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-後天的スキル-

文量が何故か2倍で会議シーンが続きますが読んでくださると幸いです。

 メイたちが退室し、ルアーラが戻ってきてしばらくした後、最初に口を開いたのはアイリスだった。


「メイのスキル発現を口頭で伝えなかったのは今回のように、政治利用されるのが分かりきっていたからよ。」


そこでうつむいていていた視線を上げ、静かにインヴィディアやダルクリトを見据える。その目にはもう動揺はなく、代わりに揺るぎない意志が垣間見えた。


「インヴィディア・ガーゲルト。あなたはメイをアグノーメン総合学院に入れたいので合っているわね?それなら私も賛成よ。」


告げられた言葉に一番冷静だったのは、アイリスの親戚でもあるハルウェラ領、領主―ヴィンセント・クレシェラ・ハルウェラだった。


「しかしアイリスや、後天的スキルについて説明してくれんとなんの意見も言えんぞ」


45歳の割には老けているヴィンセントの常識的な言葉にその場の誰もが頷いた。アイリスは一瞬逡巡したが意を決して語りだした。

「⋯⋯後天的スキルとは本来はスキル発現が6歳なのに対しその1,2年後、もしくはそれ以上時間が経ってから発現するスキルのことよ。そして大概の後天的スキル保有者は魔王直下の幹部“大罪人”によって殺されているわ。メイが発現したスキルは『万物』。確実に狙われるから口頭報告をしなかったのよ。ちなみにメイはあの“炎星事件”の日もしくはその後に発現させたわ。」


「⋯⋯スキル効果は」


アグノーメン領、領主ライゼクス・デルタフォース・アグノーメンが思案顔で問う。


「万物を生み出し、または消し去る能力。でも生物の創造は不可能。一度使用するごとに魔力量を強制的に半減させる。時間がたてば魔力量は戻るみたいだけど確実に使用回数が増えるほど寿命を削るでしょうね。」


アイリスは半ば投げやりに答えた。ダルクリトは口を開いては閉じてを繰り返し、ルアーラは完全に笑みを消す。ベクトールとファルミアに至っては無表情が崩れ、目を見開いていた。―沈黙。数秒おいてベクトールが、


「⋯⋯数々の歴史において世界を崩壊に導きかけたあのスキルなのか。」


半ば呆然とつぶやいたのはきっとあまりにもスキルが強力だったせいだろう。そして口頭報告をしなかったアイリスを責めるような視線が集まる。インヴィディアさえもスキル効果については知らなかったのかすぐには言葉が出ないようだった。なぜなら『万物』は魔王が必ず狙いそのたびに保有者が魔王に利用されるくらいならと自殺していくことで有名だからだ。


「一度使えば二分の一、二度使えば四分の一、そんなふうに急激に魔力を消費するんだもの。連続使用は魔力欠乏症による死を招くわ。」


そこで少し眉を下げ、


「あの子はまだ15歳なのよ。政治利用させるくらいなら、マリアたちも通うアグノーメン総合学院でのびのびと過ごさせる方が良いに決まってるわ。」


領主たちでさえ口を開くのもためらわれるどんよりとした空気を破ったのは、ライゼクスだった。


「歴史は繰り返す。そう言われるが、逆に今代で魔王を打ち取ることができれば、そうすればもう犠牲が生み出されることもない。」


一拍おき


「私は、我がアグノーメン領が誇るアグノーメン総合学院に入学させるのが妥当だと思うのだが、皆はどうだ。」


最初に意見したのはダルクリトだった。


「危険だ。魔王が狙うのなら、魔王に気づかれる前に我々で殺してしまう方が合理的です。過去の『万物』保有者に巻き込まれたものはほとんどが死亡しているではないですか。このままでは無辜の民が、大勢犠牲になってしまいます。」


アイリスが完全に怒りをあらわにし口を開く前に、異常な量の魔力が食事会の会場を満たす。魔力の主―インヴィディアは心底軽蔑した目で


「民が犠牲になる?何を言っているのやら。さっきまで利用する気満々だったのに魔王が狙っていると知った瞬間殺せ、か。我が身可愛さに保身に走っているのが丸わかりだ。ここにいるのが温厚な人で良かったな。すぐに実力行使に出るようなやつがいたら真っ先に死んでいただろうな。貴様はもう、領主の座を降りて引退したらどうだ?そうすれば少なくとも私は貴様に煩わされることはないからな。」


漏れ出る魔力に危険を感じた使用人たちが臨戦態勢を取った。インヴィディアは漏れ出る魔力はそのままに目だけが笑ってない笑みを浮かべる。


「まあ、あの妹のことしか考えていない臆病者のソラとかは聞いた瞬間領主とか関係無く殴ってただろうな。」


そして魔力を収めながらライゼクスに向かい


「俺もアグノーメン総合学院で賛成です。」


やがて、使用人たちは臨戦態勢を解き、重苦しい空気は薄れていった。間髪を入れずベクトール領、領主―フォレスト・ファルミア・ベクトールが発言する。


「私も賛成する。ただし、ガーゲルト殿がアルデンティ嬢のスキルに『認識阻害』をかけるならの話だ。ガーゲルト殿ならスキル自体を認識できなくするのもお手の物だろう。」


これにファルミア領、領主―ジェーレン・ヴィンテル・ファルミアが目を閉じながら、即座に答える。


「ベクトール殿に賛成だ。まだ15歳の才能を失うよりも、才能を育て、魔王に対抗できるようにすれば良いではないか。」


会話の進行を見守っていたライゼクスが


「そのとおりだ。ダルクリト。今後才能を軽々しく失うようなことに繋がる発言はせぬよう肝に銘じるのだ。」


まだどこか納得のいかない顔でダルクリトが返事をする。


「⋯⋯申し訳ございません。」


ここでルアーラが


「諦めの悪いこと。どうせなにか起きたら殺すことになるんでしょうに。」


ここでちらっとインヴィディアの様子を伺い


「まあ、なにか起きる前に発言力を高めておくことね。ついでにアグノーメン総合学院に預けるのは賛成よ。だって何百年ぶりかの秀才たちが集まってるんですもの。そうそう事件なんて起きないでしょう。」


決定打だった。


「半数以上がアグノーメン総合学院に入学させるのに賛成である。よって、メイ・クレシェラ・アルデンティのアグノーメン総合学院への入学を認める。」


しかし領主たちはまだ知らない。今年の生徒たちがいかに規格外で事件しかもたらさないことを。

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