―訓練④―
口調がおかしいかもしれません
訓練場の天井が吹き飛んだ翌日。穴が開こうとお構いなしのベクトール領代表―アルファルドとディルフェルトは朝の三時に訓練場で訓練を始めた。
「兄上、こんな早い時間から職員棟まで行って鍵貰いに行かなくても良かったんじゃないですか。アロン先生が可哀想でしたよ。」
流石に死相が出ていた教師を不憫に思い事後注意するもアルファルドは聞いていない。それよりも準備運動とばかりに真剣をディルフェルトに投げてよこした。当たり前のように受け取ったディルは呆れつつも久しぶりに兄と本気の剣戟戦ができることに喜びを隠せていない。
「今回俺が魔法を全面的に使うのでいいんですよね?兄上の得意属性封じられているので。」
「それで構わない。今回剣戟戦をやるのは俺だからな。付き合わせるな。」
そしてディルは本職の結界師顔負けの結界を展開しつつ兄の準備運動(剣激戦)に付き合った。
―キィィィン。ガンッ、カンッ、サッ。
しばらくは代わり映えのしない剣が当たる音だけが聞こえる。実力は拮抗しているように見えたが少しずつディルフェルトが押し始める。そして、
―カァァァン、トサッ
ついにアルファルドの剣が弾き飛ばされた。しかしアルファルドは満足げだった。
「前よりも剣戟時間が伸びたな。お前の腕が落ちたのではなく、俺の腕が上がったんだな。」
「そうですね。毎朝三時起きで鍛錬しているのに腕が落ちているわけないので兄上の腕が上がったのでしょう。」
いつもの調子で答えるディルフェルト。しかしアルファルドは
「⋯⋯変わったな。昔はあんなに――だったのに。」
つぶやいた言葉は起床の鐘にかき消されて聞こえなかった。
「兄上、なにか言いましたか?」
「いや、何も」
「そうですか、じゃあ次は俺の魔法技術の確認してくださいよ。
ディルフェルトは屈託なく笑う。いつからかアルファルドにしか見せなくなった心からの笑み。それを見て心を痛めるアルファルドだったが、
「そうだな。俺の代わりに頑張ってくれないとだから、容赦はしない。覚悟しておけ。」「はい!兄上」
何も感じさせない、いつもの冷たい表情でディルを思いやる。腹違いといえど昔から孤立していたディルをよく気遣っていたのだ。幼いディルから笑顔を奪った人物を必ず断罪すると、密かに誓いながら。
なぜならディルは、彼にとってたった一人、『本当の家族』と思える存在なのだから。
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