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しかし、いつまでもユーノー様に隠しておくことなどできません。
お祈りを続ける中で、メルジーナ様のお心の変化に、ユーノー様は気づかれてしまったのです。
ユーノー様は、人のためにとは望んだけれど、自身の眷属を人にやるつもりはないと、大層お怒りになり、泉の加護を無くしてしまったのでした。
メルジーナ様はそれを誰にも知られないように、ご自身の命を削りながら、力を使い続けたのです。
そしてある日、メルジーナ様は倒れてしまわれました。
青年はメルジーナ様の様子に、何かあったのかと尋ねました。
しかし、メルジーナ様は決して答えることはありませんでした。
どんどん弱っていくメルジーナ様の姿を見て、青年は不安を募らせました。
そしてある夜、深夜深くにコソコソと家を出るメルジーナ様の後をつけ、泉の地下の祠に辿り着いたのでした。
『ユーノー様、申し訳ございません。お赦しくださいとは言いません。
代わりにこの身を捧げます。
どうか人々がこの泉で癒され、幸せな時間を過ごせますように』
その言葉と共に、メルジーナ様の体から弱々しいながらも光が溢れ、その光は泉へと吸い込まれていくのを青年は見てしまったのです。
青年はその光景に驚愕し、思わずメルジーナ様の元へ駆け寄って抱きしめました。
そしてメルジーナ様を優しく抱きながら、
「あなたと共に生きていきたいのです
どうか本当のことを
本当のあなたのことを教えてください」
と、メルジーナ様に問うたのでした。
見られてしまっては、もう隠しておくことなどできません。
メルジーナ様は全てを青年に話しました。
自分は人間ではなく、癒しの女神、ユーノー様の眷属で、人魚であるということ。
ユーノー様が魔族侵攻でボロボロになった人間を救たくて自分を遣わしたこと。
ユーノー様のご加護のおかげでこのオンセンは癒しの泉として機能していたこと。
戦争の傷が癒え、人々に平和が訪れたら、自分もユーノー様のもとへ帰る予定であったこと。
しかし、青年を愛してしまったこと
それをユーノー様に知られ、ユーノー様の怒りを買い、加護の力が無くなってしまったこと。
それを少しでも補うために、自身の命を削って泉を守り続けていたこと。
その全てを青年に話したのでした。
青年は驚き、そして心を痛めました。
自分がメルジーナ様と出会わなければ、メルジーナ様を愛さなければ、メルジーナ様は自分の命を削ることなく、ユーノー様の元に帰れたのだと。
しかし、メルジーナ様を愛さないという選択はなかった。
愛したことに後悔はなく、何度同じ状況になっても、一目で恋に落ちただろう。
そう正直に伝えたのでした。
その言葉に、メルジーナ様は泣いて喜ばれたそうです。
種族など関係なく、ただの青年とメルジーナとして、それぞれを個として、互いを思い合い、愛していたのでした。
けれど、メルジーナ様にはわかっていたのでした。
無理に癒しの力を使い、命を削ったことで、自身の命の灯が消えようとしていることに。
それだけは、どうしても青年に伝えることができなかったのです。




