幕間―夢での決意―
短いです
―どこか、丘の上を歩いている。夜なんだろう。暗かった。周りには月下草の花が咲き乱れていた。記憶が欠落してから何故か嫌いになった月下草が。
「ねぇ、まだつかないの。」
幼い私の声。何歳くらいなんだろう。人形劇を見ている気分だ。夢だからそういうこともあるんだろうと思っておく。
「もうすぐだからね、歩き疲れたのなら僕が背負ってやろう。ほら、こっちのほうが見やすいだろう?」
誰かが私を持ち上げる。知らない人だ。でも懐かしい感じがする。
「わぁ。目線が高くなった。でも浮遊魔法で浮くことくらいできるのに。」
こんなことで喜べたのか私は。
「だめだ。母上からも言われているだろ、魔法は勝手に使うなって。」
懐かしい。注意してくれる人が懐かしい。ほんとに誰なのかな。
「バレなきゃいいじゃない。」
ほんとに私なのかな。こんなに駄々をこねるなんて。
「ほら、着いたよ。メイ」
そう言っておろしてくれた人の目は緑みたいな赤にも見える色をしていた。
「あぁ。ほら見えた、見えたよメイ。流星群だ。」
「ホントだぁ〜とってもきれいだね。あの星たちにも意味はあるの――。」
聞き取れない。名前を読んだのに、聞き取れない。
「あぁ。あれはね死んだ人たちがまだここにいて見守っているよ、っていう挨拶みたいなものなんだ。人は死んだら星に還るからね。」
静かな、幸せな、時間。流星群が終わる。
「お兄ちゃん。」
お兄ちゃん?私に?
「なんだい?」
「また一緒に星を見ようね。約束だよ。」
小指を差し出す。
「あぁ。約束だ。」
そう言って私の小指にその人は小指を重ねた。夢だとわかっていながら私もそっと手を重ねた。いつか、この夢が、悪夢の原因が、そのすべてが思い出せたのなら、そのときはこの人を探そう。そして聞くのだ、―どうしていなくなったのですか。と。―でも次の瞬間私は炎の中に立っていた。いつもの悪夢の中に。
「また一緒に星を見るって言ったのに。」
夢の中の私は泣いていた。自身の無力感と、約束が果たされなかったことへの僅かな怒りを抱いて。そこで目覚めた。小指を絡めた感触がやけに残っているような気がした。
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