―親はキレると馬鹿怖い―
ようやく3000文字近い文量になりました。
メイたちがノリノリでしかもストッパー不在で研究していた頃、訓練場破壊の連絡がSSSクラスに在籍している生徒の保護者たちに行き届いた。
―グシャ。執務室で書類整理をしながら報告を受けたアイリスは手元の重要書類を握りつぶしながら
「あらあら、メイたちは随分、学園生活を満喫しているようねぇ?」
「はぁ」
報告を伝えた彼女の夫、ヨハンは遠い目をして当然の結果に娘たちがしょんぼりしている光景を目に浮かべた。
「アリア様とリリア様は去年も怒られているのに学習しなかったのでしょうか?」
アイリスの秘書、ゼルアの疑問は最もだった。
「みんなで迎えに行きましょうか?ねぇ貴方。」
逃げ口を塞がれたヨハンは諦めて妻に従った。
一方、会談を行っていたディルとアルファルドの父、フォレストと、ガルシアとゴルシアの父、ジェーレンは一緒に報告を受け、会談を行っていた部屋の家具が凍りついたり、燃えたりした。
「ほぉ?随分と楽しんでいるようだな。アルファルドは止めなかったのか?」
フォレストの圧に声を発することすらできない報告者はとりあえずSSSクラスの生徒の冥福を祈った。
「それで、ゴルシアの体調はどうなんだ。」
一応心配している父親を演じるジェーレンの周りも燃えていた。
「顔面蒼白でメイ様が主導する実験に参加されているそうです。」
報告者は意識が半分飛んでいたので気づいていない。報告すると間違いなく親がキレだす案件を報告したことを。フォレストとジェーレンが
「あいつら一旦締めないとな。」
「あぁ、全くだ。」
暑いのか寒いのかわからない部屋の中で報告者は安らかに気絶した。一方、親がキレていることに気づいていない実験室にいる面々は
「できたぁぁぁ。」
「すげぇなぁ。永続回路の魔法陣を反転させて、逆に溜め込んだ魔力をそのまま放出できるようにするなんて。」
歓喜の声を上げていた。
「あら?随分と楽しそうね。」
一斉に危機を察知してカーテンの後ろに隠れたSSSクラスの面々でした。
(まぁすぐに隠れるなんてかわいいじゃない)不穏でしかない心の声を読み取った、読み取ってしまったウーナはすぐさま全員にアイコンタクトを送る。一斉に逃げたら逃げ切れるのではないかという淡い期待を持って。
(逃げよう)一斉に頷き
「逃げるぞぉぉぉ」
「なぜ叫んだんだ。ディルフェルトォォォ」
叫びながらフォーティスも逃げる。しかし実験室の周りに氷と炎の壁が立ち上った。
「「「逃げられると思(うなよ(ってないでしょうねぇ。」」」
魔王さながらの表情で退路を断った親達であった。そんな中、騒ぎのせいで床に落ちた完成した魔法機を運悪く起きだしたアロン教師が起動してしまった。
「あっ、制御式組み込むの忘れた。」
メイの声に説教をしようとしていた親たちはとりあえずその場にいる子どもたちと教師を結界で覆った。しかし教師は魔法機を握って再び気絶したため、守るどころではなくなっていた。そんな中呑気に惨状の中を歩いて教師を魔法機から引き離すメイがいた。
「「「いつの間にぃぃぃ」」」
親たちは焦った。あと3秒ほどで起動するため、助ける時間はない。しかし助けなければ間違いなく死ぬ。
「メイィィィィ」
アイリスの絶叫が響く。部屋中に閃光があふれる。
―ドォォォン。誰もが「メイが死んだ」そう思った。しかし目を開けるとメイは無傷でそこにいた。間一髪で目を覚ました教師が張った結界と自分で作った普段からつけている防御用魔法機でかろうじて防御できたのだ。しかしメイは真剣そのもので再度発光してきている魔法機の魔法陣を書き換え始めた。
「メイさんんんっ!?」
一番近くにいる教師が絶叫していた。
「メイィィィィ?なんでまた起動しかけてるのぉぉぉ」
アイリスまで絶叫していた。
「またあの威力のが来たら流石に厳しいぞ。」
フォレストが最大限に警戒しながら言う。しかしメイは他の何も目に入らない様子で一心不乱に魔法陣を書き換えていた。次第に強くなっていく光に教師がメイと魔法機を引き離すべきか悩んでいた。
―カリカリカリ。スゥ〜。ピタッ。インクが無くなったらしくメイは焦っていた。
「インクがない。書き換えできない。できなかったらここにいる全員燃えちゃう。燃える?嫌だ、嫌だ、嫌だ。」
まるで子供のように泣きかけているメイを見てそっとインクを差し出したものがいた。ディルだ。
「インクいるんだろ?これ上げるからさっさと書けよ。みんな死ぬのが嫌なんだろ?」
メイが呆然とディルを見上げる。まるでそれは誰かに似ていて⋯⋯小さく頭を振る。そして、
「ありがとう。」
作業をさっきの倍以上の速さで再開した。
「おい!ディル戻ってこい!危ないぞ。」
父親の言葉に振り返ったディルは唇に人差し指を当てた。
「作業の邪魔をしたら誰も助かりません。」「メイ?どうしたの?」
アイリスがメイがなにかを口走っているのを見て声を掛ける。
「私が書いた魔法陣が書き換えられてる。」
その言葉にその場に集う領主が戦慄した。
「お義母様、スキルの使用許可をください。」
メイのスキル―万物―メイがそれを使ったことはない。なぜならこのスキルは彼女の最大魔力の半分を削るからだ。
「だめよ、メイ。いくらそれがメイのじゃないにしても貴女の書いたものでないとどうして言い切れるの?」
アイリスの疑問はもっともだった。しかしメイは一度自分が書いた魔法陣は絶対覚えているのだ。どんなに寝ぼけて書いたものでも、だ。
「絶対私が書いたものじゃない。寝ぼけてても覚えてるし、しかもこれはついさっき書いたものだよ?見間違えるわけがないよ。」
一瞬の苦悩しかしアイリスは
「ここに領主3人の見届人がいる。なので⋯」
一旦区切り
「許可します。」
メイが小さく微笑む。
「ただし、終わったら全員領主会議に来なさい。」
メイが諦めたように頷く。そして
「ディル、結界の中で私を包むように風を巻き起こして。弱くだよ。」
「はいよ」
ディルが教師を結界につれていきながら言われたとおり行動する。
「ガルシア、フォーティス、アルファルド先輩はお義母様たちの結界を強化して。」
「「「わかった」」」
言葉少なに頷き、結界を強化していく。すべての工程が終了したのを確認し、メイはスキルを使用する。
『スキル発動―万物―分解』
それはとても幻想的だった。荒れ狂う魔法さえもすべてが無に帰る。
「あぁ、やっぱり。私の魔法陣になにか重ねられてる。これ絶対内部犯だね。」
消えゆく魔法陣を見ながらそれをしっかりと目に焼き付ける。そして魔法機が完全に消滅すると、メイが倒れた。魔力が一気に削られたからだ。しかしすぐに起き上がる。しかしその顔はゴルシア以上に顔面蒼白で、もはや死人のようだった。
「メェイィィィィ、安心したよぉぉ。」
リリアが真っ先にメイに抱きつく。このあとに領主会議に連れて行かれるとはいえ、なかなかに元気な一同だった。その横で領主たちは顔を見合わせた。
次回から18時のみの日一回投稿となります。
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