-異端-
まだ会議が続きますが、会議はあと2話で終わらせますのでお付き合い下さい。
「では一つ。なぜアルデンティ嬢のスキルを開示しないのですか?彼女はすでにスキルを発現させているはずですが。」
その言葉にアイリスの表情が一瞬だけ崩れる。一呼吸おき、
「書類開示はしましたよ。五年前の緊急領主会議のときに。見ていない人が悪いのではなくて?それに、後天的スキルの発言は経過観察が必要でしょう?」
普段通りおっとりとはしているものの、その目には焦りが見えた。おそらくこの場でそれを見抜いたのは三人だけだろう。そのうち一人はメイだった。
(どうしてお義母様は私のスキルなんかでこんなにも動揺しているんだろう。)
自己評価を客観的に行うメイだが、自身のスキルの価値についてはいまいち理解していないようだった。
「それで、何が望みなのです?」状況を把握しきれていないメイをよそにアイリスは強力すぎるスキルをできる限り利用されないようにするのに必死だった。
「望み?簡単ですよ。ただ、親友の妹に最高の教育を施してほしいだけです。」
こう言うとインヴィディアは場違いなほどの穏やかな笑みを浮かべた。その言葉に今まで平静を保っていたアイリスの顔が驚愕に染まる。それに続き、数名の領主が眉をひそめる。なぜならこのインヴィディアという男は、五年前に消えた自身のライバルであるメイの兄―ソラをとてつもなく嫌っていることで有名だからだ。誰も口を開かない―否。開けないのだ。皆がインヴィディアの真意を探るかのように互いに視線を送り合っている。そんな中ノックの音が響き渡る。
コンコンコン、ガチャ―返事を待たず開かれたドアの向こう側にいたのはゼルアだった。そして丁寧にお辞儀をしながら
「突然の非礼、深くお詫び申し上げます。ですが、話が聞こえてしまったもので、少しだけ発言の許可をくださいますか?。」
突然の乱入に彼女の上司であるアイリスは咎めるような視線を向ける。しかしアイリスと違ってあまりにも流れるような所作に気圧されたのかアグノーメン領、領主が
「許す」
と許可をだした。ゼルアは感謝するように一礼し、メイのことを慈しむような目で見つめ、静かに語りだした。
「ではお話しいたします。メイ様の 後天的スキルの発現についてを。ご存じの方も多いかと存じますが、記憶喪失になられているメイ様のためにも最初からお話いたします。五年前の"炎星事件"の数週間前、メイ様の兄君であるソラ様が失踪されています。そしてその数週間後にアルデンティ家襲撃事件"炎星事件"でメイ様のご両親が亡くなられています。おそらくですがこの事件の時にメイ様はスキルを発現されたのかと存じます。」
ゼルアが語り終えたのか沈黙する。ここで今まで身じろぎ一つしなかったメイは今朝の夢の光景を思い出していた。
「―炎と、星。」
何も喋らず空気と一体化していたベクトールの領主とファルミア領の領主がわずかに目を見開く。インヴィディアだけがその黒い目をわずかに細め、領主たちがぎりぎり気づくような嫌悪感をにじませながらどこか懐かしげにメイに喋りかける。
「僕はそのソラと同級生だったんだ。」
一度言葉を切りメイを通して誰かを見ながら、
「君にも、よく会っていたんだよ。」
と言い、メイの反応を窺うも
「・・・・・・コテン?」
としていて何も情報を得ることができなかった。そこに、
「領主様方、昼食の用意ができましたが、いかがなされますか?」
と、ルアーラの側近が休憩を促しに来た。
「また午後からにしましょう。少し疲れたわ。」
と、言いながらルアーラが足早に退室していった。




