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―後始末―

 何も周りは1時間もディルフェルトを拝み続けていたわけではない。今日の対抗戦のために他領からきた選手たちの親、観客、その他大勢のこのイベントに関わった者たち。その人たちの殆どが大罪人によって殺された。わずかに生き残った人たちも廃人になったり、心をひどく病んでしまったりといった有様だった。本来ならこの人たちも笑顔でこの場をあとにしていたかもしれない。選手たちに手を振ったり見送りをしていたかもしれない。それを奪ったのは大罪人だ。原因を作ったのは他でもない領主達だ。だからせめて、領主自らが遺族たちにできることをしなければならない。


「この惨状は大罪人が悪い。それは当たり前だ。しかし、子どもたちのお披露目の場を奪い、あまつさえ警備を怠った我々の責任でもある。だからせめて、我々で追悼するべきだろう。」


重々しく告げたライゼクスの言葉に領主たちは深く頷いた。


「守れなかった。敵の侵入を許し、その敵に救われて私たちは生きている。本来なら真っ先に民のために命をなげうつはずの私たちが生きている。」


この事件のことを生涯忘れる者はいないだろう。それどころかずっと伝え続けるだろう。敵の恐ろしさはもちろん、味方(領主)の愚かささえも。領主たちはその評価を甘んじて受け入れる。激しい自責の念を背負いつつけてこれからも生きていくのだろう。そして民も、


―領主様だから、領主様がいる。


この存在に自分たちがどれだけ甘えていたのかを痛感させられた。そして、更地となった会場から、遺体を運び出し、並べていく。あるものは自身のスキルで大きな瓦礫をどかし、あるものは遺体に保護魔法をかけ遺体が崩れないようにする。もちろん、領主を恨むものだっていた。しかし、率先的に遺体を運び出し、並べ、悼む領主の姿を見た者たちは恨むという言葉さえ出てこなかった。


「なんで、なんでぇ、領主様ぁ」


「守ってやれなくて、本当に、申し訳ない。」


行き場のない悲しみを領主にぶつけるものもいた。しかし、その人一人ひとりのはなしを、思い出を語って、満足するまで語る領民たちの言葉に耳を傾け、その都度丁寧な謝罪をする領主たちにだんだん民のほうが申し訳なくなってきたのか


「領主様、この瓦礫、どかしてもらえませんか?」


「領主様、今確認できている被害者の名簿です。参考までにお使いください。」


自ら協力を仰ぐようになっていた。そしてその姿に感化された代表選手たちも救出作業に加わったり、話を聞いてあげたりしていた。


「なんか、何もできない俺達が恥ずかしいな。」


「手伝いに行こう」


「そうだな」


「俺はあっちに行く。」


「じゃあわあたしはこっちに。」


自然と領主と領民、選手と観客、貴族と平民。そういった区別はなくなり、皆が同じ死者を弔う仲間と認識していた。皆が、同じ悲しみにくれているのに権力なんかを振りかざすものは問答無用で追い出された。泣いているものがいればそれが平民であっても貴族が慰めに行った。そこは冷たくも温かい空間だった。


―後日。大々的に追悼式が行われた。貴族のきらびやかに飾られた葬式ではない。ただただ、その日にその事件で死んだ者たちを悼むだけの空間だった。それでも良かった。余計な言葉はいらない。最初に黙祷が捧げられたあとは遺族たちの歓談の場となった。


「私は夫をなくしたの。街の警備隊長だったの。」


「私も弟を亡くしたわ。優しくて、いつか領主様の側近になってみせるって意気込んでたわ。」


「そう、領主様も万能じゃないのね。わかっていたつもりだったけど⋯」


「本当はわかっていなかった。甘えすぎたのよ。領主様たちの優しさに。」


「甘えすぎね。私たちはいつまでも親に守られる雛鳥じゃないもの。自分の身は自分で守れるようにならなくちゃね」


「そうね、もう一回学び直しましょう。領主様たちにお願いしにいかない?」


「いいわね。今度はちゃんと自分のためじゃなくて、自分の大事な者たちのために学び直したいわ。」


ガルシアはフォーティスの側にいた。


「いい親父と母様だった。」


「あぁ、いつも俺の武器を誂えてくれた。」


「親父は俺に何も作らせてくれなかったのに、最後に親父と母様にお揃いで送ったブレスレットだけは受け取ってくれたんだ。なぁガルシア、俺最後に親孝行できてたか?ちゃんと親父に誇ってもらえるような息子だったと思うか?」


「⋯⋯わからねぇ。でも、親孝行だけはしっかりできていただろうよ。」


「それなら、いいなぁ。」


追悼式では少しづつ笑い声が増えていった。最後まで泣いているものもいた。でもそれでいい。前を向けるものがいて、引っ張ってくれる存在があるのなら今はそれで充分だ。

ちょっとシリアス?になったと思います。

感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。

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