幕間―魔王側の定例報告―
やっと裏側を出せた
アイリスがメイの過去について話している頃、どこともしれない場所―モンド―にて報告会が行われていた。外はどんよりと曇っており、部屋の中は一層暗い。城の中心部にある大広間の真ん中―玉座に座る人物が
「それでは、スピリア側の動きを聞こうか。」
重く、暗く、玉座の前、円卓に座る一人の人物が主である、魔王にひざまずく。
「はっ。まず、監視対象である、メイ・クレシェラ・アルデンティですが、相変わらず事件の日以前の記憶がないようです。」
魔王は大して興味なさげに頷いた。
「そうか。ところであの子が最近見ている夢は何なんだ。」
抑揚の少ない、性別のわかりにくい声で魔王が問う。
「最近は、誰かはわからないが、何者かが監視対象を炎の外へ連れ出す夢を見ているようです。今夜は、流星群の夢を見たとか。」
―カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、リズミカルでしかし苛立たしげな音が魔王の肘掛けから響く。
「まだ、まだ思い出さないのか。ほんっとうにいつまで待たせる気だあの娘は!」
ほんの少し、しかし濃い魔力が大広間を満たす。
「五年、五年だぞ。全くいつまで、いつまで待てばいいんだ。」
(あぁ、またお怒りだ。早く帰って面白そうな魔導書読みたい)
報告者は現実逃避した。そこに会議を長引かせる気満々であろう声が響いた。
「でも魔王様、思い出させなくてもいいのでは?僕のい⋯⋯あの子が今思い出せばきっと壊れるよ。今まで積み上げてきたもの、全部。星がそう言っているんだ。あと2,3年は待つべきだと僕は思いますよ。それに、流星群の夢まで見ているのならもうすぐじゃないかな。もう少しの辛抱だと思いますよ。」
怠惰の大罪人が笑顔で、しかし否を言わせぬ顔で言い放った。
「君もそう思わないかい?傲慢の大罪人―アロガンス・ソノソロ。いや、学院教師―アロン。」
(巻き込まないでください、怠惰様。そして素性バラさないでください。)
切実に報告者、いや傲慢の大罪人は思った。そっと胃薬の残りを確認しながら答えた。
「私自身はどちらでも良いと思います。ただ、今記憶を取り戻すと今後の計画は間違いなく周囲に妨害されるかと。」
怠惰の大罪人はよくできましたとでもいいそうな顔で頷いた。フードの中だったので見えにくかったが。一方、魔王は苦虫を噛み潰した顔で怠惰の大罪人を睨んでいた。
(良かった。これでしばらくは怠惰様に自由意志を奪われることはない。魔王様も怖いが、やはり怖いのは怠惰さまだ)
「⋯⋯ハァ。次はない。」フードの中から微妙に見える満面の笑みを見ながら魔王が言った。
「承知しております。しかし、完璧な時期はお教えしますのでご安心を。」
互いに睨みをきかせあっていた。やがて怠惰の大罪人が目を逸らし、
「では、次の報告会で会いましょう。皆様。あ、あと、そうそう今日出席していない“嫉妬”の大罪人だけど、今年付で領主に就任したよ。良かったですね。これで各領地の動向を知りやすくなる。まぁ、私はあいつの情報よりも自分で入手した情報以外信用しませんけどね。」
大広間から退出していった。怠惰が出ていった扉を睨みつけながら、今回の定例報告で魔王に媚びを売ろうとしていた者たちは歯ぎしりをし、やがて退出していった。そんな中アロガンスは、
(帰っても問題児たちの相手をさせられるだけでは?)自分の胃の心配をしていた。
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