
「多分。ですか。」
「絶対なんて言っても責任は取れないからな。」
「まぁ、大丈夫だと思うよ。あの超絶運動音痴の代名詞のオルフェくんがダンスできるくらいなんだから。」
通りすがりのムーアが言った。更に難易度が上がった。
「あのオルフェさんと比べられるのは癪ですね。」
謎に燃えるエリオットだった。
「ちなみにオルフェ君、今踊ってたゴルシアさん並に上手いよ。“お嬢といっしょに踊るんだ”って猛練習してたからね。」
更にハードルが上がった。
「そういえばディル、お前女性パート踊れたよな?」
「兄上、女性パートなら兄上も踊れますよね?」
何故かエリオットの練習相手を押し付け合う兄弟がいた。
「じゃあ、アルファルド先輩から教えてくれますか。」
指名依頼が入りました。
「⋯⋯容赦は期待するな。」
そう言ってエリオットの手を取り、最初の体勢を教えた。
「まずダンスというものは男性側のリードで決まる。ムーア嬢が男性であるフォーティスをリードできる方がおかしいということをしっかりと覚えておけ。」
「はい。」
「さらっと悪口言わないでくれますか?アルファルド先輩。」
「⋯⋯」
ムーアの訴えは無視された。
そして1時間後。アナスタシアは異常に上達し、エリオットは神経をずたぼろにされつつもなんとか目標は達成した。ダンスだけで終わる一日であった。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




