―その後―
いきなり空中でメイが倒れた。あまりにも突然のことで誰も反応できなかった。ちょうど目を覚まし、落ちてくるメイの真下にいたディルフェルト以外は。
「んぁ。はぁっ?え?何?なんなんだ?え?」
(あんなスピードで落ちてきたら受け止めるどころかグシャってなるぞ。そんでなんで誰も動かないんだ?石像かよ。そもそもなんで空中で気絶して同じく気絶した俺の上に落ちてくるんだよ。寝起きドッキリかよ。ふざけんな)
とまぁ、脳内でこれでもかと言うほど突っ込みつつ、風で落ちる勢いを軽減してからちゃんと受け止めるあたり仕事はできる男だった。
しかし、受け止めた瞬間方々から殺気が飛んできた。主にクレシェラ領に関係する人たちからの。特にオルフェからの。とにかく寝起き0.5秒で覚醒し、身内の危機を救ってあげたのに哀れな話であった。
「俺助けた側だよな?」
若干泣きそうだったのは仕方のないことだろう。
「ディルフェルト・セリア・ベクトールさん。」
「はい」
(なぜフルネーム?)
「今すぐお嬢から手を離してください。さもなくば⋯⋯」
「「「「「処刑です」」」」」
クレシェラ女子軍団に真顔で宣言され、半泣きで空間収納から取り出した新品のクッションを瓦礫の上に敷き詰めそっとその上にメイを横たえて両手を挙げてゆっくりと後ろに下がった。そしてメイが目を覚ます。
「はっ、兄上っ」
そのまま起き上がったメイは両手を上げていたディルフェルトの腕をがっしりと掴んだ。そして一斉にアイリス、アリア、リリア、マリア、ウーナ以外の人間(大罪人、領主含む)に合掌されていた。
「兄上?父上?」
頼みの綱の家族は無情にもディルフェルトを見捨てた。いわく、アルファルドは婚約者が、フォレストはアイリスが怖かったそうである。更地になった会場で、腕に女の子がしがみついている男の子を憐れみの含んだ目で地上と空中から拝まれている光景はただただホラーだった。
「兄上じゃない。さっき猛烈な勢いで走っていった人は何処なの。ディル。」
「俺今目ぇ覚めたとこなんだけど。」
「でもなんかディルって兄上に似てるよね。」
「俺、メイの兄君見たことないからわかんねぇ。それより、離れてくれないか?マジで視線に射殺される。」
「色味変えたらそっくりの気が⋯⋯」
残念ながらメイはたった今思い出した兄とディルフェルトの何処が似ているかを考えるのに没頭してディルフェルトの懇願は全く聞き入れられていなかった。そして1時間後、ようやくメイの拘束から逃れたディルフェルトは今度はアイリスたちに引きずられていった。本人の顔は虚無であり、相変わらず周りは合掌を続けていたが。
「ねぇ、フォレスト。ディルフェルト君って強いわね。領地で3時間ほどメイとの学院生活についてと注意事項を伝える時間が欲しいのだけれどいいかしら?」
「さすがに勘弁してくれ。ディルフェルトがある日雪の中で寝てましたって報告が来そうで怖いからやめてくれ。」
「仕方ないですね。」
哀れディルフェルト。この先も災難は続く。
善良な人ほど苦労するこの世界。
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