―インヴィディアvsライゼクス―
「え〜次で最後の領主様同士の決闘です。ガーゲルト領主―インヴィディア様対アグノーメン領主―ライゼクス様のご入場で〜す。」
―うおぉぉぉぉ
さっきまでの恐怖はどこへやら、再び熱狂に包まれる会場だった。
―キャァァァ、インヴィディア様よ
―ホントだわぁ〜史上最年少で領主に就任された方だわ
―まだ結婚どころか婚約者もいないらしいわ
―まさか貴女、狙ってるの?
―そんなことないわよ
―でもかっこいいわよねぇ
―感想はそれに尽きるわ
訂正。熱気と言うよりインヴィディアをうっとりと見つめる女性たちの声だった。嫉妬にまみれた声も黄色い歓声にかき消されていった。対するライゼクスにはむさ苦しいおっさんたちの嫉妬にまみれたヤケクソの声援が送られていた。
―あの若造をぶっ飛ばせぇ
―そうだそうだ
―顔面に一発お見舞いさせろぉ
「⋯⋯」
(私はいつ開始の合図をすればいいんだ?)
(《嫉妬》の大罪人に私よりよっぽどふさわしい奴らがいるが、これほんとに私が大罪人なんだよな?俺が嫉妬する側であって決して嫉妬される側ではないはずなのだが?)
冷静さがどこかへ行き、心のなかでさえ一人称が崩れていくインヴィディアは胃薬をがぶ飲みしているアロンを徹底的に恨んだ。
「どうにでもなればいいんだぁ、始めぇ!」
ヤケクソの合図とともにインヴィディアの姿が消えた。正確には認識できなくなった。
自身のスキル〈認識阻害〉でライゼクスの視界から消えたインヴィディアはライゼクスを攻撃するでもなくポケットの胃薬を探していた。
「あぁ、あった。良かった。これで心置きなく決闘できる。」
(消えたのに攻撃してこない?なぜだ。何か目的があるはずだ。それにしてもインヴィディアは人気者だなぁ、おっさんにも声援もらってるぞ)
―シュバッ
「クソっ」
「⋯⋯」
いきなり姿の見えないインヴィディアから斬りかかられ、間一髪で避けたライゼクスは冷や汗を流していた。
(足音も気配も何も感じなかった。姿が見えないとはこうも厄介なのか。いっそなにか仕掛けてみるか)
―シュッ
―ピキッ
―キィィィン
「チっ」
「フッ」
辺り一帯凍らせて一を炙り出そうとするも物理的に砕かれあまつさえドヤ顔が見えそうな最上級の煽りを受けたライゼクスは自身のスキル〈規則〉を使用した
「〈規則〉スキル使用禁止」
途端にインヴィディアの姿が見えるようになった。
「どうした?これで終わりか?まさか姿が見えたから降参か?」
「そんなわけ無いだろう、あの臆病者のほうがよっぽどヤバかった。戦闘系スキルでもないのに勘だけでこっちの居場所見破ってくるんだからよ。それに比べたらお前のほうが何倍もマシだ。」
両者油断なく剣を構えてお互いの隙を伺っていた。
そして同時に踏み込んだ。そこからは単純な技巧の勝負だった。
―ライゼクスが斬りかかる。
―避ける
―インヴィディアが突く
―弾く
―斬る
―流す
―突く
―避ける
気づけば誰もがその剣戟に見入っていた。声を発さずにただひたすらにその剣を目で追い続けていた。
「お前の本気はそんなものか?インヴィディア」
「お望み通りに強くしていきますね」
途端に均衡状態だった剣戟がだんだんインヴィディアに有利になっていっていた。
―斬る
―突く
―弾く
―斬る
―躱す
―頬にかする
―手にかする
―足に浅く突き刺さる
もはや誰が見てもインヴィディアが優勢だった。しかしライゼクスも粘る。
「クリエイト・ゴーレム」
一斉にゴーレムが生み出され、そちらの対処もしなければならなくなったインヴィディア。しかし
「邪魔だ。」
一閃。
―ガラガラガラ
一瞬にして崩れ落ちた。そしてその勢いのまま
―キィィィン
ライゼクスの剣を飛ばし、その首筋に剣を当てた。
一瞬誰もが息をすることを忘れた。
「あっ、勝者―インヴィディア・コートス・ガーゲルト様」
終わった。圧倒的な技量の勝負で、会場を壊すこともゼルアを怒らせることもなく。何事もなく。そう、何事もなく。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




