―訓練⑤―
訓練しろよお前らというツッコミは私が一番したいです。
翌日ようやく訓練場の使用権をもぎ取ったガルシア達ファルミア領チームは各自のポジション確認を始めた。
「まず地面にへばりついてるクソ兄貴に聞くが、今年も競技内容は『旗取り』でいいんだよな?」
「ああ、多分そうだろ。俺は今回防御側に回ることにしたから攻撃はお前らに任せたぞ。」
自業自得とはいえ迷惑を被ったガルシアとフォーティスは無表情にゴルシアを見下ろした。
「なぁ、ガルシア。今回俺も防御に回っていいか?援護はするからさ。なんか心配にしかならないし。」
絶対に小馬鹿にしているとしか思えないフォーティスの最後の発言はスルーされた。
「そうなると俺が旗取ってくるのか。簡単だな。でもクソ兄貴、アルファルド先輩は全力で相手してくださいね。厳しいので。」
「わかったが、さっき俺を馬鹿にしたやつがいなかったか。」
「そんな人いませんよ。ところで弓の練習したいんですけど、どこかに手頃な的いませんか。動かない的相手じゃ上達しないので。」
ゴルシアは最後まで無視され、挙句の果てにはガルシアの的となった。
「おい、ガルシア。後で覚えておけ。お前だけは絶対許さん。」
社交界では狡猾なヘビと言われるゴルシアだが、とても狡猾には見えないという点でSSSクラスの生徒達の意見は一致していた。それはさておき、警戒すべき領地を聞かれたゴルシアは、
「まず例年通りベクトール領、クレシェラ領が挙げられるな。あとはガーゲルト領だな。」「なぜですか。あまり強い領地ではないですよね。」
ガーゲルト領は魔法剣の産地としては有名だがあまり強くないということでも有名な領地だった。なのでガルシアやフォーティスの疑問はもっともだった。
「普段ならあまり強い領地じゃねぇ。でも、今年就任したばかりのあの領主―インヴィディア様がアグノーメン総合学院に一人の生徒を推薦した。実際、領主会議にも連れてこられたらしい。貴族ですらないのにだ。どういうことか分かるな。」
「まさか、アナスタシアさんが?」
驚きを隠せないといった様子でガルシアが問う。アナスタシア本人は気が弱くエリオット以外とあまり喋らないからだ。
「そうだ。領主会議でもずっとオロオロしていたらしいが父上によるとインヴィディア様がゴリ押ししたらしい。そこまで言うならとアグノーメン領主様は許可されたらしいが反対多数だったそうだ。」
「なぜそこまでしてアナスタシアさんをここに入れたかったのでしょう。」
「わからん。ただ、一度だけガーゲルト領が二年連続で準優勝した年があるが、そのすべてがインヴィディア様が出場されていた。今回もそのアナスタシアを警戒するべきだろう。絶対になにか企んでるぞ。あの領主。」
断言するゴルシアは背筋に薄ら寒さを覚えていた。インヴィディア・コートス・ガーゲルトのその真意を測りえない行動に。そして訓練はガルシアが弓の練習をしただけで終わった。
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