―訓練③―
ようやく訓練開始
「それで訓練場誰が使うんだ?」
ようやく朝食効果で黙った一同に問いかけたのはディルフェルトだった。
「私は魔力回復薬の研究したいな〜」
「メイ様、被検体にはオルフェをお使いください。魔力量だけは世界一なので。」
「僕、対抗戦じゃあ魔法使えないので回復薬の出番ないと思いますよ。」
訓練場のことは無視された。
「どんまい。俺等が使ってやるよ。」
ガルシアが慰め代わりに訓練場をしれっと使おうとすると、
「ガルシア?今日一日訓練場はクレシェラ領が押さえているわ。残念ながら。」
マリアといい、色んな人のストレスのはけ口にされるガルシアであった。
所変わって訓練場。今度こそちゃんと訓練をしようと実験室に立てこもる寸前のメイとオルフェを回収し、ようやく作戦会議が始まった。
「それで、今回の指揮官は誰にする?去年は私とリリアだけだったから指揮官はいらなかったけど、今回は七人だし、いたほうがいいでしょう?」
さすがはアリア。話を進めるのがうまい。
「ん〜ねぇ、アリア義姉様。そもそも対抗戦ってどんなことをするの?それ次第では私が指揮官やるよ。」
いつものふわふわした雰囲気なのにどこか、鋭さを持ったメイの声に一瞬息を呑んだアリアだったがすぐに答えた。
「間違いなく『旗取り』になるでしょうね。やることは自分達の旗を陣外に出さず、相手の旗を取って自陣の旗置き場に両方とも差し込むこと。
どちらか片方だけがささっていてもクリアにはならない。旗を持っているときは敵への攻撃は禁止。それが自分のものでも相手のものでもね。上空に浮かび上がるときは観客席よりも高く飛んではいけない。場外に出たときは失格。勝利判定は、旗を差しこんだことが審判に確認されるか、相手が棄権、もしくは相手側が全員戦闘不能になった場合のみなされるわ。ざっとこんなものね。」
一気に叩き込まれた情報を整理しているのか、ずっと黙っていたメイだがやがて普段のふわふわ加減はどこへやら、鋭い視線の策士の姿がそこにあった。
「うん。多分決勝までは進めるよ。絶対。」
何やら不敵な笑みを浮かべて決勝進出宣言をした。
「ちょっとメイ!?去年のアリア姉さまとリリア姉さまでさえ3位だったのよ。いくら数が増えたからって攻撃の主力の攻撃手段が封じられているのよ。なのにどうやって⋯」
マリアがギョッとしたようにメイを諭そうとするも遮られた。
「大丈夫。私は縦移動しかできないけど誰かに動かしてもらうのはだめって言われてないし、ウーナは素の戦闘能力高いし、オルフェはスキルがあるし、義姉様たちだって四つしか魔法使えないけど、その分私が魔法使えばいいし、勝算だけはあるから。」
普段よりも数倍喋るメイは微笑み、
「じゃあ早速、訓練しようか。」
自身が立てた予想を皆に話しながら実践形式の訓練を始めた。
「まず、注意しないといけない領地が3つ。1つ目が去年優勝したベクトール領。今回は二人だからより危険だろうね。2つ目が義姉様たちが負けたファルミア領。一番の危険人物が自爆したとはいえ、今年は防御を剥ぎ取らなきゃいけないんでしょ?厄介だね。」
ここまで挙げられた領地は理解できた。だがアルファルドとゴルシアがいない年はほぼクレシェラ領が優勝しており、これ以上に警戒すべき領地が思い浮かばないマリアたちは挙げられた領地に疑問を持った。
「最後はガーゲルト領だね。」
「ちょっと待ってメイ。なんでガーゲルト領なの?あそこ、こう言ったら悪いけどさほど強くなかったわよ。」
アリアが問うが、メイは不思議そうに首を傾げる。
「だって、アナスタシアがいるんだもん。多分アナスタシアが本気でスキル使ったら勝てなくなるかもだよ。」
それを聞いたアグノーメン総合学院に通うマリア達は入学式での自己紹介を思い出した。
「スキル“解除”のことね。確かに入学式でも魔法を消し去っていたし、他にも色々できるって言ってたけど、それほどまでに強いの?」
「これは予想になるんだけど、消し去るときはあまり魔力を使わないんじゃないかな。私がこの前暴走した魔導具を消したときも魔力の消費量も半分じゃなくて四分の一だけだったし。だからアナスタシアもあれだけ高威力の魔法を解除できたんだと思うし。それにこれが一番問題なんだけど」
一旦言葉を切りメイは今日自領の代表チームと顔合わせに言っているであろうアナスタシアを思い浮かべ告げた。
「スキルも解除できると思うんだよね。」「「「「「「「ほんと?」」」」」」」
各自真面目に連携訓練を行っていたのに本日最大の爆弾発言をされたせいで魔力制御を誤ったマリアが訓練場の天井を吹き飛ばし、訓練らしい訓練ができぬまま一日が終わった。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




