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幕間―《■■》の大罪人―

 彼は与えられた自室の中で思案する。開け放たれた窓の外には荒廃した土地と決して晴れることのない曇天が広がっていた。


「彼らはうまくやっているのだろうか。どうでもいいけど、僕の大切なものに傷をつけたらどうなるかはわかっているはずだし、心配のしすぎかな?」


そう言ってまた彼は熟考する。自身の大切な人物についてを。


「あの子は優しいからなぁ。きっと自分に関係ない人が死んでも悲しむだろうなぁ。よし、魔王様に直談判しに行こう。」


そう言って彼は立ち上がり自身を従える者のもとへ急いだ。


だだっ広い城の中には人の影すらない。ただただ殺風景な飾り気のない廊下が続いているだけだ。しかし彼は迷わず壁に向かって歩く。そしてその体がぶつかるかという瞬間景色は一変した。先程までの飾り気のなさは何処へやら、暗い部屋によく似合う調度品がきちんと揃えられた部屋が現れた。


「ん?なんや《怠惰》はんやありまへんか。どないしはったんや?」


「いやちょっとね。魔王様は何処にいるかなと思って。」


「魔王様に?なに企んではるんや?」


一気に眼光が鋭くなった《強欲》の大罪人は油断なく目の前の人物を見つめた。


「何って、君の作戦だとあの子が悲しむと思って作戦の介入許可をもらいにいこうと思ったんだよ。何か文句でもあるのかい?」


「ふぅん?ワイの作戦が気に入らんと?詳しく聞かせてもろてもええか?」


「何故?僕は君じゃなくて魔王様に用があるんだ。どいてもらえないかい?」


「どくわけないやろ。魔王様は今部屋でゆっくりされてはんねん。貴様ごときが邪魔できると思ってんのか?」


「もちろん。だって僕の母親だよ?子どもをないがしろにする親がいるのかい?」


一触即発の空気となり空間が二人から漏れ出る魔力で歪む。そんな中、ピリピリした空気を引き裂くように魔王が出てきた。


「はぁ、こんなところで喧嘩しないで。《怠惰》、話を聞いてあげるからこっちに来なさい。アヴィーダはそのまま監視を続けてちょうだい。」


「「はい」」


双方渋々といった態度を隠さずに答えた。


「それで?何をお願いしに来たのかしら?」


魔王は椅子に座り紅茶を優雅に飲みながら《怠惰》の話を聞いた。


「作戦の介入許可をください。」


「なぜ?貴方が関わらなくても成功するでしょう。」


「あの子が傷つく。それに僕が介入しないとあの子は永遠に記憶が戻らないと思うよ。それでもいいのかい?魔王様。」


なんとも身勝手でその上、脅迫まがいの発言をする《怠惰》に眉をひそめる魔王だった。


「まぁ、脅迫なんて。親に対しての接し方の教育を間違えたのかしら。」


「教育はちゃんと受けましたよ。ただ、」


そこで《怠惰》はこの世で最も気に入らない者を見る目で続けた。


「貴方のどこが親だというのです。外面は親であっても、内面はもう僕の知る親じゃない。だからこんな脅迫ができるんですよ。できればあなたのことは今すぐ殺したいのですが。」


「あら、貴方が脅迫するならこっちも脅迫するわよ。貴方の親の体を無傷で返す代わりに全面的に協力しなさい。ってね。どう?魔王っぽいでしょう。」


そう言った魔王はお気に入りの玩具で遊ぶかのように言った。


「まぁ、今回は好きに介入しても構わないわ。貴方に本気で敵対されると負けてしまうかもしれないもの。」


「冗談だろ。今のままでもお前は僕に余裕で勝てる。それでも行かせるのはなにか裏があるんだろう?」


「さぁ?あまり疑いすぎるのは良くないわよ。言ったでしょう“今回は”って。次からは気分次第ねぇ〜早く行きなさい。貴方の大事な大事なあの子が壊れる前に。」


「言われなくても行きますよ。“今回は”好きにしてもいいという言質はとったので。」


そう言って《怠惰》の大罪人は転移していった。転移魔法は領主一族またはそれに近しい血筋の者だけに伝えられる魔法だ。


「全くいくら《怠惰》の称号を与えても大人しくはならないのねぇ。あんなもの(転移魔法)なんて使ったら即身バレしちゃうのにぃ。」


そう言いつつも自らの腹心である《強欲》の大罪人を呼び寄せる。


「お呼びでしょうか?」


「わかってるのに聞くのねぇ。」


「まぁ、間違っているといけないですから。」


「いつもの喋り方でいなさい。気持ち悪いわ。」


「ほなそうさせてもらうわ。しっかし《怠惰》はん、あのままでええんですか?ちょいと甘やかしすぎちゃいますの?」


「いいのよぉ。これは前座。遊びの範疇なの。復讐相手のつくった世界へちょっかいかけているだけなんだもの。こんな遊びで破滅するくらいならむしろ邪魔でしかないわ。」


「ねぇアヴィー、何百年も仕えてくれてありがとう。これからもよろしくね。」


「もちろんや。あの世界がニセモンでこの荒廃した世界こそが本物やってことを思い知らせましょうや。姫巫女(ジェリーツァ)


そこには何百年も続いてきた余人には立ち入ることのできない強固な絆で結ばれた主従のみが残された。

感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。

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