―《憤怒》《暴食》の大罪人―
メイたちが《色欲》の大罪人であるレッソンと相対している頃、ライゼクスなどの各領地を担う領主たちはその場に残った《憤怒》と《暴食》の大罪人と相対していた。
「おい、賊共。これほどの惨劇を引き起こした理由を聞こうか。」
ライゼクスが極めて穏やかな口調でしかし怒りをにじみこませて聞いた。
「え?惨劇の理由?魔王様がやれって言ったから以上。」
それに対し煽りに煽る《憤怒》の大罪人―ラビア・テンペラ。自らが切れ症なだけあって人を煽るのにも長けていた。
「それじゃあ何して遊ぶ?」
「かくれんぼだ。」
完全に殺戮を遊びと称し領主たちにさっきを浴びせつつラビアが問うとインヴィディアが間髪入れずに答えた。
「へぇ〜面白そうじゃん。俺達が鬼やるから。でもただのかくれんぼじゃつまらないから隠れ鬼ね。鬼は交代しない。捕まったら死亡。ちなみにそこの傀儡たちも鬼だから。」それじゃあ一分数えるから頑張って逃げてね。始めっ。」
「い〜ち、に〜い、さぁ〜ん、し〜い」
領主たちは一斉に逃げていく。固まって同じ方向へ。かくれんぼでは悪手だ。しかしインヴィディアは〈認識阻害〉のスキルを持っているのだ。むしろ固まっていたほうがいいのだ。
「アイリス、貴女のスキルって確か念話も可能になるのよね。」
「えぇ、ルアーラ。早速かけましょうか。」
「頼む。」
「アルファルドたちは大丈夫だろうか。」
「フォレスト、大丈夫だろう。ゼルア先輩やヴィンセント、学院教師もひとりついている。」
「だが心配なんだろう。」
「それはそうだろう。ライゼクス。貴様も来年入学の子どもがいるだろう。」
「あぁ、それまでは絶対に死なん。」
「全員生き残るぞ。このゲーム。」
「あぁ」
「えぇ、もちろん」
「それじゃあ〈認識阻害〉かけるぞ。」
「ありがとう。インヴィディア殿。」
「例には及ばん。ダルクリト殿。」
そうしている間も瓦礫の間を音もなく駆け抜けゼルアたちとの合流を急ぐ一同だった。
「よんじゅうきゅ〜う、ごじゅう」
「きゅ〜う、は〜ち、な〜な、ろ〜く、ご〜お」
「よ〜ん、さ〜ん、に〜い、い〜ち、ぜ〜ろ。」
「じゃあいこうか。ゴーラ。さっきの奴らは全員食べていいから。」
「本当か。さっさと行こうじゃないか。どうして動かない。」
「さっきかくれんぼって言ったの《嫉妬》だよ。これは楽しいかくれんぼになると思ったから、もうちょっとだけ待ってるんだよ。じゃないと怒りで我を忘れて暴走しそうだからね。」
「そういうことか。《嫉妬》が向こう側に付いてるってことは裏切られたのか?」
「違うよ。あいつ、ああ見えて領主だからさ、味方のふりしてんの。本来はこっち側だから。」
「そうか。もういいんじゃないか。いい加減待ちくたびれた。」
「いいよ先行っといて。」
「おう、見つけて食っとくわ。」
「⋯⋯ほんとに馬鹿と話してるとイライラするなぁ〜いっそあいつも死ねばいいのに。」
インヴィディアが本心から領主サイドに付きたいと思っているのを知らずにラビアは考える。いざとなったら裏切ってもらおうと。それが一番確実だから。ゴーラは脳筋だ。馬鹿だから一緒に任務をやるのも苦痛になる。しかしなぜか任務には一緒に行かされる。ラビアは苦痛だった。魔王の命には逆らえないためこうして時々任務中に一人になることが度々あった。しかし命には忠実だ。だからこうして気配を探っているのだ。
「みぃ〜つけたぁ〜」
そうしてラビアは駆け出した。
先に走っていたゴーラはというと、なかなか見つからなくて手近な瓦礫などを破壊しながらライゼクスたちを探していた。
「チィなんでいねぇんだよ。なんでいつもいつも食事に邪魔が入るんだぁ?こっちはお腹が空いてるってのに。早く出てこいよぉ〜」
延々と同じところをぐるぐるしているから見つからないという子どもでも分かることに気づいていなかった。
「なぁ、ゴーラ。お前、ずっと同じところ回っているの気づいてないのか?」
さっさと終わらせようと領主たちの気配を追跡していたラビアは信じられないという風に天を仰いだ。
「あ゙ぁ?そんなわけねぇだろ。追いかけても追いかけても見つからねぇんだよ。」
「気配がすると思って来たらこれかよ。〈認識阻害〉って思ったより厄介なんだな。クソ野郎。もう少し難易度下げろよ。任務達成できねぇだろうが。」
そんな風に同僚に悪態をつきつつ傀儡たちを使い、周辺の様子を探っていくラビアだったが見つかったのは子どもたちを相手取るレッソンだけだった。
「まぁ、子どもたちを相手にしてたら嫌でも領主どもは出てくるしかなくなるやろう。おいゴーラ、レッソンと合流するぞ。」
「子どもも食べていいんだろぉなぁ」
「だめなやつは言うから食ってこい。行くぞ」
こうして戦場は一つになった。
性格破綻者の集団。
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