第六十五話「女体の神秘の探求」・1
今回は四部構成です。
重い足を必死に動かし、軽く息切れしながら俺は不気味な暗雲に包まれた光影学園の正門前にやってきた。その近くには、俺より先に到着を果たしていた霞さんと霄がいる。
「しめた! どうやら、ハックはまだ来てへんみたいやな。今の内に、学校内へ侵入や!!」
「はぁ、はぁ……いや、侵入って……俺達、ここの学生ですし」
両膝に手を置いて呼吸を乱しながら、俺は霞さんの言葉にツッコむ。
とにもかくにも、急いだ方がいいのは確かだ。雹はきっとすぐにここへやってくるだろう。恐らく、外で部活動をしている人間はいないと思う。あの降雹警報もあったしな……。だが、屋内だからといって安心は出来ない。とにかく、あいつは女体の神秘を探求してた……とどのつまり、胸や尻がデカイ女子を探してる訳だ。でも、そんな女子いるのか? だって、霞さんを超える程だろ? ……霞さんのプロポーションがそもそも人間離れ(元々人間ではないが)してるのに、それに勝てる人間が存在するのか?
そう考えると、お先は真っ暗だ。俺は必死に考えた。俺の知りうる限りの巨乳と巨尻……こういう系は、そっち専門の人に聞いた方が早い気がするんだけどなぁ。
頭をかき、俺は考えた。変態軍団……いるだろうか? いや、はっきり言って男子生徒の大半は変態軍団の息がかかってるから、数十人はいそうだが。
変態軍団アスメフコーフェッグの面々は、個人個人がなんとも個性のごり固まったような混沌の性癖で出来ている。つまり、巨乳好きと巨尻好きなんて結構ありきたりな性癖持ちなら、たくさんいると踏んだのだ。彼らに協力を仰げば、あるいは簡単にこの学園で最強の女子を見つけられるかもしれない。
「俺に、考えがあります」
「ほぅ、当てがあるんか?」
意外そうな顔で霞さんが俺を見据える。
「ええ、まぁ……変態軍団に協力を仰ぐんです」
「変態軍団?」
「何っ!? 血迷ったか、響史! 体育祭の時、やつらのせいでどれだけ面倒事に巻き込まれたと思っている!!」
首を傾げる霞さんの反応とは違い、霄の反応の仕方は当然だった。直接彼女が彼らと関わったかと言えばそうではないのだが、俺の話を聞かされて幾分かは理解しているのだろう。
「分かってる……だが、雹の被害に遭う女子生徒を少しでも減らすには、こうするしかないんだ。分かってくれ……」
「むぅ……まぁ、響史がそこまで言うのであれば、致し方あるまい。だが、場所は分かるのか?」
その問いに、俺は顎に手をやり思案する。以前はどこぞの会議室を利用していたみたいだが、あの場所をずっと使い続けるはずもない。だとすれば、また場所を変えている可能性がある。そもそも、今回俺が用があるのは、彼ら全員ではない。別に、彼らのトップである亮太郎に連絡がつけば一瞬なのだ。
しかし、本来学校がない日であるのに亮太郎がここにいるとも思えない。そうなると、他のメンバーに連絡の取りようがない。どうしたものか……そう迷っていた時だ。
「きゃあああああああああああ!」
どこかから悲鳴が聞こえてきた。
「ま、まさか……もう雹が!?」
「そんなアホな! さすがのハックでも、ここを探り当てるのにもう少し時間かかるはずやで!?」
「まさか、そこまで規格外の神秘がこの学園に!?」
霞さんの焦燥感に駆られた言い方に、霄もつられてバカみたいな言葉を述べる。何だよ、規格外の神秘って。そんなやつ……いたらすぐに俺でも気付くと思うぞ?
やれやれと額に手をやりながら、俺は首を振る。
それから俺達三人は、悲鳴の聞こえた二階へ続く階段を駆け上がった。
「どっちだ?」
階段を上り終え、左に行くか右に行くか迷う俺達。
と、霄が何かを発見したように左の方を指差す。
「こちらからけしからん気配を感じる……」
真剣な顔して言う事じゃねぇよ、それ。
「けしからん気配?」
具体的にどんなものなのか少し興味が沸いた俺は、思わず霄に尋ねる。
コクリ頷いた霄は、口を開くとこう言った。
「女子生徒のブラウスを下着ごと捲り上げ、舐め回すようにその胸を見た後、両手で包み込むように揉みしだいているな。むっ、それから……尻の方にも手を回しているな。右手と左手をそれぞれ、時計回り反時計回りに回して撫でている」
めちゃくちゃ詳細だな! てか、そんな細かいとこまで分かっちゃうのかよ!!
聞いているこっちが恥ずかしくなってしまうような事を饒舌に語った霄は、至って冷静さを維持しており、まるで、一人顔を赤くして乙女のように恥じらってしまっている俺がバカみたいだ。
「言っとくけど、響史……霄に純情な乙女の反応を求めても無駄やで? こいつは長年の経験と周囲の人間のせいでこんなんになってもうてるから……そういうのはホンマ疎いねん」
首を振りながらその顔の手前で手を左右に振り、ないないというジェスチャーをする霞さん。
「は、はぁ……そうなんですか。いや、まぁ別に何も期待なんかしてないんですけどね?」
「ハッハッハ、せやな! ともかく、その女子生徒を助けなアカン……行くで!」
俺の反応に、霞さんは声をあげて笑い、先陣を切って駆け出した。
「はい!」
「うむ!」
返事をした俺と霄は、霞さんの後に続いて左の方へ駆けて行った。
と、しばらく走っていた時、目の前に二つの人影があった。一人は、呆然とその場に立ち尽くしている。まるで、誰かに操られているかのように……。しかも、その人物は俺達三人がよく見知った人で――。
「つ、露!?」
先頭を走っていた霞さんが急に足にブレーキをかけてその場に止まる。俺達もぶつかるまいと慌てて足を止める。
「どうして露さんがここに? ていうか、一緒に来ませんでしたよね? 一人で来たんですか?」
幾つか疑問が出た俺は、即座にそう質問をしたのだが、相手からの返答はない。
「露……さん?」
と、そこで俺はもう一つの人影に視線を移した。もう一人は、露さんの傍で倒れていて、服装が乱れに乱れまくっている。思わず目のやり場に困って視線をそらす。
「まさか……姉者がやったのか?」
霄が目を見開きそんな事を言う。その言葉に、俺も霞さんも驚愕した。
「そんな! いくら露さんでも、相手が嫌がる事を本気でやるとは思えねぇよ!! ……多分」
「響史の言う通りや……ウチも、露が産まれた時からその変態っぷりに驚かされよったけど、さすがにここまではあらへんかった……多分な」
俺も霞さんも、露さんをどうにかフォローしたい気持ちはある。だがしかし、如何せんいつもの露さんのアレを見ていると、擁護しようにも出来ないのだ。
それほどまでに、露さんの常日頃の行いはマイナス影響を与えているということ。
「姉者、見損なったぞ! 確かに姉者は、美少女好きのド級のシスコン百合女郎だが、相手を傷つけるまでの事はなかった!!」
実の姉の両肩を掴み、前後に激しく揺さぶる霄。しかし、露さんはまるで霄が視界に映っていないのか、うんともすんとも反応がない。本当に正気を失っているようにしか見えない。だが、もしそうだとすると、一体どうして? まさか、雹に……? しかし、実の姉に手をかけるか? いや、もしも大魔王に操られてるんだとしたら、ありえない話じゃないかもな。
俺が顎に手をやって思案していると、露さんに少し変化が生じた。
「……い、……ぱ、い」
その閉じられた口を少しだけ開けて、何かをボソボソと口にしたのだ。
「……ぱい、っ……ぱい」
「あ、姉……者?」
姉の異様な姿に、さすがに気味が悪くなったのか数歩後ずさる霄。
と、その同じ言葉を何度か繰り返すうち、ようやくその小声で口にしていた言葉が聞き取れた。
「……おっぱい」
「な……っ!?」
あろうことか、露さんが暫くぶりに口を開き声にした言葉は、ただの変態発言だった。いや、確かに年相応の人が言えばそういう意味ではなくなるのだろうか、別の意味で年相応の人が口にすると、変態扱いしかされないのだ。そういう意味では、言葉とは難しいものだ。
姉の口にした言葉に、霄はさらに後ずさる。自身の身に危険が及ぶと、咄嗟に察知したのだろう。何せ、霄は目の前にいる露さんよりも、一回りも二周りも――これ以上は本人のためを思ってやめておこう……とにかく、露さんでは到底勝てない大きさを持っているのだ。狙われるのも仕方なしといえよう。
「許せない……私よりも大きいなんて……許さないんだからぁああ!!」
声を荒げ、まるで異性に飢えたおっさんのように涎を垂らしながら霄へ向かって手を伸ばしながら走っていく露さん。その目は、ギラギラと獲物を標的として捉えた猛禽類の如く。
その両手は獲物を掴もうとワシャワシャ妖しく動かされている。
そして、霄の豊満な胸にその手が触れた――と思われた刹那。
ゴォンッ!
と、鈍器を殴りつけたかのような音が木霊した。同時、「へぶしっ!?」という、露さんの短い悲鳴が聞こえた。
あまりにも一瞬だった。霄が、手にしていた残空刀で実の姉の頭を容赦なく殴打したのである。
以前、聴いたことがある。霄は、姉や兄を物凄く尊敬しているらしい。確かに、霞さんや雫へ対する態度からそんな感じはする。だが、ちょっと待ってほしい。こうも、アレなやり取りを見せられるとたまに勘違いしてしまいそうになるのだが、露さんは確か三女ではなかっただろうか? 霄は四女だ。つまり、露さんも姉のはずなのだ。では、何故尊敬している人物を殴る? 理由は一つしかない、尊敬していないのだろう。
露さん……あなた、どんだけ嫌われてるんですか……。思わずその可哀想さに同情してしまう。
結局、露さんは実の妹に勢いよく頭部を殴打され、顔面から学校の廊下に突っ伏した。その頭には、ぷく~っとたんこぶが形成される。
霄はというと、何の未練もないという顔だ。なんというやり切った表情……本当に殺ってしまってはいないだろうな? そんな心配をしてしまう。
「ホンマ、霄は露に容赦ないなぁ~」
「ふんっ、死んだ振りしてしれっと私の胸を触ろうとするからだ。いい加減学習しろという話だ」
「まぁ、せやな……自業自得っちゅうやっちゃな」
実の妹が、気絶する勢いで殴られたってのに、怒らないのか。ますます姉弟内での露さんの扱いと、その扱いの発端が、今まで彼女がしでかしてきた数々の変態行為が原因だというのが分かった。しかし、一体全体どんな変態行為を働き続ければこんな扱いになるんだろう……。
そう思いつつ、俺は露さんの近くでしゃがみ、露さんの体を揺さぶった。
「露さん、起きてください。一体何があったんですか?」
「うぅ……うぐっ、ぐすっ! なんで、何で私……殴られたの? まだ、何もしてないのにぃ……ひぐっ」
廊下に突っ伏したまま嗚咽を洩らす露さん。
「いや、霄の胸を触ろうとしたじゃないですか」
俺が先ほど露さんがしでかした事を教えると、濡れ衣だと言わんばかりに勢いよく体を起こし、座ったまま両手を地面について俺にズイッと顔を近づけ、両眉の端を吊り上げ言った。
「ぐすん、そんな事してないもん! 最後に霄ちゃんのおっぱい触ったの……いつだったかなぁ? あ、そういえばこの間、リビングで舟漕いでたから、無防備だぞぉ~♪って、おっぱい触ったん――」
ビュンッ!
「きゃあ!?」
突然衝撃波が眼前に接近してきたので、座り込んだ状態で上半身を後ろに反らせる事で躱す露さん。その衝撃波は、露さんの胸元スレスレを通過してどこかへ飛んでいった。
うん、もしも露さんに少しでも胸があったりしたら、今頃は悲惨な事になっていただろう。
「ちょっと! 何よ今の攻撃!! 明らかに、私への嫌がらせでしょ!?」
「ふんっ、姉者が悪いのだ……」
霄のその顔つきは、完全に下賎な輩を見る目だ。
「……姉者、今の発言……妄言ならば今そう言え。もしそうでないならば、今ここで斬るっ!!」
やべぇ、完全に目が据わっちゃってるよ……。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ! 私はただ、注意のつもりで……」
「そんな注意の仕方があるかぁっ!!」
ブゥン、ブゥンッ!!
「ひやああ!? そ、そんなもの振り回したら危ないでしょ!? お姉ちゃん、死んじゃうよ!」
鋭い斬戟が露さんを襲う。それをなんとか体を捻ったりして躱す露さん。
「ならば死ねぇ!!」
「ひどい、ひどいよぉ!! うえぇん、響史くん……霄ちゃんがいじめるぅ~」
隙を見て俺の背中に隠れた露さんが、俺の服の裾をがっしり掴んで俺に訴えてきた。
いやいや、普通助けを求めるなら姉である霞さんでしょう。
「霄、頼むからここで殺し合いはやめてくれ」
「ちっ、響史は甘すぎる。その変態は、いつ何時また変態行為を働くか分からんのだ。早急にケリをつけた方がいい」
霄がどうにか刀を鞘に納める。それを見て少し安堵したのか、露さんが小さく手を挙げて声を出す。
「ち、ちなみに……ケリって?」
「二度とエロい事を考えられぬよう、煩悩という言葉その物を知らぬ体にしてやる」
「いやぁあ!! そ、そそ、そんな事されたら、私のアイデンティティが! でも、何だか言い方が卑猥……ぐへ、じゅるり」
「いや、煩悩がアイデンティティってのもどうかと思いますけど!? てか、その最後みたいなのがそもそもダメなんですって!」
垂れる涎を手の甲で拭っている露さんを、俺は半眼の眼差しで指摘する。
「で、結局何でここにいたんですか?」
「え? あぁ……えーと、なんかよく分からないけど、気付いたらここにいたんだよね。学園に来た所までは覚えてるんだけど……その後の記憶が、少し曖昧で」
何か情報が得られるかと思ったのだが、そう簡単にはいかないようだ。
あ、そうだ。この女子生徒を起こしてあげないと……。
俺はコートを脱ぐと、裸に近い状態の女子生徒にかけてあげた。大雪で、夏にも拘らず気温が低いからとコートを着てきて正解だった。ここで役に立った。
「ん……この人」
と、そこで俺はある違和感を覚えた。
「どうしたん、響史? 知り合いなんか?」
「いや……どこかで見た事あるような……ないような」
すぐそこまで出掛かっているんだが、どうにも名前が出てこない。少し薄暗くて顔が見にくいのも原因かもしれない。
「とにかく、事情を聞かないことには話にならないし、多少強引だけど揺すり起こそう?」
そう言って、露さんが女子生徒の体を大きく揺さぶった。すると、少し顔をしかめた女子生徒が小さく唸って虚ろに目を開けた。
「起きた!」
露さんが、嬉しそうに声をあげる。
その直後だった。
「きゃあああ!?」
「え……?」
嬉しくて両手を挙げていた露さんが、起こしてあげた女子生徒にいきなり悲鳴をあげられてキョトンとなる。
「よ、よくも……よくも私の体にあんなことやこんな事……は、果てには口にも出来ないような事をしてくれましたね!!」
「ええ!? ちょ、ちょちょちょっと待ってよ! わ、私……全く身に覚えがないんだけど!!」
女子生徒が自身の体を庇うように身を捻り、露さんを強く睨みつける。その目には酷く恨みの念が感じられる。
「露さん……一体何したんですか?」
「だ、だから! 私も何が何だかぜんぜん記憶ににないんだって!!」
「よくもまぁ、そんな事言えますね! あぁ、思い出すだけでも身の毛がよだちますよ! あんな手つき……人間の動きではありませんよ!」
「そ、そこまで言う……?」
ケダモノを見るような眼差しでの言われように、露さんも少し涙目だ。
「……なぁ、これは一つの可能性なんやけど、雹の仕業ちゃうか?」
「雹の? あ、そうか……」
顎に手をやり、真摯な顔つきでそう口にする霞さんに、俺もようやく納得がいく。
「あ、あの――」
「なんですか!!」
が、声をかけたら強い口調で怒られてしまった。
「え!? いや、あの……」
これには思わずどもってしまう俺だったが、どうにか口を開く。
「露さん――彼女とあった時、近くに誰かいませんでしたか?」
「誰か? ……う~ん、言われてみれば、近くに誰かいたような」
俺の問いに、女子生徒は腕組をして目線をあげる。
「そういえば……小さな男の子を見た気が」
「ハックちゃんよ! 絶対そう!! ひっどい! 私を使ってイタズラするなんて!! それも、私にその時の記憶がないとかあんまりじゃない!! どうせなら、私も楽しみたかったっ!!!!」
「……露さん?」
常識を疑う俺を含めた数人の眼差しに、露さんがようやく我に返って「あ……」と声をあげる。
「どうやら、反省が足りていないようだな?」
「や、やめてぇぇええ! いやぁああああああああ!!」
ゴツンッ!!
「きゃうっ!?」
またもや、鈍く重い音が木霊した。
「あ、あの……」
その一連のやりとりをポカンと見ていた女子生徒が、恐る恐るという風に声をかける。
「あ、ごめん……えと、そういえばまだ名前聞いてなかったっけ」
頭をかきながら、俺は彼女の名前を尋ねる。
「え? わ、私を知らないんですか?」
「し、知らないけど?」
何で知らないのがおかしいみたいに言うんだ? 普通、知らなくて当然の様な気が……。
そう思っていたのだが、俺の反応に対して女子生徒は一瞬、呆けた顔をした。
「あ……あぁ、ははぁ~ん……そういう事ですか。会長達の仰っていた通りです。ホント、集会の時間違いなく寝てる事間違いないですね。私を知らないなんて、モグリもいいとこです……」
「か、会長? 集会? ……な、ま……まさか」
会長という言葉に、一つの可能性を考えかけた俺。だが――。
「はぁ、ようやく思い出しました?」
「いや、全然」
「ズコッ! ちょっと! 何で思い出せないんですか! 私を知らないなんておかしいですよ!! 私みたいな有名人を……はぁ、私は生徒会所属、風紀委員長です! こう言えば、いやでも名前を思い出すでしょう?」
腰に手を添え、えへんと胸を張る女子生徒。
それに対し俺はというと、頭の中で必死に風紀委員長という言葉を反芻していた。そして、ついに思い出した。
「あぁッ!! 思い出した、『鬼風の松竹梅』ッ!!」
風紀委員長の女子生徒を指差して俺はそう叫んだ。
その言葉に、彼女は顔を段々と赤らめていき、震わせていた口を大きく開けて叫んだ。
「ちょっ!? な、ななな……何で名前を覚えていないのに、そんな事は覚えているんですか!! 高等部二年生、風紀委員長『竹谷 凪』で覚えてくださいっ!!」
片手をグーにして、それをぶんぶん振りながら名前を告げる竹谷風紀委員長。
「いや……いつだったかな……確か、俺が中等部にいた頃から松竹梅一族が風紀委員やってたよな。あの時に、結構……」
「いやああああ! やめてやめて! あんな黒歴史思い出させないでください!! ああもうっ、だから私は反対してたんです! あんな恥ずかしい真似出来ないって……」
頭を抱えてその場に蹲るその姿に、俺は思わず頬をかきながら霄達を見やる。彼女達も、当惑している様子だ。
「それと、あなたさっきから先輩に対してタメ口だなんて……敬語を使いなさい!!」
「あ、す、すみません……竹谷先輩」
「ふんっ、分かればいいんです。にしても、そこのあなた!」
「へ、私?」
俺の敬語について指摘をし終えると、次に竹谷先輩が少し怒った視線を向けたのは、露さんだった。原因は、言われなくてもなんとなく分かる。
「何なんですか、あの変態行為の数々!」
そう、風紀委員長である竹谷先輩にとって、露さんのような風紀乱しまくりの生徒は許せないのだ。
「えぇ……。だから、あれはハックちゃんのせいで……」
意義を唱える露さんだが、完全に竹谷先輩は聞く耳を持っている様子はない。
先輩は続ける。
「今この時、風紀検査をしていたならば、あなたは間違いなく罰則でお仕置きを受けてもらってますよ!?」
「お、お仕置き……!? な、何……その魅惑的な響き! お、思わず受けたくなっちゃう!」
胸元で両手を重ねてそんな事を口にする露さん。
いかん、いつものアレが出てやがる。こうなった露さんは、しばらく止まらないだろうな。
「は、はぁ!? なな、何を言っているんですかこの変態っ!!」
露さんの発言に、竹谷先輩は、体を震わせて後ずさる。
「あぁん、何でかしら……あなたにそう言われると、鼓膜が震えて脳が蕩けちゃうんっ!! ハァ、ハァ……ねぇ、お願い。もっと、……イ・ッ・テ?」
「ひぃっ!?」
壁に追い詰められた竹谷先輩に、露さんは更に詰め寄って呼吸を乱しながら懇願した。その表情は完全に発情しているといっても過言ではない。ダメだ、早く何とかしないと!
というわけで、みなさん新年あけちゃいましたね。めちゃくちゃ更新遅れて申し訳ありません。どうにも、学校が忙しくて……。こういう休みの合間でしか更新出来ない状況に……。今回は雹の探している女体の神秘が誰なのかという話です。
サブタイを見る限り、バカっぽい話になりそうですが、重要な話もあります。
では、引き続き二部をお楽しみに。




