ジンガイ被害撲滅部(非公認)2
「詠様の写真、最初のうちは背景が処理されて場所の特定が出来ませんが、進むにつれWORセンタービルの商業施設となりビル近辺の屋外へと移っています。判断材料は希薄ですが、この並びを時系列とするなら背景不明な写真はWORセンタービル内の公表されていない重要施設内とも考えられます。」
(やっぱりそう来るよなあ。)
「つまり、貴方様は対策局で秘密裏に訓練若しくは研究、開発をなされている対ルームのスペシャリストであると我々は考是非お仲間になって頂きたいと考えた次第です。」
「まあ、それは理解した。で、何故君達2人はあのような勧誘を?」
「あれは朱乃の提案です。」
そう言って紫乃は傍らに立つ朱乃に視線を送った。
それを察した朱乃はすすっと移動して詠の腕に絡みついた。
「ただ勧誘するより面白いでしょ。紫乃に勝ってみたかったし。自信あったんだけどなあ。お兄ちゃん攻撃。それとも・・・)
朱乃は詠の腕にもっとしっかり絡みつく。
「こっち攻撃の方が良かったのかな。紫乃よりあるでしょ。」
「ええっと。」
詠は戸惑っていた。絡み付いてきた腕に当たる朱乃の胸の感触が全体像のイメージと異なるボリュームと柔らかさだった。
先程の事もあり、あまり無碍にするのも悪いかと思い、そのままにしておく事にした。
まあ、悪い気がしないというのも本音だった。
そんな思いを敏感に感じとったのかのような「エッチ。」と誰にも聴こえないように呟やいていた紫乃の視線が気にはなったが。
「詠様、入部していただけますよね。私が勝手な講釈を垂れて皆を納得させている間に。」
紫乃の厳しい口調。これは勧誘ではなく、強制だった。
私は貴方の事をもっと知っている。
口外されたくなければ言う事をききなさい。
と言っているかのごとく聞こえる。
(絢辻紫乃。得体が知れないな。ここは大人しく従うか。)
紫乃の放つ独特のオーラに興味を持った詠がひと言
「良いよ。」
と言おうとした瞬間、コール音が鳴り響いた.
紫乃は徐にデスク上のインターホンに話し掛ける。
「何か?」
「先程本部からあった連絡の中に少々不審なものがありまして。」
「どんな内容だ。」
「ここ3日連続でホコロビハザードマップを受け取りに来た者がいたとの事です。」
「来訪者は1年C組の早坂恵子さん。姉が最近行方不明になり、弟妹を心配してのようですが。」
「まあ、言っている事にはおかしな点は無いようだが、引っ掛かるな。」
紫乃はデスクに肘を立て両手を組んだ上に顎を置いて、ややくぐもった声で言う。
「はい。今までは普通に見えてたのですが、今日のマップを見た時の反応がこれまでと著しく異なっていました。」
「十野のホコロビ予測か。」
「はい。十野のホコロビ予測に対して『これは確かか!?』と詳しいより精細な場所と時間を聞いていったそうです。」
「そうか。」
「ご報告が遅くなり、すみませんでした。」
「いや、ありがとう。助かる。今後も宜しく頼む。」
「はい。失礼します。」
そう言って会話は終わった。
「今のはここへ来る前の部屋にいた生徒会長の鈴木素子さん。ここは公称としては生徒会分室だからホコロビハザードマップは校舎の生徒会室本部で配布しているの。情報もね。だから、相互に連絡取り合っているの。」
また、美奈月が良いタイミングで仕込んでくれる。
「美奈月、茶菓子でも差し入れさせといて。」
「はい、部長。」
美奈月は何かとのパイプラインになるような重要なポストなのかも知れない。
「さて、詠様。貴方は今の話をどう思う。」
「早坂さんだったか。彼女の実力は?」
「学園に来られたばかりでご存知ないでしょうが、女子剣道部ではトップの実力で多くの大会で優勝もしています。また、対策局のセキュリティサービス候補生に選考されているようです。」
「そうか。」
(拐われた姉を自らの手で取り返そうとする土壌は十分だな。)
「彼女は同級生で同じ部活の来栖理子さんに暫く部活に参加出来ない旨を話していた。恐らくホコロビに向かっているだろう。」
詠は一旦言葉を切ったが、そのまま自分の考えを告げた。
「自分で姉を取り返す為。」
その言葉を聞いて美奈月と朱乃が息を呑む音が聞こえた。
「それで間違いないだろう。」
紫乃はデスクに体を預け、詠にグイッと顔を近づける。
「詠様。どうする。」
その問いに顔を歪ませる詠。
「仕方ない。俺が行ってやる。マップを。それとどのホコロビに行けばいい?」
「スマホの方が良い。新着情報をリアルタイムで確認出来る。場所は十野。数日前何人か拐われた場所に近い。」
詠は少し困った顔をした。
「俺、スマホ持ってないぞ。」
「まあいい。どうせアプリインストールや登録の時間が惜しいから、これを渡すつもりだった。」
紫乃は手元のスマホを詠に渡し、ロック解除のパスワードを伝えた。
まるで今の事態を予め想定していたかのようだった。
「決してプライベートは見るな。あと絶対私の元に返しに来い。」
「了解。」
「入部してもらって早々に厄介事に巻き込むが、よろしく頼む。」
「おにいちゃん、頑張ってね!」
背中向けた詠は2人の声に答えるかのように振り返り、手を挙げた。
その顔を見て紫乃は
「まるで新しい冒険に行く子供みたいな表情だな。」
と呟いて微笑んだ。




