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魔界の少女  作者: YossiDragon
第六章:七月~八月 夏休み編
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第六十四話「やってきた、最後の護衛役」・4

 



――☆★☆――




「……あれ、おかしいな。ぼくの力がおされてる? この凍てつく魔力……ふっ、ゆ~たんか。さすがぼくと同じ規格外の魔力保有者だね。でも、ぼくの力はこんなもんじゃないよ」


 そう言うと、雹はタワーから飛び降り、フワリと地面に着地した。


「この気配……かすみんにつゆゆんにそ~きゅんか。それに……標的(ターゲット)、神童響史。ふっ、ぼくの元にわざわざ出向いてくれるなんてありがたいね。それに、かすみんとそ~きゅんか。ふふっ、久しぶりに会うからなぁ~……むふっ♪」


 特徴的な呼び方をした雹は、不敵な笑みを浮かべると、一歩足を踏み出した。瞬間、彼の足元を中心に大きな雪の結晶が形成される。そこから八方に衝撃波が走り、結晶の先端部から垂直に天へ向けて氷柱が形成された。


「行けッ!!」


 裂帛の気合と共に雪の結晶が大回転する。すると、その上にあった氷柱も回転する。その回転速度はどんどん増していき、まるで彼を守る防壁のようだった。

 そして、雹を乗せた雪の結晶が一気に直進した。まるで新幹線くらいのスピードを出した雪の結晶は、回転したまま直進していき、そして――。


ジュゥンッ!!


 何かを裂くかのような音を立てた。




――☆★☆――




 あまりにも唐突であった。シンボルのタワーへ続く大通りに出た俺達。いつもなら車通りの多いこの場所も、屋内への避難命令が出ている今はガランとしている。

刹那――キィィンッ! と耳につく嫌な音を立てながら何かが目の前から猛スピードで肉薄してきた。

間一髪、霄の斬空刀の繰り出した衝撃波で相殺されたから助かったものの、危うくバラバラに切り刻まれるところであった。


「ぐぅッ!?」


 衝撃波越しに受ける反動に、霄が呻いた。


「ふふっ、ようこそボクの氷雹の舞台(ステージ)へ。歓迎するよ、神童響史。そして、かすみんにそ~きゅん……後、つゆゆん?」


 変わった呼称で霄達を呼ぶ青髪の少年。長すぎるマフラーは、首だけでなく顔を覆うように巻かれている。その隙間からは、今期の護衛役を担う水連寺一族の特徴である青髪が覗いていた。髪質は、霙に良く似たクセっ毛に天然が少々入っているようだ。

口元をマフラーで覆っている辺りも、なるほど忍者に憧れているというのも頷ける。


「そないな呼ばれ方したん、久しぶりやわ」


「ムッ、あまりその呼び方は好ましくないのだがな……」


「ちょっと! 何で私だけついでみたいな感じなのよ!!」


 三人が各々口を開く。確かに、何故露さんだけこんな扱いなのだろう。まぁ、俺もよく雑な扱いしてるけど。


「つゆゆんは……くす」


「ちょっと! 今明らかに私のある一部分を見てバカにしたでしょ!!」


 どうやら雹は、露さんのコンプレックスを小馬鹿にしているようだ。


「不思議だよね。かすみんとそ~きゅんはあんなに大きいのに」


「くっ!! 貧乳の何が悪いのよ~!! もう怒ったっ! お姉ちゃんを怒らせたらどうなるか、思い知らせてあげるわっ!!」


 そう言ってまんまと雹の挑発に乗せられた露さんは、得物の槍を取り出して連続突きを繰り出した。


「ふふっ、そんな攻撃がつーじると思ってる? つゆゆん」


「なっ!?」


 露さんの連続突きは雹に容易く躱され、更に露さんは弟に背後をとられてしまった。


「ふっ、スキありっ!!」


 ぺたっ。


「ひゃぁああああ!?」


「あ~ぁ、やっぱりだ。つゆゆん、ぜぇ~んぜん成長してないよ。

少しは膨らんでるのかなと思ってたけど……フッ」


「うわぁああああん! ハックちゃんのバカバカバカぁっ!! 今に見てなさい? ぜったい、絶対に霞お姉ちゃんよりでっかくなって、見返してやるんだからぁっ!!」


 そう言って露さんは大泣きしながらどこかへ走り去ってしまった。


「ちょっ、露さん!?」


「ふふっ」


 しまった……やつの目的はコレだったんだ。相手の弱点を突き、戦意喪失させて人数を減らす。なんて巧妙な作戦なんだ。さすがは最後の護衛役……霞さん達が怯えるのも何となく頷ける気がする。


「作戦通り上手くいって満足かよ」


「? なんのこと? ぼくはただ、お姉ちゃん達のおっぱいの成長を確認してただけだよ?」


「…………は?」


 突如意味不明な言葉を紡ぎだす雹に、俺は気の抜けた声を洩らす。


「なにかおかしい? なんども言うようだけど、ぼくは女体の神秘を探求してるんだ」


「……すみません、霞さん。俺、ちょっとあいつが何を言っているのか理解出来ないんで、出来れば説明していただきたいんですけど」


「ハハ……、悪いな響史。さすがのウチも、こればかりは理解出来ひんのよ。ただ、ハックが言うには女体の神秘いうんは、ウチらの乳や尻の事なんやと。んで、それらの極上……即ち一番デカいそれを持っとる人を探しとるらしい」


 何だろう、一気に馬鹿馬鹿しい話になってきた。え? 何? 雹は俺を殺しに来たんだよね?


「なぁ、雹。一つ確認させてくれ……。お前の目的は何だ?」


「? 何度も言わせないでよ。ぼくの目的は、女体の神秘の探求さ。今のところ極上(トップ)はかすみんだけど、まだ人間界の調査を済ませていないからね」


「まさか、黄昏区上空のみに積乱雲を出現させ、住民を外に出さないようにしたのは……」


「ああ、それはただ単にぼくが動きやすいようにするためだよ」


 え……。そんな単純な理由だったの!?


「……あの、俺を殺しに来たんじゃないのか?」


「………ん? あぁ、そういえばそうだったね」


 えぇ~!? 俺って、女体の神秘より下の扱いなの!? てか、これテレビ越しに見た雹と絶対別人なんだけど!


「お前本当に雹か?」


「しっけーだなぁ。ぼくは間違いなくヒライス=デント=ルドラ。こっちで言う水連寺雹だよ?」


 そういや、ずっと前から気になってたけど、横文字で書かれるあの名前と縦文字のあの名前って何が違うんだ?


「って、そんな事考えてる場合じゃない!」


「? どうかした?」


 何がおかしいのか、口元に笑みを浮かべて雹が訊く。


「お前、ヘリを落としただろ!」


「あぁ、でも落としたなんて人聞きが悪いなぁ。まぁ、あのキャスターのお姉さんは落とさせてもらったけどね」


 そう言ってペロリ舌を出す雹。


「え?」


「ふふっ、キャスターの人のおっぱいがなかなかよさげでね? 思わず本気パワー使っちゃった、てへ☆」


 可愛く言っても何もねぇよ!! てか、あの時テレビ越しに見た目は、それだったのかよッ!!


「ほんで、感触はどないやったんや?」


 ふとそんな質問を投げかける霞さん。一体何を考えているのやら。


「うん……あまりよく分からなかったからブラジャーをズラして揉んでみたんだけど、やっぱり柔らかさや揉み心地は、かすみんの圧勝だね」


「ほぅ、さすがだな姉者」


「ふふんっ、それほどでもあるわ!」


「お前らマジメにやれよ!! 霞さんも、何ボケてるんですか!」


「いやぁ~ウチ、、どうにもこういった辛気臭いムード好きやないねん」


 いや、これどう考えても辛気臭いというより、アホらしい空気しか感じないんだけど……。


「てか、おい雹! お前……関係ない赤の他人にまで手を出しやがって……」


「何をそんなに怒ってるの? ぼくはただ、探求してただけさ。ちゃんとヘリに乗ってた人たちは怪我一つないし、ズラしたブラジャーやはだけた衣服だってきちんとしてあげたんだから、問題ないでしょ? むしろ、ぼくの揉み心地は最高だって、結構有名なんだよ?」


 自慢気に鼻高々の雹。そんなこいつになんか無性に腹が立った俺は、青筋を立てて声を荒げた。


「んなわけねぇだろ!!」


「いや、響史……それがそうでもないのだ」


「え?」


「そうなんよ。ハックの触り方は天性なのか、メッチャ気持ちええねん。肩凝りも治るんやで?」


「へぇ、そいつはスゴイ――って、話を逸らさないでくださいッ!!」


「アッハハ、相変わらずのノリツッコミやな!」


 あまり俺はそうは感じないのだが、霞さんはどこかご満悦の様子。


「これで分かったでしょ? ぼくの力が……」


 いや、今のところバカだという事しか理解出来ないんだが。


「ほんま恐ろしいやっちゃ」


「うむ……あの両手には、どうしても勝てん。どう足掻いても、必ず反撃されて気持ちよくされてしまう」


 なんか、その言い方はいろいろと怪しいんだけど。てか、恐ろしいってそういう事だったのかよッ!! てっきり俺は、凄く強いから恐れを抱いてるものだと思ってたんだが……。じゃあ、霞さん達の力を合わせたやつがどうのこうの言ってたアレは一体……。


「ふふ、さぁそこをどいて、神童響史。ぼくは忙しいんだ……」


「いや、お前俺を殺しに――」


「ぼくの女体の神秘探しの邪魔をするなら、殺すよ?」


 いや、元々俺を殺しに来たんじゃないのかよ、お前。


「じゃあね、かすみん、そ~きゅん」


「ホンマ、好き勝手なやつや……ここでとっ捕まえたるさかい、堪忍しぃや!」


「姉者の言う通りだ。私達が今までお前に甘かったのが悪いのだ。雹、お前には一度キツイ灸を据える必要があるな」


「こわいよ、かすみん、そ~きゅん? ぼくは誰にも危害を加えるつもりはない。あるとすれば、それはぼくに仇なす者達だ。もしもぼくの邪魔をするのなら、そいつら全員を血祭りにあげてやる……水連寺一族の、ルドラの血に誓って……ね」


 そう言うと、雹の姿が水のように透き通り始めた。


「これは……水影!?」


「しっつれ~い」


 まるで挑発するような言い方で雹はその場から姿を消した。


「くっ……厄介な事になった。響史!」


「は、はい!」


 霞さんに呼ばれ、俺はビクッと体を震わせて返事をする。


「この区域内で一番乳と尻のデカいやつは誰や!!」


「えぇ!? そ、それ俺に訊くんですか!?」


「なんや、自分いっつも女とおるイメージあるから、てっきりそっち方面も詳しい思っとったわ」


 なんか、知らぬ間に俺のイメージが悪い方向へ……。これは早くイメージ改革しとかないと、悪いイメージのまま固定されてしまう!!


「や、やだな~。何で俺が……。この俺が女の子の胸やお尻に詳しい訳ないじゃないですか~!」


「そうなんか……いっつもウチらと寝たりしとるし、たまに姫さんの乳揉んどるみたいやから、もしかしたら……思うたんやけどな~」


 腕組して何故か残念そうな顔をする霞さん。これは確実に誤解されてる!


「ち、違いますって! そもそも、あれは偶然というかなんというか……」


「まぁええ。とにかく、このままここにおってもラチあかへん! 響史、この辺で一番女が多い場所はどこや!」


「え? う、う~ん……そうですね。あっ、ちょうど今日は運動部とか部活動をしてるはずですから、突然の天気の変化でまだ学校内に閉じ込められてるかも!」


 突然霞さんに質問され、俺は慌てて場所の候補を挙げる。


「でかした! 霄、響史! 学校に行くでっ!!」


「了解だ姉者!」


「あ、はい!!」


 霞さんが先陣を切り、その後ろから霄と俺が追いかける。場所は勿論、俺の母校――光影都立光影学園だ。




――☆★☆――




 ここは、神童響史達が通う光影学園。いつもならば、快晴の中運動部の部活動生が活動をしているのだが、今日の突然の天気変化により、部活動中止を強いられていた。

しかも、降雹や雷注意報のために帰宅も出来ないため、学校に軽く閉じ込められている状態にあった。

 仕方なしという事で、特例措置として顧問の先生からウォーミングアップの許可を得、現在教室の一部を開放してそこでトレーニングをしている生徒もいる。

また、文化部の部活の一部も活動を行っていた。特に、秋に始まる学園祭の準備へ向けてなどが主な目的だ。

そして、学園の中心に存在する中心棟。この七階には生徒会室が存在する。

 生徒会室。生徒のトップに当たり、全校生徒の憧れともいえる存在、生徒会長がいるのがこの場所だ。

現在この場には、生徒会長である神王寺天祢を含め、もう一人がいる。

給仕等、主に奉仕を担当する奉仕委員長の女子生徒だ。雛下優歌、それが彼女の名前だ。そんな彼女は、生徒会長である天祢に一杯の紅茶を出していた。


「……ふぅ、美味しいわ」


「ありがとうございます、神王寺生徒会長」


 天祢の賛辞にペコリお辞儀する優歌。そんな彼女の仕草に、天祢は思わずくすりと笑う。


「あらあら、随分堅苦しいですわね。天祢と呼んで構わなくってよ?


「あはは……では、天祢……生徒会長」


 少し遠慮がちに、優歌はそう呼んだ。


「うふ、恥ずかしがり屋ですわね、優歌は」


「か、からかわないでくださいよぅ、生徒会長」


 どうにも調子が狂うというように、優歌が声をあげる。


「本来のからかい相手がいないものだから、つい……迷惑だったかしら?」


「そんな事はないですけど……」


 と、そんな時だった。ガチャと両開きの茶色い扉の片方が開いて誰かが入ってきた。


「ひゃあ~、ヒドイ目に遭ったわ。訊いてくれる、天祢――あっ」


「お帰り、麗ちゃん」


「……ごほん! 生徒会長、訊いてください緊急事態です!」


 笑みを浮かべて迎えてくれる優歌の姿を発見した水滝麗は、その姿を見て思わず先ほどの自分の発言を思い返して咳払いした。それから天祢の元に一直線に進み、そのデスクに両手を突いて用件を話そうとする。

が、先に天祢が開口した。


「あら、それは今し方私の事を思わず“天祢”と呼んでしまったことかしら? 確かにそれは緊急事態ですわね。だって、私とのひみつがバレてしまったんですもの……恥ずかしくて死にそうだって、顔に書いてありましてよ?」


 両の手をかっちり組み合わせて肘をデスクに置いた天祢は、口の端をやんわり上げると、顎を両手の上に乗せて麗の顔を見上げながらそう言った。


「なっ!? か、からかわないでください! 私が言っているのは、天気の話ですっ!」


 一気に顔を紅潮させた麗はたじろいで後退した。


「くす……相変わらず面白いですわ、麗ったらお顔をそんなに真っ赤にして。優歌、麗にアイスティーを持ってきて差し上げて?」


「あ、はい、かしこまりました」


 優歌はお辞儀すると、広い生徒会室の壁で仕切られた隣の部屋に行き、アイスティーを注ぎに向かった。


「からかったりしてごめんなさい、麗? だから、許してちょうだい?」


 ふかふかの肘置き付きの椅子から立ち上がった天祢が、スッと麗の首に腕を回し、こちらに引き寄せる。

すごく自然な動作で引き寄せられた麗の頬に紅がさした。

二人の間にデスクがあるため必然的に麗が身を乗り出して両手をデスクにつく形になる。


「もう、天祢はすぐそうやって私をからかうんだから……」


 少し辛い体勢であるにも拘らず、麗はしょうがないなという様に天祢を許している様子だった。


「しょうがないじゃない、麗が可愛いのが悪いんですのよ? うふふ、あなたを見ているとついついからかいたくなっちゃうの」


「全く……ホント、天祢は女王様気質よね」


「あら、一応お嬢様でしてよ?」


「そうだったわね、神王寺グループの美少女三姉妹お嬢様といえば、知らない生徒はいないものね」


 そう、神王寺天祢は二つの顔を持っている。一つは光影学園の生徒代表である生徒会長。そしてもう一つは、光影都市を作り上げた六つの財閥に名を連ねる神王寺一族のご令嬢の一人。

つまり、彼女はお金持ちのお嬢様なのだ。


「嬉しいこと言ってくれるわね。私から言わせれば麗も十分に美少女よ?」


「そ、そんな……私なんて、髪の毛だってクセっ毛で手入れが面倒だからいつも適当だし。その点、天祢はいつも綺麗に手入れが行き届いてるわ」


「そうかしら? 私としては、麗の肌ってとっても潤っていて羨ましいですわ。私は少し乾燥肌だからクリーム塗るのが欠かせないし。ほら、この頬だって……唇だって」


 互いに互いを褒め合う二人。そして、天祢の細い指が麗の唇に触れた。


「天祢……」


「麗……」




――☆★☆――




 テレレ~ン♪ 奉仕委員長は見た! ドキッ、生徒会室に咲き誇る禁断の百合の花!?


「そ、そんな……ま、まさか二人がそんな関係だったなんて!! ど、どどどどどうしよ。わ、わたしはどうすれば!? と、とりあえずアイスティーをお持ちした方がいいのかな? それとも、静かにダブルベッドをお持ちした方がいいのかな!? ああでも、ダブルベッドなんてないし……って、そうじゃない! ええと……」


 わたしはとんでもないものを見てしまった。そう、皆の憧れの的であるあの生徒会長神王寺天祢ちゃんが、副生徒会長の水滝麗ちゃんと恋仲っぽい関係にあったのだ! いや、まだ確信はないんだけど、明らかにそれっぽい!! どどど、どうしよ! こんな時、わたしが呼んでた少女マンガならどうしたっけ?

ない予備知識を振り絞り、一生懸命わたしは考えた。

考えた末――頭が真っ白になった。


「と、とにかく……ふ、二人の行く末を見守ろう」


 とりあえず、今のわたしにはそれしか出来ないし! うん!

きゃああああああああああ! 天祢ちゃんが、麗ちゃんを抱き締めた!? し、しかも、で、デスク越しなんて!! それはレベル高いよ!! いや、高いのかな?

あわわわわわ、二人とも顔が近い、近いよぉぉぉぉ!! このままじゃ……ち、ちちちゅーとかしちゃうんじゃ? そ、そんなの……そんなの――。




――☆★☆――




「らめぇええええええええええええええええええええええ!!」


『えっ!?』


 響き渡るメイドの悲鳴と困惑の声。

いてもたってもいられなくなった優歌は、顔を真っ赤にし、アイスティーをお盆に乗せたまま天祢と麗の下へ駆け出した。が、運が悪い。何もない場所で足を躓かせた彼女は、前のめりになってお盆を放り投げた。

必然的にアイスティーは空中へ。一方で、優歌はそのままスピードを緩める事が出来ず、麗を後ろから突き飛ばす形になってしまった。


ガチャンッ! パシャッ!


 アイスティーが入っていたカップは地面に落ちて割れ、中身は麗のブラウスの後ろにかかってしまった。

しかも最悪な事に、後ろから押されたのが原因で、ただでさえ接近していた二人の距離がゼロとなり、二つの唇が重なってしまった。さらに、体勢を崩した麗が慌てて何かに捕まろうとして、天祢の胸を両手で鷲掴みにしてしまった。


「いったたたた……」


 盛大にコケた優歌は、倒れた時に鼻を打ちつけたらしく、鼻を真っ赤にしていた。それを優しくさすりながら涙目で体を起こす。

そして、とんでもない現場を目にしてしまった。


「あ、天祢ちゃん……う、麗ちゃん……」


 今、彼女の目には何が見えているのだろうか。しかも、それは自分が引き起こした事なのだ。


「……ぷは! す、すみません生徒会長!!」


「い、いえ! わ、私も……からかい過ぎてしまいましたわ!」


 慌てて体を起こした天祢と麗は、互いにあたふたとしていた。それもそうだろう。突然起きたハプニング。まだ上手く状況が整理出来ていないに違いない。


「あ、あの……麗ちゃん! せ、制服を濡らしちゃったから、これに着替えて? すぐ制服洗ってくるから!」


「え、でもこれ……」


 優香から受け取ったのは、体操服だった。


「大丈夫! 洗ってあるから!! それじゃ!」


「あ――」


 麗としては問題はそれだけじゃなかった。優歌がいなくなれば、即ちこの生徒会室には天祢と自分の二人だけになってしまう。そしたら……先ほどのハプニングがフラッシュバックするのは当然といえよう。

不意に麗は己の唇に指を添えた。そして、顔から発火した。

しかし、まだ彼女達は知らない。これからここへやってくる恐ろしい少年の被害者になる事を……。

というわけで四部です。え、なにこの茶番って? 大丈夫です、ちゃんと次話でバトります。この四部で一気にえぇってなるかもしれませんが、一応この話は主にコメディを重視してますから。あくまで雹の個性を出した結果です。大魔王に操られてはいますが、完全ではないようです。でないと、目的が逆転なんてしません。

本来は響史を殺す→ついでに女体の神秘だったのに、女体の神秘→ついでに響史殺すですから。反転するだけでギャグっぽくw

ちなみに、護衛役が恐れているのは女体の神秘と思われているかもしれませんが、一応実力もあるのであしからず。今回はちょっと露がかわいそうですね。

また、今回は学園サイドの数人も活躍させようと思い、出すことにしました。ただ、掴みをやるつもりが胸を掴むことにw おまけに百合の花が咲き乱れてますw

優歌のドジっ娘っぷりがここで発揮ですね。

てなわけで次回予告、予定としてはバトります。また、書かれているように生徒会メンバー数人ほか、部活動生がどこかの誰かさんの餌食になります。護衛役の何人かが活躍させられれば、いいなと。はっきり言って細かい部分は考えてません。

書きながら練っていくタイプなので。

次回更新は八月に出来ればしたいですね……(遠い目)

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