―部屋取り合戦―
「それじゃあ、私は厨房片付けて、夕食作るから部屋は勝手に決めてね。」
メイが黒焦げになった廊下を見て言った。
「私達は部屋もう決めたから。」
アリアが言う。1年生は顔を見合わせ、厨房に一番近い部屋を押し付けあった。
「あぁ、それと、時々窓から剣が飛んでくるよ。アルファルドとゴルシアがよく喧嘩するから。」
リリアが言う。
「お風呂の近くは、厨房と同じくらい爆発するぞ。研究室が空いてないからとお風呂で実験するやつがいるから。」
アルファルドが忠告する。
「安全なのは、中央の部屋だな。4部屋俺等で占領したからな。」
ゴルシアが言う。
「⋯⋯とりあえず、安全な部屋の一つは、メイさんの部屋にしようか。ご飯引き受けてくれたし。」
ディルが厨房を見ながら言った。満場一致で賛成だった。ガルシアが満面の笑みのマリアを見ながら、
「女子は全員安全地帯だろ。」
泣く泣く平穏を手放す男子たちであった。
「待て、安全地帯一つ空いてるぞ。」
フォーティスが気づいた。気づいてしまった。
「よし、ここは公平にじゃんけんといこうじゃないか。」
闘志に燃えた目で、ガルシアが言った。
「いいぜ。エリオットもそれでいいか。」
フォーティスが言う。
「絶対負けない。」
静かに燃えているエリオットだった。
「⋯⋯俺はいくらか平和になりそうな厨房横いくわ。」
ディルは逃げた。
「じゃーんケーン」「ポン」
―フォーティス、チョキ
―エリオット、チョキ
―ガルシア、パー
「なぜだぁぁぁぁ」
崩れ落ちるガルシアだった。
「じゃーんケーン」「ポン」
―フォーティス、グー
―エリオット、パー
「良かった」
安堵するエリオットであった。
「どっちがいい」
ガルシアが聞く。
「窓際で。結界強化するわ。」
フォーティスは遠い目で答えた。
「お風呂の横⋯⋯」
哀愁が漂ってきた。
「ごはんできたよ〜」
と、ちょうどメイが呼びに来た。そして夕食は、フルコースだった。
「メイさん」
「メイでいいよ」
「1時間で作ったの、この量。」
ディルが唖然として聞く。
「おかわりもあるよ」
「朝ごはん気合い入れないと⋯⋯」
そして上級生たちは、感激しすぎて泣いていた。特にゴルシア、
「嫁に欲しい。」
目が本気だった。
「誰があげるものですか。」
アリアが魔法を発動しようとする。
「ご飯中だよ。」
メイが切れてた。目が笑ってない笑顔で。
「デザートは何がいい?ケーキもプリンもアイスもあるよ。」
そして切り替えも早かった。
「メイ、朝はフレンチトーストでいいか?いくらでも作るぞ」
ディルが本気で聞いた。
「いいよ〜。あ、マリアまた起こしてね。」
その平和な光景を教師の制服を着た侵入者は見ていた。
「ふぅん。あれが監視対象“メイ・クレシェラ・アルデンティ”か。ただの食い意地張った女の子にしか見えないけどな。まぁいい。魔王様と、怠惰様に怒られないよう、仕事するだけだ。」
その人影は呟くと、溶けるように闇に消えた。ワイワイ騒ぐメイたちは誰一人としてその存在に気づかなかった。
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