―昔話―
頭がまわらなかった
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アイリスは語りだした。メイを悲しげに愛おしげに撫でながら。
「まずメイ、貴女には5歳年上の兄がいたの。中等科を飛び級して高等科に入った神童とも呼ばれていたの。でも、6年前の流星群の日の次の日に失踪したの。貴女や貴女のお母さんである私の姉、それと、当時、“剣聖”だった貴女のお父さんも必死に探したわ。でもその数週間後に貴女の家が⋯⋯」
アイリスは一旦そこで言葉を切り、なにかに耐えるように上を向いた。次に前を向いて話し始めたときには、涙を流していた。
「⋯⋯。貴女の家が燃えて、それで、貴女のお父さんは死んだわ。」
静かに感情を抑えて、泣かないように我慢しているアイリスは自分の頬を伝うものに気づかない。ただ死体が見つからなかった自分の姉に思いを馳せているのだ。
「⋯⋯。えっと。お、おかあさん。おかあさんはどうなったの?」
少し眠たいのか、若干幼い声で問うメイは真剣だった。そのメイを優しく撫でながら、
「見つからないの。みんな、みんな、それこそ私も探したし、他領にも要請して、探した。それで下された判断は死体すら残らず燃え尽きた。っていう残酷な事実だった。」
悲しそうにメイを見つめる目はどこまでも優しかった。
「見つかったのは、貴女のお父さんの死体と、焼け跡から少し離れた場所で倒れていた貴女だけ。貴女のお兄さんから最後にもらった髪飾りをしっかり握りしめていた貴女だけが生きて帰ってきたの。」
そこでアイリスは話を締めくくった。静かな沈黙が降りた。ちょうど、夜明けを示す鐘がなった。
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