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そして私は初めてのお祈りをしました。
生前母が行っていた動きなどを教えてもらいながら、ユーノー様の像の前に跪き、祈りを捧げます。
『ユーノー様、先ほどはありがとうございました。
今日から母に変わり、お祈りいたします。
よろしくお願いします。
オンセンがみんなを癒してくれますように、、、』
そう祈ったと同時に、辺りに光が広がり、スッと泉の中に吸い込まれていきました。
なんとも幻想的な姿に、私は思わず言葉を失いました。
そして、無事にお祈りができたことに安堵したのでした。
正解はわかりませんでしたが、私なりに必死にお祈りをしました。
今思い出すと、拙いお祈りにも関わらず、ユーノー様がお力添えくださったことに感謝しかありません。
ーーーあれから5年。
私は変わらずお祈りを続けています。
夜の闇に紛れ、祀る民の皆さんに支えてもらいながら、なんとか続けられました。
その間も、父は変わらず、私の声も届かない、父にしか見えない母と共に過ごす生活が続いていました。
相変わらずオンセンには浸かってくれそうにはありません。
あれからお祈りを始めたことで、オンセンは力を取り戻し、村にはまた昔の賑わいが戻りつつありました。
5年という歳月はあまりにも早く、あっという間に過ぎていきました。
そして、変わらない生活の中で、唯一、大きな変化がありました。
それは、村長が亡くなり、新たな村長として、メリダおばさんがこの村の長になったことです。
あの日私にさまざまなことを教えてくれたあと村長は、まるでその役目を終えたと言わんばかりに、数日のうちに起きている時間が短くなり、寝たきりの生活になりました。
そしてあの日からわずか10日後。
眠るようにその生涯を終えたのでした。
その顔は穏やかで、どこか晴れやかな表情をしていたのが強く印象に残っています。
さまざまな想いや歴史を背負い生きてきた長い人生は、決して穏やかとは言い難いものだったようです。
しかし、最後の最後で『祀る民』としての大きな仕事を終え、晴れやかな旅立ちとなったのでした。




