第四十一話―ジェーレンvsフォレスト―
領地対抗戦。それは各領地の未来を担うであろう子どもたちの見せ場であって決して領主たちが大はしゃぎで決闘をする場ではない。はずなのだが⋯⋯
「おいジェーレン、お前の得意の氷は何処いった」
「おいフォレスト、お前の炎が見当たらねぇぞ。どこだ?」
現在闘技場の真ん中で少年のようにはしゃぎまくって決闘しているのは紛れもなくベクトール領主とファルミア領主本人である。ただ、先程の試合との違いは見てて面白い痴話喧嘩から、むさ苦しいおっさんたちの大乱闘である。
当然観客はドン引き―ではなく当たり前のように賭けを始めるのであった。一方父親たちの大乱闘を見せられているアルファルド、ディルフェルト、ゴルシア、ガルシアはというと、
「「はぁ」」
アルファルドとゴルシアは呆れ返り、
「「何やってるんですか父上」」
ディルフェルト、ガルシアは穴があったら入りたい心境であった。父親たちは威厳を見せて親として尊敬されようという魂胆であったのだが、まるっきり逆の効果が現れていた。それどころか本気で時期領主の座をディルフェルトに譲ろうかとも考えているアルファルドの心境を知らないことは幸せなことだったのかもしれない。
しかしそんなこととはつゆ知らず、息子たちの親に対する尊敬値は上がりまくっているだろうと更に燃え上がるジェーレンとフォレストであった。そしてしれっと観客席に移動していた大罪人三人組はポップコーン片手に全員の戦闘が終わるのを楽しみにしながら大爆笑(一人だけ)していた。
「あっハハハ。あいつら自爆しに行ってる自覚あるのか?絶対ないだろ。私がいつも切れているのが馬鹿らしくなってくるほどには面白いぞ。」
「おい、まだ食べ放題出来ないのか?いい加減に腹が減ったぞ。」
「退屈ね」
これ以上ない娯楽に浸る《憤怒》の大罪人といつも以上に不機嫌な様子でポップコーンをありえない速さで消費し続ける《暴食》の大罪人、そして冷めた目で眠そうに自分の出番を待つ《色欲》の大罪人であった。
外野はさておき二人の大乱闘に目を向ける。凍って、燃えて、凍って、燃えて⋯一般人の目にはそんなふうにしか見えないが、データを嬉々としてとっているハルウェラ領、領主―ヴィンセントの目には氷の彫刻をジェーレンが作り出して煽り、フォレストはその煽りにファイヤーボールを変形させ、炎のバラで繊細な彫刻を消し去り煽り返す、そんな遊びを繰り返しているのがはっきりと見えていた。
「いやぁ〜参考になるねぇ〜皆の戦闘方法アイリスとの決闘に使わせてもらうね。」
(戦闘と呼べるのか?これは)
インヴィディアはヴィンセントの言葉に疑問を抱いたが気にしたら負けだと思い、胃薬の窃盗をしているアロンに伝言を頼みにいくのだった。
「おい、アロン。お前は何をしている。」
「見ての通り胃薬盗んでいます。貴方こそ何をしているのですか、インヴィディア様。」
「控室にいる生徒たちに伝言を頼む。“何者かの襲撃に大人に変わって警戒しろ”と。それと、私にも胃薬をくれ。死にそうだ。」
「任せてください。あと、ここの胃薬品質いいですね。」
「当然だ。私が用意したのだから。」
「では伝えてきます。」
そしてアロン先生が控室に到着したタイミングで、マウント合戦の決着がついた。凄まじい爆風のせいで観客席の天井が吹き飛び、ついで、圧倒的な冷気が辺り一帯を覆い尽くした。ジェーレンが勝利したのである。
「あぁ、皆さん。正常な領主様方より伝言です。何者かの襲撃に大人に変わって警戒しろ。だそうです。では。」
もはや気にしたら負けの境地を通り過ぎて無我の境地で伝言し、去っていくアロンだった。
「なぁ、余計なとばっちりこっちが受けてるんだしさ、お小遣い増額してもらうべきじゃね?」
昔から優しさだけは定評のあったディルフェルトがその伝言についにブチギレていた。
「そうだね、じゃあ皆で協力して不審者を血祭りにあげようよ。」
「いやほんとにいつものメイか?お前。」
「そうだよ。」
「血祭りは良くない。せめて締め上げるくらいにしような?」
一方その頃、おそらく計画が知られれば間違いなく血祭りに挙げられるであろう大罪人3人組は暴れる寸前だった。
「おい、寒いじゃねぇか。」
「おい、まだ食事はお預けなのか?」
「だまりなさい。もとより全員の戦闘力がある程度削れてから突入する予定だったでしょう。それなのに今暴れるのは違うでしょう。」
「しかし⋯」
「もう一度言うわ、だまりなさい。」
「「チッ」」
未然に暴動は仲間により防がれていた。
こうして二戦目は終わり、休憩時間となった。
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