―定期試験が近づいた学院―
『血の対抗戦』事件の後一週間ほど休校となった。しかし、一週間もたてば、まだ泣いているのかと言われることもあるため皆、気を引き締めて登校した。しかし、再会早々生徒たちを待ち受けていたのは『定期試験のお知らせ』であった。
本校舎の生徒の場合。
「必須科目の試験は当たり前ですが、自分で選択した授業の勉強もしっかりやるように。順位は必須科目のみで張り出されますが、点数が悪いと当たり前ですが追試を行います。よろしいですね」
「わかりましたぁ〜」
「もうテストかぁ〜」
「早くね?」
「勉強漬けの日々が始まる。」
「それでは皆さん自習ですので各自しっかり勉強するように。」
「嫌ですぅ」
猛抗議が発生していたが毎年のことなのでスルーされた。
SSSクラスの場合。
「『定期試験のお知らせ』?」
「そんな事もあったわねぇ〜」
「リリア姉様、ちゃんと勉強したんですか。」
「してるわけないじゃないマリア。だって授業免除されているのよ?」
「だからってサボっていいわけないと思います。」
「お嬢!この歴史について教えてください。」
「いいけど、オルフェもウーナもこの学院の生徒じゃないよね?なんで戻ってないの?」
「「グッ」」
渋々帰ったそうです。
「そういえばメイ、貴女記憶戻ったの?」
「うん。事件に関する記憶以外は戻ってきてる。」
「そう。良かったわね。」
「なぁ、この選択授業ってなんだ。」
―ピシィ
空気が固まった。
「そういえば今年は選択するの忘れていたな。」
「兄上?」
「まぁ、適当に申請したらいいだろ。」
「ゴルシア先輩?」
「なるようになるわ」
「アリア先輩?」
「勝手に決められているかもねぇ〜」
「リリア先輩。それが一番怖いんですが。」
「ディルフェルト。順位の維持ができなければ身柄を女子たちに引き渡すぞ。」
「全力で勉強させてもらいます。」
「それよりも必修科目って何があるの?」
「⋯⋯」
「え?誰も知らない?」
その場にいた全員が教員棟まで全力ダッシュをした。
―ダダダダダダッ
「アロンせんせぇ〜必修科目教えて下さぁい」
「「「⋯⋯」」」
「アロン先生、まさかとは思いますが生徒たちに試験について何も教えてないってことはないですよね?」
「すみません。私も把握してないです。」
「この教師クビでいいんじゃないか?」
ディルフェルトの言葉に大いに頷く教師一同だった。
「はぁ、まず必修科目は、数学、物理、生物、歴史、魔法学、地理、国語、ダンスの八教科です。そして選択科目が古代語、魔法史、魔法生物学、剣術、戦術、音楽、美術、馬術、経営学、作法の十教科でこの中から二教科以上選んでテストを受けます。ただし、ダンスと馬術と剣術とあと、作法は実技テストとなります。ここまではいいですね?」
「はい」
「みなさんはまだ選択していないようなので今選んでこの紙に記入してください。それが終われば今回のテスト範囲の紙を配ります。」
「提出期限は明日。でいいですか?」
「えぇいいですよ。ディルフェルト君。」
「有難う御座います。」
「先生かけました。」
「早いですね、メイさん。え〜と、古代語と魔法史と剣術ですか。以外ですね。」
「父が《剣聖》だったのでそれほど意外でもないと思いますよ。」
「そうですね、こちらが試験範囲です。」
「2,3年の四人は去年と同じ科目でいいですか?」
「はい」
「いいですよ。」
「では、こちらを。他の一年生の皆さんは明日までに提出をお願いします。では私は試験問題の最終確認をしてきますので。」
「有難う御座います、ルーカス先生。」
「いいんですよ。後でアロン先生は減給処分にしますので気にしないでくださいね。」
振り返るともうSSSクラスの生徒達はもう自分たちの寮に戻っていた。
「それで、ディルフェルト。何を選択するんだ?」
「魔法史、剣術と音楽にしようと思ってます。兄上はなんの選択科目なんですか?」
「古代語、魔法史、美術だ。」
「アルファルドの画力潰滅的だよな。ディルフェルト。」
「⋯⋯個性的でいい絵だと思いますよ。ゴルシア先輩。」
「なぁ、ディル。いつも絵だけは評価が低いんだが何故だと思う?」
「わからないです」
(テーマが狼なのに動物かもわからないものを提出されたらそりゃあ評価は低いと思います。なんて絶対言えない。)
「へぇ、ディルは音楽か。なんの楽器が得意なんだ?」
「楽器ならだいたいなんでも弾けるぞ。一番得意なのはヴァイオリン。」
「弾いて見せてくれよ。」
「おい、フォーティス。マジで後悔するぞ。」
「なんで?」
「うますぎるから。」
「別に弾いてもいいぞ。学院入ってから一回も弾いてなかったしちょうどいいだろ。」
「あの、私もピアノ弾いてもいいですか?」
意外にも発言したのはアナスタシアだった。普段は自分から何かをしたいということを言わないので皆驚いていた。
「せっかくだし、合わせて弾いてみるか。アナスタシアは何の曲弾けるんだ?」
「えっと、ヴァルハイラの『彼方よりきたる者』が得意です。」
「へぇ、あの曲か。ちょっと難しいよな。」
「あれはちょっとどころじゃない難しさだと思うよ。ましてやヴァイオリンで弾く曲じゃない。腕が死ぬ。あれは。」
「ガルシアの弾き方が悪いんじゃね?」
「「「絶対にそんなことはないと思う」」」
殆どの人に真顔で返されて落ち込むディルフェルトであった。
「じゃあメイはフルートで弾いていい?」
「もっと信じれないです。」
エリオットのツッコミに首を傾げるメイ、ディル、アナスタシアだった。
「まぁいいや演奏しようぜ。」
「「そうですね」」
嬉々としてセッティングを始める三人だった。
そして曲が始まる。最初はフルートの伸びやかな音。それに被せるようにピアノとヴァイオリンが、どの楽器も主張しすぎず互いを高め合うように共存している。三人とも楽譜を見ずに弾いている。一切のミスもなく。むしろ他のSSSクラスの面々が楽譜を見て、三人と見比べていた。そしてアナスタシアは普段はおどおどしているのにこの時ばかりは満面の笑みだった。
「⋯⋯Αυτός που έρχεται από μακριά — κατεβαίνοντας από ξένη γη για να χαρίσει ευλογίες σε αυτό το βασίλειο και να επιδιώξει την κυριαρχία επί εκείνου.」
ディフェルトは低い声で歌い、アナスタシアはアルト、メイはソプラノで歌いきった。
しばらく誰も動けなかった。そして
「⋯⋯なんで歌まで歌えんだ?」
「古代語の勉強をした方がいいと思いますよ、ゴルシア先輩。」
聞いただけなのに年下にカウンターを食らってダメージを受けるゴルシアだったが皆が愉悦に満ちた笑みで見下ろしていた。
「古代語は勉強しているぞ。」
「俺より点数低いよな?」
「アルファルド、お前。」
「兄上。」
「ガルシアは味方だよな?俺の弟だもんな?」
「いえ、古代語の点数、家庭教師によると俺のほうがいいみたいです。ていうことで、しっかりと勉強してくださいね。兄上。」
哀れゴルシア。弟のガルシアにまで負けていた。
「社交界での二つ名返上したほうがいいんじゃない。」
リリアの言葉がとどめであった。
「おい、リリア。その口調どうにかならないのか?」
「あら?知っているでしょう?私が嫌いな相手には毒舌だってこと。」
「ねぇそれよりアナスタシアは選択科目どうするの?」
ゴルシア、メイからは完全スルーであった。
「えっと、古代語と音楽でいこうと思ってます。」
「古代語、わからないところあったら言ってね。できる限り教えるから。」
「ありがとうございます。それと私のことはアーシアと呼んでください。名前長いので。」
「わかったアーシア。これからもよろしくね。」
「はい」
「マリアは選択科目どうするの?」
「私は、古代語と魔法史だけにしようと思っているわ。ガルシアもそうよね?」
「え?」
「ね?」
「あ、あぁ。それに加えて、戦術もとろうと思ってる。」
「そう、古代語と魔法史、教えてね。」
完全に婚約者の圧に負けるガルシアだった。
「エ、エリオットとフォーティスは何を取るんだ?」
「ん?魔法史と作法にしようと思ってる。」
「俺は剣術と戦術かな。ガルシアの近衛騎士目指してるし。」
「フォーティスは頑張れよ。エリオット、なんで作法取ろうと思ったんだ?」
「一通りの作法、身に着けていれば就職に有利かなって思って。」
「確かに、収入のいい仕事は作法にうるさいからな。」
「うん。フォーティスも貴族とっせする機会は多くても貴族じゃないんだよね?」
「そうだな。俺の場合、堅苦しいことよりも動いてるほうが性に合うからな。だから近衛騎士目指してんだよ。」
「そっか。頑張れよ。」
マリアから逃れるために話を振ったのに結局無視されるガルシアであった。
定期試験まで後半月。
アホ教師は面接で落とすべきでした。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




