―対抗戦当日(領主会議)―
煽り耐性をつけましょう
対抗戦当日。領主たちは会場の警備体制についての最終確認をしていた。
「では観客の誘導員などは今までと変わらず。ということでいいな。」
「ええいいわ。」
「もう少し増やすべきではないか?」
「あら、フレッグ。心配性ね。いつからそんな気配りができるようになったのかしら?」「あ゙ぁ私は昔から紳士的だったぞ。」
「私のことを物陰から見つめつつストーカー行為をしていたのに紳士的?貴方の頭の中一体どうなってるの。」
ほとんど、というか全く噛み合っていない
エクトリア領、領主―ルアーラ・ヴェント・エクトリアと
ダルクリト領、領主―フレッグ・バステュミュ・ダルクリトの口喧嘩に突っ込む者も、止める者はいない。いつものことだからだ。
だがこのあと止めなかった者たちは後悔することになる。
「そんなに昔のことを掘り返すな。」
「あら、じゃあ認めるのね。ストーカー行為のこと。」
「認めるわけ無いだろうやっていないのだから。」
「はぁ、いつまでも白を切るのね。」
「いいだろう、今日こそ積年の決着をつけようじゃないか。」
「えぇ、もちろんいいわよ。ライゼクス、貴方の長い演説の時間を削って決闘してもいいわよね?」
「あぁ、好きに⋯いや絶対だめだ。許可せんぞ。」
うっかり流されかけたライゼクス。しかしギリギリで防衛本能が機能した。だが断固拒否する姿勢のライゼクスに追い打ちがかかった。普段は滅多に発言しないはずの
ベクトール領主―ジェーレンと
ファルミア領主―フォレストである。
「まぁいいのではないか。最近やたらと親を舐めまくっているどこかの子どもたちに威厳を見せつける格好の場だ。」
「そうだぞ。またとない機会だ。」
「そうねぇ、メイたちにも良い教育になるんじゃないのかしら。」
なぜかアイリスまで賛同し始めた。過半数の領主が賛同しているため断ろうにも断ることができないライゼクスが最後に頼ったのはインヴィディアだった。
「インヴィディア、お前からもなにか言ってやってくれないか。」
インヴィディアはなにか考えていたようだが、口を開いた。
「今日の主役は生徒たちのはずですよね?いい年した大人たちが子どもたちの活躍の機会を奪うのもどうかと思いますが。」
(自爆しにいかないでくれ。何のために俺が結界の強化を担当したと思っている。大罪人を入れないためだぞ。それなのにこいつらは⋯)
どこかの教師兼大罪人と同じように胃を痛めているインヴィディアだった。彼は襲撃を成功させたいのではない。むしろ失敗してほしいから結界の強化を担当したのだ。しかしそんなこととはつゆ知らず、他の領主たちは自ら結界を破壊しにいっているためインヴィディアの胃が痛くなるのは必然だった。
「インヴィディア、怖いのか?かつて神童と並んで天才と言われていただろう。まさか衰えたのか?」
「まさか。そんなわけ無いだろう。あと、あいつの話はするな。机を粉砕するところだったじゃないか。」
残念ながらインヴィディアも煽り文句に乗せられてしまい、ライゼクスは泣く泣く参加を表明した。
「お前ら、後で覚えておけ。全員まとめて叩き潰してやるからな。」
ブレーキ役だったはずの会場責任者・ライゼクスまでが、最後は一番凶暴な顔でヤケクソの参戦を表明。
ハルウェラ領、領主―ヴィンセント・クレシェラ・ハルウェラは
「データとして最適ですね。負けようとも全員の手の内暴いて教科書に載せます。」
と眼鏡をキラーンと光らせ、アイリスも
「ふふ、メイたちにも良い教育になるわね。私が手本を見せたのに優勝できなかったらお小遣い、減らさないとね。楽しみだわ。」
と優雅に微笑んでいた。平和を願う大罪人の涙ぐましい防衛線は、身内の圧倒的な暴走によって粉々に消し飛んだのである。
かくして『血の対抗戦』と呼ばれる日の朝は領主たちの総当たり戦から幕を上げた。
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