―憧れの人sideクレシェラ魔法学院―
―ねぇ、聞いた。あのクレシェラ家の子が魔力量最高記録を更新したらしいわよ。
―違うわよ。最高記録を更新したのはあの運動音痴でしょ。
―あの運動音痴?ホントかしらねぇ。大体、20m走るだけで息切れするようなやつよ。
―でも先生たちが領主様に報告しに行ったって。
そんな噂話を尻目に彼―オルフェ・ナイロ・ヴィンテルはフードを目深に被りながら教室へと歩いていく。
(あぁ、お嬢はやっぱりすごいなぁ〜魔力量最高記録を更新したみたいだ。⋯⋯僕もだけど)
そう思いながら床に倒れそうになりながらやっとたどり着いた教室の扉を開ける。
「なぁなぁ、君がオルフェ・ナイロ・ヴィンテル君だろ。魔力量3万5千を記録したって本当かい?」
―バタンッいきなり話しかけられたため勢いよく扉を締めてしまうオルフェであった。
(せめて教室に入って座ってから喋ってくれ。あぁお嬢に会いたい。対抗戦が来れば会えるかな。それまでにちょっとは体力つけよう)
絶対にしないことを思い浮かべながら再びドアを開ける。まだびっくりして固まっている先程の生徒がいた。
(効果つよすぎたかぁ〜次はもう少し弱めよう)
その生徒の横をすり抜けながら先程かけた麻痺魔法を解除する。この世界の15歳の平均魔力量は5千程度である。それでも自分の異常性を魔力量と言う形で突きつけられたこの少年が感じたのは
(あれ?お嬢よりも魔力量が多い?何かの間違いでは?)
だった。非常にズレていた。
(お嬢、元気だといいな。僕を助けてくれたあの笑顔がもう一度見たい。メイ、待っててね。必ず君の記憶を取り戻して、ありがとうと言わせてみるから。だから、お嬢、それまで変な虫がつかないようにしてくださいね)
爽やかな風が風が吹き、オルフェの長い前髪を揺らす。
―ズダダダダダ、ダンッ。扉が開く。
「オルフェ・ナイロ・ヴィンテル!首席を表す杖を歩行補助に使うとは何事だぁ!」
オルフェは爽やかに
(口元しか見えていない)
「え?だって歩くのに必要でしょう?僕30m歩いたら息切れしますから。」
教師は(うざい、とてもうざい)と思った。
「それと、対抗戦の出場資格って何でしたっけ?絶対に今日こそお嬢に会いに行きたいのですが」言いながら倒れそうになるオルフェを支えながら教師が答える
「首席のお前は既に出場資格を満たしている。あとは領主様次第だ。だが、体力を多少なりともつけなければその“お嬢”に迷惑をかけてしまうのでは?それと許可なき外出は厳禁だ。」
正論だった。
「わかりました。身体強化魔法で誤魔化します。そして脱走します。」
真剣だった。しかし、魔力の無駄遣いである。全員が満場一致で
「神はなぜ、なぜ体力を与え忘れた。」
叫んでいた。教師は
「これほど捕まえやすい脱走犯は見たことがない。」
別方向で感心していた。しかし言われた側は、
「?違いますよ。僕の家の“継承知識”も忘れています。お陰で家では無能扱いですよ。あと脱走するときは魔法をフル活用して逃げるので捕まえにくいと思いますよ。」
天を仰ぐ一同だった。
「あぁ、ちなみに継承知識とは、世界に関するほぼすべての情報のことです。僕は魔法に関する知識しか受け継ぎませんでしたが。」
(お前はそれがあっても結局お嬢に戻るんだろ)総ツッコミした。そして理解した。もう何も思わないほうが疲れない。と。
感想、アドバイス等ありましたら、お知らせ下さい。できる限り改善して行きます。




