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人々が寝静まった深夜。
今日も人目を忍んで、温泉の地下深くの祠へ、ごつごつとした岩の階段を降りていきます。
そこには、先に来ていたのか、メリダおばさんの姿もありました。
「シエルちゃんきたねー!」
「こんばんは、メリダおばさん」
「こんばんは。
そういえば、例のイケメン!きたねーー!
我が村に!!」
「えっ、あっ、あーー、なんだか賑わってましたよねー」
「なーーに言ってんだい!
あんたんとこにも入ってくのみたんだからね!
来たんだろ?例のイケメン」
メリダおばさんはニヤニヤと笑いながら、とても楽しそうに聞いてきました。
「確かに、ものすごく綺麗な方はいらっしゃいましたよ?
それがその「例のイケメン」かはわかりませんけどね」
思わず変な言い方をしまいました。
なんだかそわそわして落ち着きのない気持ちになるのです。
「やだよ〜そんな言い方しちゃって〜
で、実際のところはどうなんだい?
ちょっといいなーとか思ったりしたんじゃないのかい?
シエルちゃんはかわいいんだから、きっとお似合いさね!」
私はメリダおばさんに、なんと答えていいのかわからなくなってしまいました。
だから、正直に話してみることにしました。
この落ち着かない気持ちが、一体何なのか、どうして、よく知りもしない人のことが、こんなに気になるのか、、、
「おばさん、私にもわからないの。
確かにとても綺麗な人だったわ。
だけどね、その「いいなー」がよくわからないの。
ただ、、、、、、」
「ただ、彼を見たとき、周りの景色も、周りの音も、彼以外のすべてのものが何もなくなったみたいになって、、、
彼から目が離せなくなったの」
「そしてね、なぜか、、、
なぜか、とても悲しかったの、、、」
「かなしかった?」
「そう、悲しかったの。
胸がギュッと締め付けられて、どこか懐かしいような、寂しいような、、、
嬉しい、だけど悲しい、、、
そんな不思議な気持ちになったの。
だから私、何だかよくわからなくって、、、」
そう話すと、メリダおばさんは何やら難しい顔をして考え込んでしまいました。
「ごめんなさい!変なこと言って!
今のは忘れてください!
おばさん、彼がイケメンなのはわかったわ。
でも、ほどほどにね!」
いつもと違うおばさんの様子に、余計落ち着かなくなった私は、この話を終わらせ、お祈りを始めることにしました。
「では、はじめますね」
私はいつものように、マラカイトでできた大きな女神様の像の前で、祈りを捧げ始めました。
ーーー女神ユーノー様、いつもお見守りいただきありがとうございます
今日もたくさんの方がオンセンの癒しを賜りました
ユーノー様のご加護に心からの感謝をーーー
カッ!!!!!!!!!
いつもと同じはずなのに、この祠に初めて訪れたときように、女神像が一際眩く輝いたのでした。
「えっ、、、」
私は訳がわからず、ぼんやりと像を見つめていました。
『アァ、、、ワタクシノ愛し子、、、
メルジーナ、オマエダッタのネ
ワタクシノ愛し子、、、、、、』
そう言うと、光は雲散し、ユーノー様の声は聞こえなくなってしまいました。
そして、『メルジーナ』というユーノー様の言葉が、耳から離れず、私の胸をより一層締め付け、私の目からは、止めどなく涙が溢れたのでした。




