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「あの、それで私は、どうしたら、、、」
「おぉ、そうじゃったな。
その前にひとつ、これは1番大事なことじゃ。
おつとめを忘れる日があったってえぇ。
ただ、これだけは守ってほしいんじゃ。」
「はい」
その時、一瞬にして空気が変わったのを感じました。
「決して人に見られてはならぬ。
決して人に聞かれてはならぬ。
決して人に気づかれてはならぬ。
決して人に知られてはならぬ。」
村長の雰囲気がガラリと変わり、私の中にも緊張が広がりました。
「これはの、代々言い伝えられてきた掟でのぉ。
泡沫の一族とそれを祀る民だけが真実を知ることができるのじゃ」
「泡沫の一族をまつる民?」
「そうじゃ。
泡沫の一族を名乗れるのは力を受け継いだ直系とその伴侶のみ。
祀る民は力を得られなんだ他の兄弟やその子孫のことなのじゃ。」
「しかしのぉ、泡沫の一族は異類婚姻ということもあり、なかなか子を授かれなんだ。
それはのちの子孫たちも同じなのじゃ。
じゃからの、僅かな人のみでここを守り抜いてきたんじゃよ。」
村長だけでなく、隣のメリダおばさんをはじめ、私に傅いてくれたみんなが、その祀る民だということは、幼いながらにも理解することができました。
そして、ふと気がつきました。
「あの、村長。
メリダおばさんもそうですが、なんで女の人しかいないんですか?」
「そうさなぁ、、、
不思議なことに、泡沫の一族が生むお子には、女の子しか生まれんのじゃよ。
これも女神様の思し召しなのかもしれんのぉ、、、」
なんだかまだまだ謎は多いようでした。
「それで私は、、、」
「そうじゃったそうじゃった!
すまんのぉ、、、
この歳になると物忘れが激しくてかなわんよ、、、」
「いえ!お願いします!!」
「お主にはの、できる限り毎日、ユーノー様の女神像に祈りを捧げて欲しいんじゃ」
「祈りですか?」
「そうじゃ。
力を得た継承者はの、癒しの力を授かるのじゃ。
どういう基準で選ばれるておるのかはわからん。
じゃが、力を授かった者は皆、ユーノー様の像の前で祈りを捧げることで、泉に癒しの力を与えることができるのじゃ。」
「わし自身に力がないからのぉ、
このやり方も本人らから聞いた話にはなってしまうんじゃがの、、、」
過去に何があったのかはわかりませんが、村長はどこか遠い目をしていました。
その目はどこか寂しげで、瞳の奥がゆらゆらと揺れているようでした。
「まぁ、つまりはの、傷ついた人たちが癒されますようにと心を込めて祈り、この力をくださったユーノー様への感謝をお伝えすればいいんじゃよ」
その時の村長の顔は、今でも忘れられません。
村長の言葉、表情、醸し出す雰囲気、その全てが私の心を大きく揺さぶりました。
元々できることはするつもりでいました。でも、村長のあの寂しそうな目を見て、力を授かったからこそ、やり遂げなければならないと強く思ったのです。




