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聖血のロゼル  作者: チョコレートスターフィッシュ
第1章

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出会い

「ご機嫌よう」

穏やかな女性の声が、奈落の静寂の中に落ちた。

「お気分はいかがですか?」

⸻

ロゼインは、しばらくその声の主を見つめていた。

目の前には――

修道服を纏ったスケルトン。

白い骨。

空洞の眼窩。

それなのに、

声だけは妙に落ち着いていて、

上品な女性のものだった。

⸻

ロゼインの頭はまだ霞んでいる。

何が起きたのか、

どうして生きているのか、

それすら理解できていない。

⸻

だが。

違和感だけは、はっきりとあった。

⸻

体が、軽い。

軽すぎる。

⸻

ロゼインはゆっくりと手を持ち上げた。

視界に入った指。

細い。

白い。

そして――

小さい。

⸻

「……?」

喉から声が漏れる。

その瞬間、

ロゼインの眉がぴくりと動いた。

⸻

今の声。

⸻

高い。

⸻

「……あ?」

もう一度、声を出す。

やはり高い。

少年のような声。

いや――

子供の声だ。

⸻

ロゼインの呼吸が浅くなる。

胸の奥がざわつく。

理解が追いつかない。

⸻

視線が、ゆっくり下へ落ちた。

⸻

自分の腕。

細い。

華奢だ。

遠征で鍛えた冒険者の腕ではない。

⸻

袖が長い。

服がぶかぶかだ。

肩も合っていない。

まるで体が小さくなったかのように。

⸻

その時。

肩から何かが滑り落ちた。

さらり、と。

柔らかな音。

⸻

ロゼインの視界の端に、

金色のものが流れた。

⸻

髪。

⸻

長い髪だった。

⸻

胸の前まで垂れ下がる、

金色の長髪。

⸻

ロゼインの思考が止まる。

完全に止まった。

⸻

ゆっくりと、

震える手でそれを掴む。

指の間を滑る髪。

柔らかい。

長い。

⸻

ロゼインの喉が鳴った。

⸻

「……は?」

⸻

その声は、

やはり高かった。

⸻

ロゼインは、慌てて自分の体を見た。

胸。

平らだ。

だが、

体は小さい。

細い。

脚も短い。

腰も細い。

⸻

服の中にある体は、

完全に別物だった。

⸻

十歳ほどの少年の体。

いや。

顔立ちだけ見れば、

少女のように美しい少年。

⸻

ロゼインの呼吸が荒くなる。

心臓が早鐘のように鳴る。

⸻

「……な」

声が震える。

⸻

「なんだ……これ……」

⸻

スケルトンは、

その様子を静かに見守っていた。

骨の指を胸の前で組み、

少しだけ首を傾げている。

⸻

コトリ、と骨が鳴った。

⸻

「どうかなさいましたか?」

とても落ち着いた声だった。

⸻

ロゼインは顔を上げた。

赤い瞳が、スケルトンを睨む。

⸻

「どうかなさいましたかじゃねえ!」


怒鳴ったつもりだった。


だが声は可愛い少年のものだった。


それが余計に腹立たしい。


「俺の体が――」


自分の腕を見る。

髪を見る。

体を見る。


「小さくなってんじゃねえか!」


奈落に、

少年の混乱した声が響いた。


スケルトンは、少しだけ目を細めるような仕草をした。

もちろん、

骨なので表情はない。

だが雰囲気は明らかに穏やかだった。


それから、

とても丁寧に頭を下げた。


「申し遅れました」

柔らかな声。

修道女のような礼儀正しさ。


「わたくし、アゼリアと申します」


奈落の骨の山の中で。

少年と、

一体のスケルトンの出会いが、

静かに始まった。



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