第1章終。新たなる旅の始まり。
幾重にも続いた階層を、二人はただ黙々と登り続けた。
戦闘を繰り返し、時に休み、互いに言葉を交わしながら。
そして――
ついに、最上階へと辿り着く。
一階層。
迷宮の外へと繋がる、その境界。
踏み出した瞬間、空気が変わる。
湿った冷気が薄れ、代わりに乾いた風が頬を撫でた。
ロゼインは軽く息を吐く。
「……やっとか」
体は汚れ、服はところどころ擦り切れ、髪も乱れている。
ろくな装備は残っていない。
それでも――
生きている。
ロゼインは頭をガシガシと掻いた。
その横で、アゼリアも足を止める。
迷宮の出口を前にして、わずかに言葉を選ぶように沈黙する。
そして、静かに口を開いた。
「あの……ロゼイン様」
「なんだ」
アゼリアは視線を落とし、少しだけ間を置いてから続ける。
「私は……」
声が、ほんのわずかに揺れる。
「ついて行っても、よろしいのでしょうか?」
一拍。
「お邪魔では……ありませんか?」
その問いには、不安が滲んでいた。
もしここで拒まれれば。
自分はこの先、どこへ行けばいいのか。
ただの存在として、迷宮に留まるのか、それとも――
その思考がよぎった瞬間、胸の奥が静かに軋む。
アゼリアは、答えを待った。
ロゼインは少しだけ目を細める。
そして、何でもないことのように言った。
「当たり前だろ?」
アゼリアが顔を上げる。
ロゼインは続ける。
「もう仲間……だろ?」
その言葉は軽い。
だが、確かに重さを持って届いた。
ロゼインはにかっと笑う。
アゼリアの中で、何かがほどける。
「はい!」
声が、はっきりと響いた。
「私は……!」
一瞬だけ言葉を詰まらせて、それでも続ける。
「私はロゼイン様に着いていきます!」
まっすぐに、迷いなく。
「どこまでも! いつまでも!」
ロゼインはその勢いに少しだけ肩をすくめる。
「大袈裟な奴だな」
軽く笑いながら、前を向く。
そして一歩、踏み出す。
「行こうぜ、アゼリア!」
その背中に、アゼリアは即座に応える。
「はい!」
二つの足音が並ぶ。
迷宮の外へと続く、その先へ。
こうして――
彼らの物語は、静かに、そして確かに幕を開けた。




