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通勤電車


出勤ラッシュの電車は今日も混んでいる。


ドアが閉まるたびに人が押し込まれ、車内の空気が少しずつ重くなっていく。


運良くドア横のスペースを確保できた俺は、背負っていたリュックを前に抱えながら小さく息を吐いた。


あと2日働けば休み。そう考えたところで、別に気分が軽くなるわけでもない。


スマホが震える。


取引先からの日程変更の連絡だった。


内容を確認して返信する。


続けて社内チャットの通知が届く。


夕方の会議で使う資料についてだった。


まだ会社にも着いていないのに、仕事はもう始まっている。


窓に映った自分の顔は、既に疲れた顔をしていた。


電車が揺れる。


次の駅を知らせるアナウンスが流れた。


ふと、スマホを手に取る。


SNSを開くでもなく、ニュースを見るでもなく、気づけば動画アプリを開いていた。


我ながら暇なんだろうなと思う。


昨夜見つけただけなのに、今朝も聴いた。


それなのに、また開いている。


イヤホンを耳に入れる。


再生ボタンを押す。


歌声が流れ始めた。


有名な配信者というわけでもない。


それでも、その声を聴いていると不思議と少しだけ肩の力が抜ける気がした。


満員電車の圧迫感も、今日やらなければならない仕事のことも、ほんの少しだけ遠くなる。


電車が駅へ到着する。


降りる人が動き出し、車内の人が入れ替わる。


会社まであと数駅。


今日の仕事の段取りでも考えるべきなのだが、


気づけば取引先のことも夕方の会議のことも頭から抜けていた。


イヤホンの向こうから流れてくる歌声だけが、不思議と耳に残っていた。


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