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聖血のロゼル  作者: チョコレートスターフィッシュ
第5章

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複合魔石に前祝い。

周囲の安全を確認したレイ一行は、ひとまず戦闘の終わりを迎えていた。

 エドは剣に付着した血を、神経質そうに布で拭い取っている。刃に残った汚れが気になるのか、何度も角度を変えては念入りに磨いていた。

「ちっ……。こびりつくと面倒なんだよな」

 小さくぼやきながら、エドは剣を拭く手を止めない。


 一方、ミレアは足元に転がるゴブリンと影這百足の死骸を見下ろし、あからさまに顔をしかめている。

「うぅ……。もう、最悪……。なんでこんな気持ち悪い魔物ばっかりなのよ……」


 できることなら、一刻も早くこの場から離れたい。そんな気持ちが表情にありありと浮かんでいた。

 そんな二人をよそに、レイは周囲へと視線を巡らせていた。

 壁の亀裂、崩れた岩の陰、そして奥へと続く暗い通路。

 魔物が潜んでいそうな場所を一つずつ確かめながら、レイはふと額に手をやった。

 指先に、じっとりとした汗が触れる。

 激しい戦闘だった。

 張り詰めていた緊張が少しずつ解けていくにつれ、身体に蓄積した疲労がじわじわと表面に現れてくる。

 レイは小さく息を吐き、乱れた呼吸を整えた。

 そのとき、不意に頭の中に一人の少女の顔が浮かんだ。

(……アンナは、今頃どうしてるかな)

 ふと、そんなことを考える。

(今頃、店の仕込みを手伝ってる頃か……)

 店で忙しそうに動き回るアンナの姿が思い浮かび、レイの表情がほんの少しだけ和らいだ。

 こちらが廃坑の奥で魔物と戦っている間も、あちらにはあちらの日常がある。

 いつもと変わらず、店の仕事をこなしながら過ごしているのだろう。

(……こっちはこんな有様なのにな)

 レイは苦笑し、軽く首を振った。

 今は余計なことを考えている場合ではない。

 そう気持ちを切り替え、再び周囲へと意識を向けた。

 すると、壁際を注意深く調べていたレイは、奥へと続く通路を発見する。

「……あっちに道があるな」


 そう呟き、足を踏み出そうとした、そのときだった。

 視界の端で、何かがキラリと輝いた。

 レイは足を止め、壁へと目を向ける。

 薄暗い洞窟の中、岩肌の隙間から覗く小さな輝き。

 それは、周囲の岩石とは明らかに異なる光沢を放っていた。

「これは……魔石か?」

 思わず漏れたレイの声に、少し離れた場所にいたスマルグが反応した。

「ん? 魔石だと?」

 スマルグはすぐさまレイのもとへ駆け寄ると、壁の輝きを確かめる。


 そして、岩肌に半ば埋もれていたそれに指をかけ、力を込めて引き剥がした。

 パキッ。

 小さな音とともに、石の欠片が剥がれ落ちる。

 スマルグは手にした石を指先でつまみ、光にかざすようにして眺めた。

「こりゃ、間違いない。小さいが魔石だ。それに、この色艶……純度も高いぞ」

「本当か?」

 エドが手を止め、すぐさま近づいてくる。

 ミレアも先ほどまでの嫌悪感を忘れたように、壁へと目を向けた。

 一行は岩肌に顔を寄せ、注意深く観察する。

 すると、そこにはスマルグが取り出したもの以外にも、小さな魔石がいくつも埋まっていることが分かった。

 岩の隙間に点在する青白い輝き。

 場所によっては、いくつもの魔石がまとまって顔を覗かせている。

「すげぇ……」

 エドが感嘆の声を漏らした。

「ここは手つかずの魔石鉱床か? 探せば、もっとでかい魔石や鉱石も見つかるかもしれないぜ」

 その言葉に、一行の表情が明るくなる。

 先ほどまで魔物の死骸に顔をしかめていたミレアでさえ、壁に埋まった魔石を興味深そうに眺めていた。

「こんな場所に、魔石がこんなに……」

 思いがけない発見だった。

 崩れた廃坑の先に、これほどの資源が眠っているとは。

 もし本当に大規模な鉱床ならば、ここで得られるものは小さな魔石だけではないかもしれない。

 一行の胸に、期待が膨らんでいく。

 しかし、スマルグは浮き足立つ仲間たちを見渡すと、手にした魔石を懐へしまい、奥へと続く通路に目を向けた。

「よし。この先も確認しに行こう。皆、異論はないな?」

「もちろんだ」

 エドが即座に答える。

 ミレアも小さく頷き、レイも異論はないとばかりに視線を返した。

「決まりだな。行くぞ」

 スマルグを先頭に、一行は再び歩き始めた。

 レイもその後に続きながら、周囲の岩肌へと注意を払う。

 魔石が見つかった以上、この先にも何かある可能性は十分にある。

 だが、資源が豊富な場所ほど、思わぬ危険が潜んでいることもある。

 期待に胸を躍らせながらも、警戒を怠るわけにはいかなかった。

 やがて、一行は薄暗い通路を抜ける。

 その先に広がっていたのは、先ほどまでの狭い通路とは打って変わった、開けた空間だった。

 天井は高く、壁面も広い。足元には大小さまざまな岩が転がり、奥まではっきりと見通すことができない。

 スマルグは数歩進んだところで、不意に足を止めた。

「……おい」

 いつになく低い声だった。

 後ろを歩いていた仲間たちも、その声音に何かを感じ取ったのか、足を止める。

 スマルグは広間の奥を見据えたまま、ゆっくりと片手を上げた。

「……あれを見てみろよ」

 指し示された先へ、一同の視線が集まる。

 そして――。

 誰もが、目の前の光景に息を呑んだ。


スマルグが指差す方向を、一行はじっと見つめた。

レイもまた、彼の指先を追って視線を向ける。

そこには、土の中から拳ほどの大きさの魔石が顔を覗かせていた。

一見すれば、どこにでもある魔石に見える。

しかし、レイはすぐに違和感を覚えた。

「……色が、おかしい?」

魔石は通常、宿している属性によって色が異なる。

火の魔石なら赤。水の魔石なら青。

そして、特定の属性を持たず、純粋な魔力のみを秘めた魔石は白色をしている。

それが、この世界における魔石の常識だった。

ところが、土の中から顔を覗かせている魔石は違った。

赤と緑。

本来ならば交わるはずのない二つの色が、一つの結晶の中に混在している。

まるで、赤い光と緑の光が互いを追いかけるように、結晶の内部で揺らめいているようにも見えた。

レイは目を細め、しばらくその魔石を見つめた。

やがて、信じられないものを目にしたかのように、小さく呟く。

「……あれは、複合魔石か?」

その言葉に、エドの表情が一変した。

「複合魔石だって?」

思わず声が裏返る。

額には、いつの間にか汗が浮かんでいた。

「そいつはすげぇ……! 指の先ほどの大きさの複合魔石だって、金貨数百枚はする代物だぜ?」

エドは魔石を凝視したまま、ごくりと唾を飲み込んだ。

「土に埋まってて全体は見えねぇが……見えてる部分だけでも拳大はあるぞ。いったい、どれだけの値がつくんだ……?」

冒険者として数々の魔物や財宝を目にしてきたエドでさえ、興奮を隠しきれない様子だった。

「ちょっと! 何をぼーっとしてるのよ!」

ミレアが声を上げた。

「早く誰かあれを取ってよ! すごい発見じゃない!」

普段の落ち着きなど、すっかりどこかへ消えてしまっている。

その隣では、寡黙なニグルドも魔石を凝視していた。

いつもなら滅多に感情を表に出さない彼だが、今ばかりは違う。

わずかに見開かれた目と、食い入るような視線が、彼の胸の内に渦巻く興奮を物語っていた。

「……こいつは、とんでもないな」

低く漏らした声には、隠しきれない驚きが滲んでいた。

一行の視線が、再び魔石へと集まる。

その中で、真っ先に動いたのはスマルグだった。

彼は周囲を一度見回すと、慎重に魔石の周囲の土を掘り始めた。

大切な宝物を傷つけないよう、指先で土を少しずつ取り除いていく。

「おい、もっと周りを掘ったほうがいいんじゃねぇか?」

エドが声をかける。

「分かっている。結晶を傷つけるなよ」

スマルグは短く答え、さらに土を掘り進めた。

それを見たミレアも、すぐさま膝をついて手伝い始める。

「こっち側も埋まってるわ! もう少し掘らないと!」

「おい、そんなに勢いよく掘るな。欠けたらどうする」

「分かってるわよ!」

口では言い合いながらも、二人の手は止まらない。

エドも剣を鞘に収め、土を掻き出す作業に加わった。

ニグルドまでもが無言で膝をつき、魔石の周囲を丁寧に掘り進めていく。

つい先ほどまで、魔物の死骸を前に顔をしかめていたミレアも、今では衣服が土で汚れることなど気にも留めていなかった。

誰もが、目の前の魔石に夢中だった。

そして――。

「……俺も手伝うか」

とうとうレイまでが膝をつき、土を掘り始めた。

普段なら、まずは周囲の安全を確かめ、それから慎重に行動するところだ。

だが、これほどの発見を前にしては、さすがのレイも平静ではいられなかった。

薄暗い廃坑の一角。

冒険者たちは全員、土にまみれながら、一つの魔石を掘り出そうと必死になっていた。


やがて、最後の土が取り除かれた。

「……よし、これで全部か」

スマルグは魔石の周囲に残った土を丁寧に払い落とすと、両腕で慎重に持ち上げた。

そして、傷をつけないよう細心の注意を払いながら、ゆっくりと地面へ置いた。

ゴトリ、と鈍い音が廃坑の中に響く。

ついに、複合魔石の全貌が明らかになった。

その大きさは、実に四十センチほど。

不規則に伸びた結晶の表面には、赤と緑の色彩が入り混じり、内部では二つの光が揺らめいている。

薄暗い廃坑の中だというのに、その輝きははっきりと見て取れた。

重量は十五キロほどだろうか。

大人が両腕で抱えれば持ち運べる程度の大きさではあるが、片手で扱うにはあまりにも重い。

それが、目の前にある。

誰もが言葉を失っていた。

スマルグの額から、大粒の汗が一滴、また一滴と床に落ちていく。

しかし、彼はそれを拭おうともしなかった。

目の前の魔石から、視線を外すことができなかったのだ。

しばらくして、スマルグがゆっくりと口を開いた。

「……なぁ、エド」

「……なんだ?」

エドもまた、魔石を凝視したまま答える。

「お前の見積もりだと、この魔石……いくらになる?」

その問いに、エドは額に手を当てた。

まるで、自分の目に映っているものが信じられないとでも言いたげな表情だった。

「……こんなでかい複合魔石、見たことも聞いたこともねぇ」

声には、かすかな震えが混じっていた。

「指の先ほどの大きさでさえ、金貨数百枚はするんだぞ。それが、こんな大きさだ……」

エドは一度言葉を切り、改めて魔石を見つめ直した。

「こりゃ……金貨で数万枚の世界の話になるぞ」

その言葉に、一行の間に再び沈黙が落ちた。

金貨数万枚。

普通の冒険者が何年、いや、何十年とかけても手にできないほどの大金だ。

それだけではない。

複合魔石という希少性を考えれば、単純に金貨を積み上げるだけでは手に入らないと考える者もいるだろう。

「貴族や王族だって、黙っちゃいねぇ。こんなもんが世に出たら、血眼になって金貨を差し出すさ」

エドは乾いた笑いを漏らした。

「……とんでもねぇお宝だぜ、こいつは」

スマルグは、ごくりと唾を飲み込んだ。

金貨数万枚。

その金額を頭の中で思い描いた瞬間、全身が熱くなるのを感じた。

今まで泥にまみれ、命懸けで魔物と戦い、わずかな報酬を仲間と分け合ってきた。

それが、たった一つの魔石で覆されるかもしれないのだ。

「……マジかよ」

スマルグの呟きに、ミレアが勢いよく立ち上がった。

「ちょっと、みんな! 聞いたでしょ!?」

興奮で頬を紅潮させながら、彼女は仲間たちを見回した。

「私たち、これで大金持ちよ!」

その声が廃坑に響き渡る。

「もう毎日、危険な魔物と戦う必要なんてないのよ! 泥臭い冒険者なんて今日でやめだわ! おいしいものを食べて、きれいな服を着て、のんびり暮らすの!」

すっかり夢見心地になったミレアを見て、エドは苦笑した。

「おいおい、気が早すぎるだろ。まだ売ってもいねぇんだぞ」

「いいじゃない! 夢を見るくらい!」

「夢、か……」

それまで黙り込んでいたニグルドが、ぽつりと呟いた。

彼は魔石を見下ろしたまま、信じられないという表情を浮かべていた。

「……信じられん。夢じゃないのか、これは」

「ははっ!」

スマルグが思わず笑い声を上げた。

「なら、頬を引っ張ってやろうか?」

そう言いながら、彼はニグルドの肩を軽く叩こうと手を伸ばす。

ニグルドが構えていた盾に、ポン、と拳が当たった。

スマルグは笑いながら手を引っ込め。

そして、再び魔石へと目を向ける。

その顔には、先ほどまでの慎重さとは違う、隠しきれない喜びが浮かんでいた。

「……夢なんかじゃねぇ」

彼は確かめるように、一言ずつ言葉を紡いだ。

「こりゃ、現実だ」

誰も否定しなかった。

ミレアは満面の笑みを浮かべ、エドは何度も魔石を見直し、ニグルドもまだ信じられないといった様子で立ち尽くしている。

そして、レイもまた――。

自分でも気づかぬうちに、口元が緩んでいた。

これほどの価値を持つ魔石が、まさかこんな場所に眠っていたとは。

冒険者として幾多の危険を乗り越えてきたレイでさえ、こんな幸運に巡り合えるとは思ってもいなかった。

薄暗い廃坑の片隅で、五人はしばらくの間、目の前の奇跡に酔いしれていた。


「……よし。さっさと切り上げて、こんなところ抜け出しちまおうぜ」

エドが魔石を見下ろしながら言った。

その言葉に、誰も異を唱えなかった。

「そうね。これ以上、ここにいる理由なんてないわ」

ミレアが頷き、ニグルドも静かに同意する。

レイも異論はなかった。

これほどの発見をしたのだ。あとは無事に地上へ戻り、魔石を換金するだけ。

余計な危険を冒す必要などない。

「そうだな……これ以上は必要ねぇ」

スマルグも満足げに頷いた。

そして、何かを思いついたようにニヤリと笑う。

「どれ、大成功の前祝いといこうじゃねぇか」

そう言うと、彼は荷物を漁り始めた。

やがて取り出したのは、見るからに上等そうな蒸留酒の瓶だった。

「おいおい、そんなもんまで持ち歩いてたのかよ」

エドが呆れたように笑う。

「こういう商売をしてりゃ、祝い酒の一本くらい用意しておきたくなるもんさ」

スマルグは得意げに答えると、小さなカップを取り出し、仲間たちに配り始めた。

ところが、人数分を配り終えたところで、ふと手を止める。

「……おっと、カップが足りねぇや」

スマルグはレイへと顔を向けた。

「レイ、お前は何か持ってねぇか?」

レイは一瞬、眉をひそめた。

「ああ、あるが……酒なんて飲んでる場合か?」

今はまだ迷宮の中だ。

周囲の安全を完全に確保できたわけでもない。早く地上へ戻るに越したことはないだろう。

しかし、スマルグは気にした様子もなく、ひらひらと手を振った。

「一杯だけさ。一杯飲んだら、すぐにこのくそったれの迷宮から抜け出す。そんで、魔石を換金した金を山分けして解散だ」

彼は酒瓶を軽く掲げた。

「いいだろう? 景気づけさ」

そう言って、実に機嫌よさそうに笑う。

正直なところ、レイは酒を飲む気分ではなかった。

一刻も早く地上へ戻りたい。それが本音だった。

だが、目の前ではスマルグが鼻歌交じりに仲間たちのカップを並べている。

今日という日にふさわしい祝いをしようというのだ。そこへ水を差すのも野暮というものだろう。

「……一杯だけだからな」

レイはそう言うと、自分の荷物からカップを取り出した。

「分かってるって!」

スマルグは満足げに笑い、全員のカップへ酒を注ぎ始めた。

琥珀色の液体が、カップの中で揺れる。

漂ってくる芳醇な香りからして、かなり上等な酒らしい。

スマルグは一人ひとりのカップに、すり切りいっぱいまで酒を注いでいった。

そして最後に自分のカップを満たすと、仲間たちを見回した。

その顔には、いつもの軽薄な笑みとは少し違う、心からの喜びが浮かんでいた。

「……みんな」

スマルグが口を開く。

「今日という日は、忘れられねぇ夜になるだろうな」

誰もが黙って彼の言葉に耳を傾けた。

「お前らと組んで、大正解だったぜ」

彼はカップを掲げた。

「それじゃ……乾杯!」

「乾杯!」

五つのカップが掲げられる。

そして、一行は一斉に酒を口へ運んだ。

喉を焼くような強い酒精が、口の中から喉元へと流れ込んでいく。

エドは眉ひとつ動かさず、一気に飲み干した。

ニグルドもまた、無言のままカップを空にする。

レイも顔をしかめることなく、最後まで飲み切った。

スマルグに至っては、まるで水でも飲むかのような勢いだった。

ただ一人、ミレアだけは様子が違った。

「けほっ……! ちょっと、何これ……!」

彼女は思わず咳き込み、目を潤ませた。

「強いお酒ね……!」

それを見たスマルグが、意地の悪い笑みを浮かべる。

「おやおや。あんたには野蛮すぎたかい?」

「……は?」

ミレアの目が、ぎろりとスマルグを睨みつけた。

「はんっ! 飲み慣れてないだけよ!」

強がるように言い放つと、彼女はカップを口元へ運び、残っていた酒を一気に飲み干した。

「……っ、ふぅ!」

飲み終えたミレアは、カップを勢いよく下ろした。

スマルグは一瞬きょとんとしたあと、楽しそうに口笛を吹いた。

「ヒュウ! いい飲みっぷりじゃねぇか!」

「うるさいわね!」

ミレアが即座に言い返す。

そんな二人のやり取りに、エドが小さく吹き出した。

つい先ほどまで、誰もが信じられない発見に興奮していた。

今はその余韻に浸りながら、仲間たちの間にいつもの空気が戻りつつある。

レイは空になったカップをしまいながら、小さく息を吐いた。

これで本当に終わりだ。

あとは地上へ戻り、この魔石を換金するだけ。

そう考えると、ようやく肩の力が抜ける気がした。

「よし……それじゃ、出口に戻るとしよう」

スマルグが酒瓶を荷物へしまい、立ち上がった。

足元に置かれた複合魔石を一度だけ振り返ると、彼は満足げに頷いた。

「さあ、帰ろうぜ。俺たちの大勝利だ」

そう言って、スマルグは来た道を戻り始めた。

一行もその後に続く。

薄暗い廃坑の奥に、五人の足音が遠ざかっていった。



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