―訓練②―
朝から大騒ぎとなった寝巻き騒動が無事収束し、気を取り直すために朝ごはんタイムとなった。
「というかさ、なんで寝間着のまま訓練場で寝てたんだ。」
いつものフレンチトーストではなくホットケーキを大量に運んできたディルが当然の質問をする。
「マリアがね、前日から訓練場を占領しとけば時間ロスが減るでしょうって言ってみんなで訓練場で寝たのよ。」
アリアがメープルシロップ漬けになったホットケーキを切り分けながら答える。
「せめて早く起きるとかにしろよ。余計時間かかってんじゃねぇか。」
実に的確な指摘だったが皆ホットケーキに夢中なふりをして無視した。
「メープルシロップの中でバターがジュワってなって美味しいねぇ。」
「そりゃどうもっておい!無視するなよ。」
メイの素直な称賛に照れくさそうな姿を見せたのは一瞬で、すぐに我に返るのであった。
「お嬢に称賛されているだと。クソが。一体お前は誰でどこから送られてきた刺客なんだよ。返答次第では消し炭にしてやる。というか何を言っても消し炭にしてやる。」
訓練場から這って寮までやってきたオルフェは背後に数え切れないほどの魔法を展開しながらディルに嫉妬していた。どこかで見た光景だなとアルファルドは思ったが無視した。
「お、おう。オルフェさん?だったか?お前もホットケーキ食うか?あとその背後の魔法を解除してくれ。メイが落ち着いて食事できないと思うぞ。」
「お嬢の食事が妨害されるのは由々しき事態だ。」
ディルフェルトは質問をうまく流しつつ朝食とともにメイの隣の席に追いやった。
「オルフェ、これにね、ホイップクリームつけて食べるとすっごく美味しいんだよ。食べる?」
メイが隣に来たオルフェに向かってフォークを差し出すという行動に、アリアとリリアは即座に動き出した。
「リリア、急ぎなさい。メイが直々に食べさせてくれるってもう一生ないのかもしれないんだから。」
「わかってるよアリア。でも食べるのはアリアじゃなくて私だよ?」
何故か不毛な争いが起きようとしていた。
「何やってるんですか?アリア様とリリア様は高等科二年とは思えないのですが。あとオルフェ、メイ様に直々に食べ物を食べさせてもらうのは千年どころか万年早いと思え。」
ちょうどリビングに戻ってきたウーナが奇跡的なタイミングで止めに入るという本日最大のファインプレーを成し遂げた。そしてオルフェをメイから物理的に引き剥がしつつメイの手からフォークを取ってそのまま口へ運んだ。
「お、お前が食うのかよぉぉぉ」
ディルフェルトの絶叫が午前六時の起床合図代わりに寮中に響き渡った。「何だ?今度は何が起きたんだ?」
まさに寝起き30秒といった姿で階段を駆け下りてきたガルシアはリビングを見下ろし大体の状況を把握した。
「⋯⋯近所迷惑だぞ。」
「残念ながらこの寮の半径1kmには誰も住んでいないから近所迷惑もクソもないぞ。」
寝起きだと言うのに繰り出した精一杯の正論はアルファルドによる更に正確な正論により的確に潰された。
「⋯⋯二度寝してくるわ俺。」
「ガ〜ル〜シ〜ア〜?婚約者である私が朝から苦労していたというのに貴方は呑気に二度寝するつもり?」
「いや知らねぇよ。」
朝から一方的な痴話喧嘩が巻き起こり、ディルフェルトまでもが面白がって観察していた。自分が巻き込まれることなく第三者目線で物事をを見ることが減っていたからだ。
「ほい。最高傑作の朝ごはん(ホットケーキ)だ。これ食って二度寝して対抗戦で太って動けなくなっていてくれ。」
「それが親友に向ける言葉なのか?ディル。」
朝から溜まったストレスをなにげに解放しているディルと、寝起きでひどいやつあたりを食らっているガルシア。波乱に満ちた準備期間はまだ始まったばかりであった。
「おいガルシア。呑気にけんかしてないでこっち来て素手で戦う羽目になった俺の相手をしろ。」
いつの間にかオルフェと同じように床を這っていたゴルシアは顔面蒼白でとてもじゃないが訓練のために格闘ができる状態であるとは言いがたかった。
「お前って本当に病弱だったんだな。」
「兄上は元から病弱です。スキル使ってごまかしてるだけで。」
心なしかザマァと言う心の声が聞こえてきそうなアルファルドとガルシアの会話だった。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




