―対抗戦開幕・ルアーラvsフレッグ―
「おい、ルアーラ。そんな攻撃ばかりしてないでもっとデカい攻撃手段はないのか?ないならこっちからいくぞ。」
「はっ、あんたごときが私を攻撃できるもんならしてみなさいよ。ペットたちの攻撃を避けながらね。」
領主二名による爆音と爆風が吹き荒れる中、メイたちは思った。なぜ大の大人が大喧嘩をしているのだろう、と。そして自分の番を律儀に今か今かと待っている自分たちの領主をげんなりした目で見つめていた。
―時は少し遡る。選手たちは控室にてお互いの領地の選手を確認し合っていた。
―バタバタバタバタ、バァン
突然の足音と共に扉が吹っ飛び選手たちは何事かと身構えたがそこにいたのは胃痛持ち、
SSSクラスの担任でおなじみアロン先生だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、ちょっと、はぁ、待って、ください、ね、今、息整えて、はぁ、はぁ、いるので。」
今にも床に倒れ込みそうな教師を見た生徒たちは
(対抗戦の間、審判やら、巡回警備やらを開催校の教師が務めるって聞いていたが大丈夫なのか?)
始まる前から疲れ切っているであろう教師を見て不安になる一同だった。そしてアロン先生は
(おでこに包帯巻いているのが二人も?それになんか涙目で隅に縮こまっている子がいるが、対抗戦前にこの様子で大丈夫なのか?)
「はぁ、ようやく息ができる。えっと何を伝えに来たんだっけ。」
「アロン先生、胃薬を箱ごと盗むなら医療テントにいったほうがいいですよ。」
何を伝えるか忘れた教師と、とりあえず盗みを進めるディルフェルトという奇妙な絵面が完成した。
「問題しかない発言だが胃薬の情報提供は感謝する。切れかかっていたんだ。あぁそれと皆さん落ち着いて聞いてください。」
一旦言葉を切り、そっと胃のあたりを押さえながら続けた。
「なぜか領主全員の総当たり戦を、あなた達の対抗戦をする前にやることになりました。」「⋯⋯?」
突然の爆弾発言に固まる生徒たち。
「「「は?」」」
「では私はこれで。胃薬を盗んできます。」
疑問を了承の意と受け取ったのかそそくさと退散しようとするアロンだったがそうはいかなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよアロン先生。いくらなんでも説明が足りないです。えっとさっきの話聞き間違いじゃなければ父上たちが朝から喧嘩します。って聞こえたんですけど。冗談ですよね?」
「問題しかない発言ですが、まぁ、そのとおりですね。それでは。」
ディルフェルトがまたもや問題発言をしたが早く胃薬が欲しいアロンはほぼ上の空だった。
「アロン先生、それって誰が言い出したことなんですか。」
そして今度こそ立ち去ろうとしたのに今度はマリアに道を塞がれたアロン先生であった。
「最初に決闘をしようと言い出したのはエクトリア領主とダルクリト領主です。」
「「「あぁ」」」
何故か納得されていたルアーラとフレッグの決闘であった。
「それを領主全員にしようと提案したのがベクトール領主とファルミア領主です。」
「「何やってるんですか父上。」」
普段は絶対止める側にいる自分たちの父親の奇行に、ディルフェルトとガルシアの動きがきれいにシンクロした。
「それではってメイさんとクレシェラ領の皆さん。一つ言い忘れていました。」
こんな騒動が起きても熟睡しているメイと膝枕をしてあげているアリアたちに向かって告げた。
「アイリス様から伝言です。“私がせっかくお手本を見せるのだから、優勝できなければ全員お小遣い減額ね”だそうです。それではっ」
矢の如き速さで医療テントに走っていくアロンを見つめながらアリアたちは必死でメイを起こそうとしていた。
「メイ起きて、ねぇ起きてったら。」
「アリア姉さま、少し離れていてください。」
マリアがいつぞやの魔王さながらの笑みで宣言した。
「メイ、今すぐ起きないと氷水の刑とお母様に頼んでお小遣い減額してもらうわよ。」
―バダン
「起きました、起きましたからお小遣いの減額だけはやめてください。魔法薬の研究できなくなります。」
「起きたのは偉いけどお母様から伝言。優勝できなきゃ全員お小遣い減額だって。」
「全員叩き潰せばいいんだよね。」
寝起き数分でヤバい思考に走ったメイであった。
―そして時は戻り、現在。
相変わらず口喧嘩をしながら攻撃をしているルアーラとフレッグの姿が何故か空中にあった。二人とも飛行魔法を使っている訳では無い。ルアーラは自身のスキル〈調教〉で手懐けたワイバーンの背に乗っており、フレッグはワイバーンが巻き起こす風にうまく乗っているのだ。
「ルアーラ様、ワイバーン調教してるよ。普通考えられないだろ。」
「まぁ領主様だしな。」
領主様だしな。それだけでありえないこともさらりと流されるこの世界。いつ突入しようかとその激戦を見ていた大罪人三名は狂ってるなと思っていた。ちなみに観客は賭けを始めていた。
そのため、一番マトモな感性でこの試合を見ているのが大罪人だけというなんとも皮肉な構図ができあがっていた。なお、空中では
「お互いの最高奥義で決着をつけないか。」「いいわよ。私も早く終わらせたいと思っていたところだし。」
負けかけて焦りだしたフレッグと余裕綽々といった様子のルアーラが佇んでいた。
「獄炎―赤竜の舞」
「水獄」
フレッグが放った炎とルアーラの水流がぶつかり合い水蒸気爆発を起こす。そして、最後まで立っていたのはルアーラだった。髪が乱れてもその嗜虐的な笑みでフレッグを見下ろすさまはさながら魔王と呼ぶにふさわしい佇まいだった。
「しょ、勝者―ルアーラ・ヴェント・エクトリア様。」
―うおぉぉぉぉ。
会場が熱狂に包まれた。
歓喜と賭けに負けた悲しみの。
「結界が、結界がたったの十分で壊れた。一ヶ月の苦労は一体⋯?」
「おい、領主たち自爆しにいったぞ。本当にあれが領主なんだよな?影武者とか言わないだろうな?」
決着はついたが心の整理がつかない者たちが現れたのは言うまでもない。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




